AI生成から創作者を守る唯一の道は反資本主義のみ 「芸術には金がかかるもの」専門家が警鐘

2022年から現在に至るまで、AIが何かと話題になっています。AIチャットボットの「ChatGPT」、画像生成AIの「Stable Diffusion」や「Midjourney」は、日々様々なところで変化や驚きをもたらしています。このような状況は何をもたらすでしょうか。作家・編集者でカナダ労働メディア協会所属の活動家のノラ・ロレト(Nora Loreto)は、AIコンテンツが現実社会にもたらす”実際的な”影響を論じています。彼女の議論を見てみましょう。

Anti-Capitalism Is The Only Way To Save Creativity From AI – Passage
https://readpassage.com/anti-capitalism-is-the-only-way-to-save-creativity-from-ai/


「AIコンテンツ」がコンピュータが生み出すアートの「素晴らしさ」を人間が受け入れるように教育していくにしたがって、AIが芸術や文化に与える影響は無視できないものになっていくといいます。それは価値観とか文化観よりももっと実際的な脅威です。

AIが文章や絵、デザインなどのアートについて学習を蓄積していくにつれて、AIはアーティストより進んだものを、より簡単に作っていくことになるでしょう。そうしたインスタントのAIアートを消費することに人々が慣れきってしまったら、この社会が資本主義社会である以上、アーティストたちはくいっぱぐれるしかありません。すでにいくつかの分野では、AIが芸術・文化や文芸の面で人間にとって代わっている例があります。

Wired誌の創刊者のケヴィン・ケリーは次のように言及しています

実際、AIが生成した新しい画像は予想外のもので、「すごい」と思った直後の静かな畏怖の中で、この画像に出会ったほぼすべての人が別の考えを抱く。人間が作る芸術は、もう終わったに違いない。この機械のスピード、安さ、スケール、そして奔放な創造性に対抗できるのは誰だろうか? 芸術もまた、ロボットに委ねなければならない人間の仕事なのだろうか? そして、次の当然の疑問がある。もしコンピューターが創造的になれるのなら、できないと言われていたことが他にできるのだろうか?

ケリーは、AIがアーティストにとっての脅威であるとは考えていません。AIは芸術がもつギャップを埋めるのに役立ち、素人でも作れるようになったイラストを通して、芸術の敷居を低くするツールを与えてくれると主張します。そして高尚な芸術には人間的なタッチが必要で、それゆえ社会には常に芸術家の必要はなくならないと彼は言います。

彼の言うことももっともです。しかし、より熟慮すべき文脈として、AIが生成するアートはそれ自体が盗作(新しい画像を作るために既存の画像を盗む)的性質を持っていること、そして同時に、これまでこうしたツールにアクセスできなかった大衆にアートをもたらす多かれ少なかれ無害な楽しみでもあるのです。しかし、資本主義の文脈で考えれば、アーティストの未来には深い問題が横たわっています。

芸術には金がかかる、創造には時間がかかるということです。時間とお金は、資本主義社会の中で常に”不足”気味のリソースです。アーティストが生き残りのために売上に依存する必要があるならば、AIは必ず彼らに存亡の危機をもたらします。プログラムに課金すれば好きな絵をつくってくれるなら、どれだけの人がその何倍かのコストをアーティストに払うでしょうか? 何百万ページもの奇抜で興味をそそる小説をAIが生み出すことができるときに、どれだけの人が小説本を買うでしょうか? ただでさえ絶望的な市場をさらに混乱させ、アーティストにとって今以上に生活が苦しくなることは間違いないないでしょう。

ロレトによれば、典型的なアーティストの収入は中央値より44%も低い。AIはアーティストの労働生活をブルドーザーのごとく破壊していくでしょう。

当然の帰結として、それに抵抗するただひとつの方法は、反資本主義のみです。

資本主義は芸術とは非常に相性が悪いものです。典型的な芸術は売れても、大胆でとがった最先端の芸術は収益化はおろか制作することすら非常に難しくなります。アーティストが食べていけなければ(つまりは作品が売れなければ)、創作もできないのです。アーティストを保護したいのであれば、政策立案者はアートに資金を投入する必要があります。最も基本的な選択肢は、アーティストに給料と無料の保険給付を提供することです。アパートやスタジオの家賃を軽減したり、ギャラリーへの資金提供、パブリックアートの展示、アーティストとコミュニティをつなぐプログラム、オンラインやリアルでアートを拡散するためのプログラムなど、アートを適切にサポートする方法は無限にあります。

問題は、ほとんどの政治家がそのようなことに関心がないことです。このことはどんな分野のクリエイターでも、キャリアのある時点でぶつかったことのあることでしょう。しかし、AIは来し方よりも事態をはるかに悪化させるでしょう。そして、政治家が資本主義の弊害からアーティストを守る計画を立てるか、立てないか。そうでない場合は、創作活動で生計を立てている人間全員が、非常に大きな打撃を受けることになるのです。

Photo via dacian dorca-street photographie on Flickr, licensed under CC BY 2.0.

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