日本映画大学の特別公開授業として、3月4日(土)に「〈飯山由貴×イ・ラン×FUNI〉 アートと「検閲」 歴史の否定・権力への忖度とどう向き合うか 飯山由貴《In-Mates》上映と日・韓・在日 アーティストによるトーク」が開催されます。
本イベントでは昨秋、東京都人権部による事実上の検閲により東京都人権プラザでの上映が許可されなかったアーティスト、飯山由貴の《In-Mates》(2021年制作)を上映し、作家の飯山本人および本作に登場する在日コリアンでラッパー・詩人のFUNI、また同じ頃、出演予定だった国家的な行事で自作曲が問題視され、公演直前に演出担当者とともに降板させられた韓国のアーティスト、イ・ラン(オンライン参加)の3人によるトークを行う。歴史の否定が差別を助長すること、また表現の現場における権力への忖度について考え、国境を越えて危機感や問題意識を共有し、経験を交換する場としたい。司会はハン・トンヒョン(日本映画大学准教授)。
■経緯
・2022年8~11月、東京都の指定管理施設である東京都人権プラザ(公益財団法人東京都人権権啓発センター)の主催事業として開催されたアーティスト・飯山由貴の企画展「あなたの本当の家を探しにいく」の関連イベントとして、飯山の映像作品《In-Mates》(2021年制作)の上映とトークが予定されていたが、東京都総務局人権部は上映を不許可とした。
・《In-Mates》は、1945年に空襲で焼失した精神病院・王⼦脳病院(東京)の⼊院患者の診療録にもとづくドキュメンタリー調の映像作品。本作では、同院の診療録に記録された2⼈の朝鮮⼈患者の実際のやりとりにもとづき、ラッパー・詩⼈で在⽇コリアン2.5世であるFUNIが、⾔葉とパフォーマンスによって彼らの葛藤を現代にあらわそうと試みる姿が記録されている。また作品内では、当時の時代背景への理解を深めるため、FUNIと飯⼭が専門家のレクチャーを受ける様⼦も収められている。
・東京都人権部が人権啓発センターに送ったメールによると、人権部は①関東大震災での朝鮮人虐殺を事実だとしていること②作品内のラップの歌詞が見方によってはヘイトスピーチととらえられかねないこと③作品を通じて在日朝鮮人が生きづらいと強調されていること――に懸念があるとしていた。
・作家たちは、人権部による上映不許可は東京都による歴史否認と外国人差別の助長にもつながりうるきわめて深刻な事態であり、東京都の人権行政の内実が厳しく問われるべきであると指摘し、謝罪と上映の実施を求めているが、東京都はこの件について事実と異なった説明をするなど、不誠実な態度を取り続けている。
・一方、韓国でも昨年10月に行われた「釜馬民主抗争」(1979年10月、釜山および馬山地域を中心に起きた朴正熙政権の維新独裁に反対したデモ運動。40周年を迎えた2019年から国家記念日に指定され、政府が主管する公式記念行事が行われている)記念式典と関連して、式典で公演が予定されていた楽曲が問題視され、直前になって演出担当者と歌手が降板させられるという出来事があった。
・報道によると、9月末になって式典への大統領の出席が検討されるなか、アーティストのイ・ランが歌う予定になっていた自作曲『オオカミが現れた』について政府の行政安全部が難色を示し、式典を主催した釜馬民主抗争記念財団に圧力をかけ、財団がそれを受け入れたという経緯だ。準備は進んでいたにもかかわらず出演料も未払いのままで、責任もうやむやになっているという。
・演出のカン・サンウ監督とイ・ランは行政安全部に対し、「国家機関などは芸術を検閲してはならない」とした「芸術家権利保障法」違反だとして、提訴を準備中だ。
3月4日(土) 14:00~16:30 日本映画大学白山キャンパス Zoomによる同時配信有 希望者は現地・Zoomともに3月3日12時までに専用フォームから申込