米:「組合から脱退して組合費を節約しよう」右派系シンクタンクが公務公共部門の組合つぶしに躍起

 昨年2月頃、デンバーのEast High Schoolで英語を教えているヤコブ・メイルズ氏のもとに、シンプルな宣伝文句のハガキが届きました。「食料品やガソリンの価格が高騰しているため、メイルズ氏のような労働者が給料を増やすには、組合費から脱退するのが一番だ」という内容でした。カードには、必要事項を記入して組合に郵送すれば、年間950ドルの節約になるというリンクが貼られていました。

 「そのカードは2、3日ソファの上に置いてあったんですが、何度も送られてきて、夏にはこんなに頻繁に送られてくるなんてと驚いたことを覚えています」。差出人はワシントン州オリンピアの新自由主義シンクタンク、フリーダム・ファウンデーションです。彼はその動機に懐疑的であり、労働組合が最近勝ち取った勝利の後では、組合を脱退して節約しようという宣伝文句はさらに説得力を失っていると指摘します。2019年にデンバーの教師がストライキを行った後に彼の組合が達成した協約について思い起こし、こう語ります。「その差は、私と妻が子供を持ち、家のために貯金を始めることができるほど大きなものでした。このDMを読んで節約のために辞めるなんて、ありえないことです」。

 フリーダム財団は2014年以来、教師から消防士まで、公共部門の労働者に組合からの脱退を促すキャンペーンを展開しています。同団体は、元教師で私学についてアドボカシー活動をしているリン・ハーシュとワシントン州議員で「予算タカ」派のボブ・ウィリアムズが、ウィリアムズの知事選失敗後の1991年に設立。長年、州予算縮小のための緊縮キャンペーンに、スポットライトが当たらないようにしながら活動していました。しかしその活動は、2018年に公共部門労働者が組合員にならないことを選択した場合、組合費の支払いを義務付けることはできないとした連邦最高裁のヤヌス判決を受け、大きく変化しました【訳注:米連邦労働法の排他的交渉代表制度により、ユニオンショップ協定のある職場では手続上組合に未加入や不払いの労働者からも組合費を徴収することが認められていた。南部などの一部の州では組合に入らない権利を認める州法「労働権法」が制定されている】。この判決は、非組合員は依然として組合の努力から利益を得ており、したがって会費の支払いを要求できるとした41年にわたる判例を覆したのです。ヤヌス判決以前から2020年までの間に、フリーダム財団の収入は38%急増し、ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州でオプトアウト・キャンペーンを本格的に開始しました

 当初は西海岸を中心に活動していたフリーダム財団は、一昨年から全国的なキャンペーンを展開しはじめました。ペンシルバニア州とオハイオ州では以前から行っていた活動を拡大し、昨年8月にはフロリダ州とカリフォルニア州でテレビコマーシャルを放映。10月にはニューヨークでもキャンペーンを開始し、2万3千人の公務員に働きかけ、2024年には組合費総額12億ドル分の公務員の組合員を脱退させるという野心的な目標を掲げています。

 戸別訪問やハガキの送付、保守系オンライン・ニュース・ネットワークでの活動、そして全米の組合に対する訴訟の猛攻撃によって、同団体は現在、131,000人以上の公務公共部門労働者の脱退を「支援」し、組合に2億5800万ドル以上の組合費を減少させたといいます。この数字が正確であれば(フリーダム財団はこの記事に関する複数の問い合わせに回答していない)、現在組合に属している公務公共部門の労働者の約2%が、このシンクタンクの支援によって組合を脱退したことになります。しかし、公務公共部門の組合幹部は、この団体や同様の団体は影響力のある勢力というよりも厄介者であり、労働人口の減少など他の多くの要因が彼らの陣営にとってより大きな脅威として迫っていると主張しています。

 さきほど小さな町のブルーカラー労働者の証言の裏側に、このグループが指導原理とする野心的で全国的なアジェンダがあります。フリーダム財団の最高責任者であるアーロン・ウィテは、2015年に同団体のオーガナイザーとして活動を開始し、「政府機関の労働組合はアメリカで拡大するあらゆる国家的機能不全の根本原因である」と述べています。ウィテは定期的に国内メディアにメッセージを届け、ウォールストリートジャーナルやFOXニュースオンラインに論説を書き、ショーン・ハニティーのラジオ番組に参加し、フォックス・アンド・フレンズにケーブル出演しています。 このシンクタンクは、教育省の全面的な廃止を要求し、コーク兄弟と関係のある団体を含む保守派の大篤志家から支持を得ています。最新の2020年の国税庁への提出書類には、640万ドルの収益が記載されています。

 ジョージタウン大学のカルマノビッツ・イニシアチブ(労働とワーキングプア)の副所長で歴史学者のレイン・ウィンダム氏は、「これは政治的な努力です」と言います。「彼らは、組合員がしばしば民主党を後押しすることを理解しています」と言い、フリーダム財団のキャンペーンや同様のキャンペーンは、特に”青い州”をターゲットにしていると付け加えました。

 たとえば、オレゴン州ポートランド郊外で6年生の人文科学の教師をしているマーギー・シェーンハイトは、組合が「人種差別批判論」と警察への資金援助を求めるメッセージを教室に押し付けていることに懸念を抱き、組合を脱退しました。こういったエピソードを宣伝するビデオが作られています。組合の政治に反対して脱退した者もいれば、会費を節約するために脱退した者もいます。この団体は派手なキャンペーンも躊躇しません。10月にピッツバーグのダウンタウンで行われたデモでは、主催者が模造紙幣でいっぱいにした巨大な風洞を設置し、組合員に自分たちの組合がいくら使っているのか見てもらうということをしました。

 しかし、ネット上での存在感は比較的小さく、オプトアウト活動の成功やその測定方法について公的な証明がないため、フリーダム財団の公共部門に対する具体的な影響を定量化することは困難です。2017年、公共労働者の34.4%が組合に加入しており、全国で約720万人が組合に加入していました。2021年には約690万人にまで減少しましたが、加入率は微減にとどまり、現在の組織率は33.9%まで低下しています。

 組合幹部は、全体的な組織率の低下は政府雇用の後退が原因だと言います。公務公共部門の雇用は、大不況時の2130万人が最近のピークで、2021年には2060万人にまで縮小しています。

 オハイオ州教職員組合は、フリーダム財団の労働者に対する揺さぶりがいかに苛烈かを物語っています。同教組は2020-2021年度の間に、組合員の約7%にあたる1,141人の組合員を失いました。フリーダム財団はこの減少の一部についてキャンペーンの成功を高く評価し、教師は「政治的チェスの破壊的なゲームの駒として使われる生徒を見るのはうんざりしている」と書いています

 しかし、オハイオ州教組のメリッサ・クロッパー会長は、彼女の事務所がこの団体から受け取った脱退用紙はわずか30数枚で、その多くは誤りがあったり、実際には組合員でない労働者や別の組合に所属している労働者から送られてきたりしたと話してくれました。同教組の広報担当者は、この減少はコロナ禍に関連したもので、州の多くの学区で雇用が全体的に減少したことが原因だと述べました。

 フリーダム財団が長く活動している他の州では、民間と公務公共部門を合わせた組合員数ではあるものの、全体の組合員数は実際に伸びています。ワシントンの労働人口のうち組合に加入している割合は、2016年の17.4%から2021年には19%に上昇し、オレゴンでは同期間に13.5%から17.8%に上昇しました。

 様々な公務公共部門の組合幹部は、パンデミック発生時に低下した公共部門の雇用の回復が遅れているにもかかわらず、楽観的になる理由がたくさんあると述べています。シカゴ教員組合は、2017年の26,758人から10月時点で29,001人へと組合員を増やしました。同組合のコミュニケーション・ディレクターであるクリス・ジオバニスは、その成長の理由を、各学校コミュニティの地方代議員制度に加え、ヤヌス判決に備えて2017年から始めた、組合費の価値に関する大規模な教育キャンペーンに求めています。「私たちは組織化された組合であり、それにはヤヌス判決の歴史的・政治的文脈を理解してもらうために、階級間の絶え間ない組織化が含まれています。その作業はまさに進行中です」とジオバニスは述べています。

 ウィンダム氏によれば、近年新しい組織化を後回しにした組合では、組合員をフリーダム財団のメッセージに影響されやすくしているのかもしれません。「組合が組合員の生活に与える影響について組合員と話すとき、それは人々の心を揺さぶります。そのような対話をしてこなかった組合は、長年、現実に活動に関与することができず、その結果、組合員の減少の影響を受けやすいのです」。

 フリーダム財団が組合員を大きく減らしていないとしても、その絶え間ない訴訟の流れは、今でも組合の資源を大きく奪っています。22年9月現在、同団体は全国で80の組合関連訴訟を起こしています。オハイオ州のAFSCMEに対しては、組合を脱退した組合員への組合費の払い戻しについて、オレゴン州では州議会労働者の組合結成を認める法律について、ワシントン州のいくつかの組合に対しては脱退した組合員からの郵便物の受け取りを拒否したとする訴訟などです。この団体は、これらの訴訟で迷惑をかけたいということを隠しすらしません。「フリーダム財団の積極的な法的措置は、組合の政治活動を劇的に混乱させる『必殺技』として機能するよう設計されている」と、ウィテはフリーダム財団のパンフレットに書いています。

 アメリカ教員組合連盟のランディ・ワインガーテン会長は、この団体の努力によって組合の指導者たちは縛られたままになっていると語ります。「これらの主張に対処するためだけに費やされるお金と注意の量はひどいものです。彼らは十分な資金を持っていて、嘘をつき、分裂させ、必要な手段で文化闘争を利用するのです」。

 組合を訴訟で忙殺する一方で、フリーダム財団のメッセージは、全国規模の組合と、労働者が身近で定期的な関係を持ちやすい小規模な地域組合との間にくさびを打ち込もうとしています。同団体のウェブサイト「オプトアウト・トゥデイ」の一部には、資金を地元だけにとどめておきたい労働者のための説明書さえあるのです。フリーダム財団は、この説明書が「同僚と連帯し、組合が提供する価値あるサービスを支えていることを実感できる」助けになると言います。

 オハイオ州教職員組合のクロッパー氏は、彼女の組合で組合脱退の書類を提出するほど不満を感じている少数の労働者について、関与する地方組合が彼らを取り戻せると述べます。「彼らは全国組織を抜けたいと思っていますが、地元組織には愛着があるのです。地元の仲間との連絡が取れなくなると知れば、彼らはすぐに脱退することをやめるのです」。

This article is republished from Znet under CC BY-NC 4.0 Int.

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