日本共産党第19回大会第2回中央委員会総会の討論の志位書記局長の結語(1990年)

日和見主義とのイデオロギー闘争と、前衛党らしい党建設の推進について

志位書記局長の結語

 日和見主義の潮流とのイデオロギー闘争と、前衛党らしい党づくりについての討論の結語をおこないます。
 多くの同志が、この問題に関連して発言いたしました。そのすべてが、この間の全国の実践に裏づけられ積極的で熱心な発言で、報告が深められました。

これまでの惰性をふっきるということ

 これをふまえて私がまずなによりも強調したい点は、一言でいって、これまでの惰性をふっきるという問題であります。討論で焦点になった基本課程教育の徹底の問題、”十二条該当”党員の解決の問題、党費納入の抜本的向上の問題、これらのすべては、これまでも、いつもいわれつづけてきたことです。しかし、それをいわば惰性で聞き流すという状況が、率直にいってつづいてきたわけであります。
 これをふっきろうというのが、今回の方針なわけで、そのために特別の新しい工夫、二時間でのマニュアルにもとづく基本課程教育という、こういう新しい画期的な方針も工夫されてだされてきているわけです。こういう大きな意義をもつ今回の方針も、これまた惰性で聞き流してしまったら、これはもういっせい地方選挙でも勝てないし、わが党の歴史的責務も果たせない、ということになってしまうわけであります。
 こんどこそ、なんとなく重いとか、わかっているけどたいへんだ、ということで日々の活動に流されてこれを棚上げにしてしまうという惰性をふっきって、この問題に全党が、最後まで、やりきるまで挑戦するということをつよく訴えるものです。そして、それを全党でやりきっていくうえで中央役員の同志一人ひとりが、みずからのそういう惰性をふっきって、この新しい任務、新しい挑戦をなしとげていく先頭にたつ必要があるということを、とくに強調したいと思うのであります。

全党への基本課程教育の徹底は、日和見主義の潮流を克服する土台

 そのうえで、討論のなかからうきぼりになったいくつかの問題についてのべることにいたします。その第一は、一部の日和見主義の潮流の克服と、基本課程教育を根幹とする前衛党らしい党づくりとは、深く一体に結びついているということであります。
 討論のなかで、日和見主義にとらわれた人びとの特徴は、わが党の路線と歴史を真剣に学んでいない、これへのまじめな検討がないということがのべられましたが、これはひじょうに重要な指摘です。
 たとえば、大国主義・覇権主義の問題でも、誤った立場におちいっている人びとの多くには、この歴史的巨悪に反対してたたかった三十年来の日本共産党の先駆的闘争の歴史、それがどんなに困難ななかでの勇気を必要とするたたかいだったかについて、不勉強と無理解がある。わが党にたいして、「日本共産党は東欧の事態からなにも学んでいない」という非難がありますが、東欧の事態から学ぶべき最大の教訓はなにかといえば、大国主義・覇権主義が歴史において破たんするということにほかなりません。ところが、わが党に「学んでいない」という非難をくわえる人びとこそ、実はこの大問題を学んでいない。こういう状況があるわけであります。
 民主集中制の問題でも、五〇年問題での痛苦の経験、民主集中制の原則がふみにじられたことによる党の分裂という体験をへて、この原則が確立し発展させられたものであることへの、やはりこれも不勉強と無理解がある。そういう歴史の教訓をよく知らない。ここから、この原則がどこかの外国から輸入したものであるかのようにみていく。そして、あれこれの外国の党がこれを放棄すれば、それにしたがえといった議論がおこなわれているわけであります。
 このように、誤った潮流に身をおいている人びとの主張は、党の歴史や路線を、よく学んだうえで、それでもなお日本共産党はまちがっているというのではありません。それを学んでいない、あるいは党の文献を読んでいても、それを真しな姿勢でとらえようというのではなく、どうあらをさがすかという読みかたにしばしばおちいっている。ここに、日和見主義に足をおいている人びとの共通の弱点があるということを指摘しないわけにはいきません。
 したがって、マニュアルにもとづく基本課程教育を全党に徹底する、そのことによって科学的社会主義と日本共産党の路線・歴史の基本を深く全党のものにする、これこそ、日和見主義の潮流を克服していくうえでもその土台をつくるものであるし、最大の保障があるんだということを、しっかりとつかむ必要があります。

知識人党員――党の路線への大局的確信と誇りがもてるように

 この問題に関連して、京都の市田同志ものべていたことですが、学者・研究者の党員、知識人党員についても、党の基本路線を真剣に、真しに学ぶという姿勢がもとめられるということを強調したいと思います。そして、党機関は、これらの同志にたいしても特別あつかいせずに、基本課程教育をきちんとやることが必要であるということです。
 知識人党貝について、わが党は、その専門家としての役割を尊重し、また自由で創造的な研究活動を尊重する立場に確固としてたっています。そして学問上、研究上の相違点について、ただちにそれを敵対視するセクト主義をとることをきびしくいましめています。
 同時に、報告でものべたように、その党的な団結の基準は、やはり綱領路線と大会決定にしたがって活動するということにあるわけです。そしてそのためには、これを全党的な集団的英知の結晶として、謙虚に学ぶという努力がもとめられます。学習をつうじて、党にたいする大局的な確信、大局的な誇りを、わが党の.知識人党員の全体のものにしていく努力がつねにもとめられるわけで、党の一員として、こういう見地にたって、基本課程の教育にも正面からとりくむことが大切になっているわけであります。

議員・候補者――日和見主義、消極主義とたたかう重要性

 それから、いま一つは、議員候補者の同志への基本課程教育をやりきっていく、そして、これらの同志が、講師活動の先頭にも積極的にたてるようにしていく、このことの重要性であります。
 討論のなかで、党から脱落した地方議員が無所属で立候補する問題が報告されましたが、まさにこれは、現在の反共攻撃にとらわれた日和見主義のあらわれにほかなりません。それから、候補者がなかなかきまらない、この問題もいま緊急の打開がもとめられている問題でありますが、これも、この間の長期にわたる反共攻撃の党内への沈殿、そこからくるさまざまな消極主義や敗北主義が払拭しきれていない、こういう現状と深いかかわりがあるわけであります。なんとはなしに、ソ連や東欧の風向きをみていて、やっても芽がでないということでしりごみしてしまう。こういう雰囲気がまだ党内から払拭しきれていない。それが、やはり、このおくれの根本にあることをみないわけにはいきません。

執念もってとりくむ

 わが党の議員、その候補者になっていくというのは、それぞれの地方で、住民の要求実現の先頭にたち、地方政治の革新の先頭にたつ、ほんらいならば誇りある任務のはずであります。ところが、それが、なんとなく割にあわない、ただしんどいだけの、消耗的な仕事であるかのようにみるという傾向が、一部に残されているわけです。その根本にあるのも、科学的社会主義とわが党の路線への大局的確信の不足という問題があるわけです。ですから、いっせい地方選挙にむけて、議員と候補者の同志のすべてが、この基本課程教育まずみずからうけ、わが党の路線にたいする大局的な確信をもてるようにしていくための努力を、党機関としてつくすことが、つよくもとめられているのであります。

マニュアルにもとづく基本課程教育―全党員が修了するまで

 第二は、マニュアルにもとづく基本課程教育を全党員が修了するまでやりきるということであります。絶対に中途半端にしないという執念をもってとりくむ、そういう機関の姿勢と構えを確立するということであります。
 東京の房宗同志が、すすんだ地区委員会の教訓をひきながら、この方針の重要性、必要性を一般的にのべるだけでなく、「これしかない」ということで絶対にやりきる構えを確立することが決定的だということをのべました。まさにここが大事なわけで、全党員の力を生きいきとひきだす党の活性化のためには、まさに「これしかない」と割りきること、そしてここでもこれまでの惰性をふっきって、とりくむことがもとめられています。
基本課程の全党員修了は、わが党が前衛党らしくその歴史的使命を果たすためにも、また目前のいっせい地方選挙をはじめとする選挙戦で躍進していくためにも、そして前進しつつ減らさない機関紙活動を定着させるうえでも、どうしても避けることのできない道であるということを腹にすえてとりくむ。そういう腹をすえてとりくんだところでは、みちがえるように支部と党員が変化していることも、さまざまな討論のなかで報告されたとおりであります。
 そして、ここでかさねて強調したいのは、「全支部でとりくむ」だけではなく、「全党員が修了する」までやりきるということであります。支部を基礎にこれをとりくむということは、だんだんと党機関に浸透してきています。しかし、全党員がこれを修了するまでやりぬくということについては、まだそのほんとうの構えになっていない党機関が少なくありません。すでに、全国で四つの地区委員会で、全支部で一回以上のこの学習会がとりくまれています。これは積極的な成果であります。しかし、東京の宮本俊夫同志もいっていたように、これからがほんとうの仕事になるわけで、全支部で一回とりくんだところでも、党員でみますと、まだ二割とか三割しか、この修了はなされていないわけです。ほんとうに、そこを中途半端にせずに、一〇〇%の同志が修了するまでやりきる。それによってわが党の政治的・理論的水準の新たな画期をひらくという高い意気ごみでこの課題をやりきることを訴えるものであります。

党機関の支部への政治理論指導の水準をひきあげるとりくみ

 いま一つこの問題で強調したいのは、何人かの同志がのべたように、このとりくみは党機関の指導を、支部にたいする政治的・理論的指導が、ほんとうにできるような水準へとひきあげていくとりくみでもあるということです。討論でもだされていましたが、まず機関役員の同志がみずから講師にとりくむことで、必然的に勉強にもとりくむことになるわけで、これをつうじて機関役員自身の理論水準が高まり、自信と確信をつかんで生きいきとしてくる。いままでは党活動の生徒であったけれども、こんどは先生になったという話もだされましたが、人に説明できることは、自分がほんとうに深く理解することにもなるわけです。同時に機関役員が支部にはいってこれをとりくむことは、政治的・理論的な学習・納得をつうじて支部を自覚的な活動の軌道にのせる、そういう支部指導ができる党機関になるということでもあります。こうした点からも、全国二万の講師の同志の力をすべてひきだすこととともに、すべての機関役員が、みずからこれに積極的にとりくむということが、いまたいへん重要になっているわけです。

“十二条該当”党員の解決――来年の一・一現勢調査に反映できるように

 最後に、討論でだされたいくつかの重要な問題について三つの点にしぼってふれておきたいと思います。一つは、浜野同志が発言した”十二条該当”党員の解決の問題であります。
 このとりくみが、全党員が活動に参加する状況をつくるためにも不可欠の課題であることは、くりかえし強調されたとおりです。これがあいまいのままで放置されるならば、党内外の境がルーズになり、党が思想的に腐食していく根源にもなる。また、一〇〇%の同志を結集するといっても、これを正しく解決しないことにはそれは空虚な空文句に終わってしまう。立派なタテマエと実際のホンネがちがう党になり、それ自体が前衛党らしい気風をくずしていくことにもなるわけであります。浜野同志も、長いものは十年、二十年と放置されてきたケースもあるということをのべておりましたが、この解決を期限をきめて、一気にやりきる、とりわけ機関の責任に属するものは、すみやかに解決することを強調するものです。とくに、来年一月一日の現勢調査にその活動の成果が積極的に反映できるように、とりくんでいただきたいと思います。

青年学生党員の拡大――「青年全活」の方針にもとづく指導の系統化を

 二つは、青年学生党員の拡大の問題です。討論のなかでも、この分野での深刻なたちおくれとその打開の重要性、切実性が強調されました。
 同時に、わが党が、昨年の「青年全活」などでしめされた「柔軟で新鮮」な接近の方針にそって、これに系統的にとりくむならば、前進の展望はおおいにある、このことも討論をつうじてあきらかになりました。学生のなかで、社研運動やサークル活動、あるいは海外派兵反対の若者らしい果敢なたたかいと結びつけ党勢の新しい前進をかちとっている経験も報告されました。わが党は広範な若者の心をつかみうる、それこそ魅力ある路線と方針をもっているわけであります。
 大切なことは、党機関がこの分野の活動を日本の革新運動の現在と未来にかかわるものとして、党大会決定が強調したように全党的な任務として戦略的に位置づけ、指導の系統性をはかるということであります。とくに、いっせい地方選挙にむかう活動のなかでも絶対にその指導を中断しない。そのために、党機関でも必要な体制をとるし、支部でも青年係などの体制をしっかりとっていくことが大切であります。

党費納入の抜本的向上を根幹とした財政問題について

 三つは、党費納入を根幹とした財政活動の問題であります。この点で、島根の中原同志の発言は、ひじょうに重要な教訓をふくむものでありました。
とくに教訓的であったのは、財政問題を、機関財政の困難というせまい視野だけからみるのではなく、この問題を、全党員が参加する前衛党らしい党づくりの不可欠な一環をなす問題として深く位置づけてとりくんでいることであります。
 とくに党費の納入が、党員の自覚的結集のバロメーターであり、そして党財政の根幹であるということをはっきりさせて、その抜本的向上のために、一貫して力をつくしていることであります。島根では、「党費では財政再建はできない」「これは力にならない」というような、これを軽視する傾向とたたかって、このとりくみを財政活動のまさに根幹にすえることによって財政再建の方向に前進してきているわけであります。この経験にも学んで、党費納入の現状を打開することにぜひ力をつくすことをよびかけるものであります。
 そして、そういう党費納入の向上をはかるためにも、それを保障する支部の日常的な連絡・連帯網が大切であります。島根の経験でもあきらかになったように、党費をあつめるということは、ただお金をあつめるというだけの見地ではだめであります。やはり党員の悩みをきいたり、要求を話し合って心をかよわせる努力をおこなう、それと結びつけてこの課題にとりくむことが、どうしてももとめられるわけであります。お金をあつめるだけではなくて、心をあつめるものなのだという島根のとりくみのスローガン、経験、これをよくふまえて、そのためにも心をかよわせる支部での連絡・連帯網をおおいにつくりあげていくことにも力をそそいでいただきたいと思います。
 同時に、党費納入の抜本的向上を基本にすえて機関の常任給与の遅配の問題、これもこれまでの惰性をふっきって、解決をはかっていくことがもとめられるということも、あわせて強調するものです。
 以上、討論でだされた重要な問題のいくつかについてのべました。わが党が、「社会発展の促進体」としての歴史的役割をほんとうに発揮しうる思想的・政治的に強じんな党に前進していくうえで、避けることのできないこの大きな仕事に、全党が勇気と知性をもってとりくむことを訴えて、この問題での結語といたします。
(「赤旗」一九九〇年十一月二十七日)

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