1月22日は、世界の70%の国々が支持する地球規模の救命ボート、国連核兵器禁止条約の発効2周年にあたります。一方、米エネルギー省の2023年度予算要求では、核兵器の改良に210億ドル以上、全国の核兵器工場の放射能や化学物質の浄化に80億ドル近くが計上されています。エネルギー効率と再生可能エネルギーのための同省の2023年度予算40億ドルと比較すると、兵器が風力タービンに取って代わり、戦争が気候危機を悪化させるという未来が目に浮かぶようです。
さらに、政府予算には、核兵器の膨大な実体的コストに関する項目がまったく含まれていません。そのうちの3つの項目については、ここで説明します。
- 世界を滅ぼす核爆弾が人間に引き起こす恐怖(私たちが「大量死の文化に麻痺」していない限り)。
- 人間や環境の安全基準を満たす浄化ができない「永遠の」放射能汚染。ワシントン州ハンフォードの1カ所だけにかかる推定費用は3000億~6400億ドル。
- ウラン採掘、爆弾級プルトニウム生成、地上での原爆実験のために、先住民族の土地と文化が奪われ、汚染されたこと。
ワシントン州ハンフォードは、1944年から1987年まで、世界最大のプルトニウム生産用原子炉があった場所です(長崎に投下された原爆のためのものもその一部)。コロンビア川に面したハンフォードの土地は、4つの先住民族と農民から連邦政府によって事実上奪われ、今では「地球上で最も汚染された場所と言ってもいい」と、『アトミック・デイズ』の著者ジョシュア・フランクは指摘しています。
ハンフォードのプルトニウム製造施設は、コロンビア川の魚や水鳥などの生物を殺し、汚染し、その下にある帯水層の200平方マイルを汚染してしまいました。177基の漏れた地下貯蔵タンクには、5300万ガロンの放射性廃棄物と化学的有害廃棄物が貯蔵されており、永遠に修復されないかもしれない原子の不毛の地となってしまったのです。この施設と作業員にとって最悪かつ現実的なシナリオは、漏れた水素ガスによるチェルノブイリ並みの爆発でしょう。
しかし、核兵器保有者と核兵器製造産業の政治的な愚かさに対して、科学者、軍高官、市民、そして国全体が、原則的な知性で対抗しています。
- ニューメキシコ州ロスアラモスで開かれた40回目の同窓会で、原爆に携わった110人の物理学者のうち70人が、核軍縮を支持する声明文に署名しました。当時の最も優秀な科学者たちが、自分たちの最も重要な仕事がとてつもない間違いであったと認めたことがあるでしょうか。
- 1998年2月2日、元米国戦略空軍司令官ジョージ・バトラー将軍は、全米記者クラブで次のように演説しました。「核兵器がもたらすであろう結果には、正当な理由がない。核兵器は国家の運命だけでなく、文明の意味をも支配している」。他の60人の退役将官や提督も、核兵器廃絶を訴えるために彼に同調しました。
- 核保有国、特に最も積極的な米国からの絶大な圧力に抗して、2017年7月、122カ国が核兵器を禁止することに合意しました。2022年末までに68カ国がこの条約を批准し、さらに23カ国が手続き中です。
- さらに少なくとも30カ国が条約への加盟を約束しています。
- 2007年以来、100カ国以上にパートナーを持つ国際組織であるICANは、世界中の人々を動員し、核兵器禁止を支持するよう自国政府を説得してきました。
- 世界の8000以上の都市から集まった平和首長会議は、核兵器の廃絶を訴えています。
核兵器を禁止する新しい国連条約は、米国と他の8つの核保有大国が、倫理的とは言えないまでも、現実的な大人の政府に成長し、大量殺戮兵器を永久に廃絶するという希望を強めてくれるものです。そうした国がひとつあります。南アフリカは核兵器開発能力を持ちながら、1989年に自主的に全計画を廃棄したのです。
1963年、ケネディ大統領は、アメリカン大学の卒業式で、アメリカ大統領による最も重要な演説とされる「対ソ平和演説」を行いました。しかし、「ロシアはどうするのか」と誰もが尋ねました。ケネディはこう返事をしました。「われわれの姿勢も彼らと同じように重要だ」。歴史家のジム・ダグラスによれば、「ケネディの平和戦略は、どんなミサイルよりもはるかに効果的にソ連政府の防御を突き通した」のだといいます。ケネディの演説とフルシチョフとの水面下での外交は、冷戦の緊張を和らげ、核兵器も戦争もない世界の種をまき、この種は今発芽を待っています。
米国が再び、男性主義的な力を創造的な外交政策に置き換え、核兵器解体と戦争終結のためにロシアや中国に働きかけることができれば、地球上の生命はより高い可能性を手に入れることができるでしょう。
“Envisioning a World Without Nuclear Weapons” by H. Patricia Hynes.
This article is republished from Common Dreams under CC BY-NC 3.0 US.
Image: Oilstreet, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons