日本共産党第19回大会第2回中央委員会総会への不破哲三委員長の報告「当面する内外情勢と政治課題について」(1990年)

当面する内外情勢と政治課題について

不破哲三幹部会委員長の報告

 私は、当面する内外情勢と政治課題について報告いたします。

一、二つの政治的勝利をふまえて

 第十九回党大会後、われわれはさまざまな闘争や活動にとりくんできましたが、そのなかでも、自衛隊海外派兵法案に反対する闘争と沖縄県の知事選が国民の側の二つの政治的勝利に終わったことは、大きな歴史的意義をもつものです。
 まず「国連平和協力法」案という名前でもちだされた自衛隊海外派兵の計画と立法に反対する闘争です。このたたかいは、自公民の三党合意による新規立法を許さない闘争としてこれからもつづくものですが、まず第一段階において、「国際的貢献」を旗印に憲法の壁を一気にふみやぶり、自衛隊の海外派兵という年来の野望を強行しようとした自民党の計画を、短期間の対決でうちやぶったことは、文字どおり国民の歴史的勝利とよぶべきものでした。
 この勝利は、「政府の行為」による戦争の惨禍を許さず(憲法前文)、軍国主義の復活強化に反対するという日本国民の意思とエネルギーのつよさを内外に鮮明にしたものでした。それは、総選挙で多数をえたことを背景にクーデター的なやり方で憲法の制約の突破をくわだてた自民党の野望に痛撃をくわえるものとなりましたが、それにとどまらず、国際的にも、日本の海外派兵へのふみきりを戦争政策推進への強力な援軍と期待していたアメリカの政府、軍部には大きな失望をあたえ、イラク問題の平和的解決をねがう世界の諸国民の期待にこたえる重要な国際的意義をももちました。
 日本共産党は、国会論戦においても、また、「赤旗」を中心にした宣伝戦においても、10・24の行動や参加者二十万人にのぼった11・11の行動をはじめ、全国的な大衆運動の展開においても、この勝利に一定の重要な貢献を果たしえたことを心からよろこぶものであります。
 沖縄の知事選挙での勝利も、このたたかいのたかまりのなかでかちとられたものであります。沖縄は、日本の米軍基地の四分の三が集中している日米軍事同盟の要であり、米軍の中東出動の最前線となっているところで、そこで革新・平和の勢力が勝利したことの意味はひじょうに深いものがあります。また、一九八〇年の「社公合意」以後、全国的には反共分裂主義が社会党などの大勢となっているなかで、沖縄は革新統一の共闘体制を基本的に維持しぬいてきた唯一の県でした。そこで十二年ぶりの革新県政奪還という全国的にも最初の壮挙をなしとげたことは、九〇年代の日本の政治の大局に重大な影響をおよぼしうる成果であります。
 この二つのたたかいは、どちらも日米軍事同盟の再編・強化路線との対決という性格を客観的にもっていました。沖縄では、勝利した革新知事候補は、安保条約廃棄を政策協定にかかげましたが、この政策協定による候補を公明党までが支持せざるをえない、これは全国からみれば例外的な条件でしたが、こういう状況をもってたたかわれました。二つの勝利は、それぞれ自衛隊の海外派兵計画や米軍基地体制にたちむかうながでの勝利であって、そういう意味で、日米軍事同盟への対決という性格をもっていたのです。
 そのごとは、日米安保条約の堅持を軸にした自民党政治の「古い枠組み」を打破することが、九〇年代の日本の政治の根本問題だと位置づけた第十九回党大会の見通しを、事実と国民的な闘争によって裏づけたものであります。
 もちろん、自民党など反動勢力の反共攻撃は、東欧問題だけでなく、そのときどきのさまざまな問題をとらえてひきつづき執ようにおこなわれています。これとの闘争がこんごの情勢の大局を左右する重大性をもっていることにはかわりありませんが、この二つの勝利にもみられるような、情勢の新しい展開を積極的にとらえて、攻勢的な構えで、自民党政治やそれに追随する反共的諸潮流とたたかってゆくという基本がきわめて重要であります。

二、湾岸危機の公正な平和的解決のために

 つぎに国際問題、とくに湾岸危機の公正な平和的解決のためのたたかいの問題点についてのべたいと思います。

イラクの覇権主義をうちやぶる国際的任務

 大会後、世界情勢と国内情勢の新たな激動の局面をひらいたのは、イラクのクウェートにたいする侵略併合でした。イラクの行動は、クウェートにたいする侵略と併合も、野蛮な人質作戦も、すべてイラクのフセイン政権の無法な覇権主義のあらわれであって、これをうちやぶることは、今日、世界の人民の重大な国際的任務であります。イラクの側は、中東にはさまざまな問題があるといって、たとえばイスラエル問題をとりあげ、中東問題の「包括的解決」が大事だなどととなえています。いわゆる「リンケージ」論ですがこれは侵略に反対する国際世論の分断をねらった策動であります。もちろん、イスラエル問題など、中東のあれこれの紛争問題についての公正な解決への努力は、当然、必要な国際的課題でありますが、これをイラク・クウェート問題解決の条件とすることは、侵略者の策謀を助けるだけであって、わが党はこういう立場をきっぱりとしりぞけるものであります。
 イラクの覇権主義は、冒頭発言で議長がいま強調しましたように、「資本主義世界に内在し、横行してきた、また、横行している覇権主義・侵略主義の中東版」だという点が大事な点であります。たとえばイラクが、米ソについで化学兵器、毒ガス兵器を世界でも大量にもっている軍事大国だということが、いま問題になっています。このイラクの毒ガス戦力も、実は西側の多数の企業の援助によってつくりだされたものです。先日、アメリカのある民間調査機関が調査して発表しましたが、イラクの毒ガス戦力の開発に協力した西側企業は、西ドイツ、アメリカ、イギリスなど二十一ヵ国二百七社におよんでいるとのことです。ソ連も、イラクに武器を提供した国ぐにの旗頭となる役割を果たしてきました。この危険な野蛮で無法な覇権主義は、そういう形で、いわば諸大国によって育成されてきたわけであって、私は、それぞれの思惑からイラクの覇権主義を助長してきた諸大国は、その責任をまぬがれないということを、ここできびしく指摘するものであります。

経済制裁の徹底――大国の”抜け穴”行為をやめさせることが急務

 このイラクの無法な侵略にたいして国際社会がいかなる手段でたちむかうかが、国際政治の重要な焦点になってきました。イラクの侵略がひきおこした湾岸危機にさいして、国連は、経済制裁で侵略者を追いつめ、ることを決定してきました。これは、大戦争への危険をはらむ軍事的衝突ではなく、平和的な手段で公正な解決をかちとろうという方針です。この国連の決定をほんとうの意味で実効あるものとするためには、イラクの侵略後も一連の国ぐにやその企業がイラクにたいする経済・軍事協力を現につづけている、その脱法的抜け穴”行為をやめさせることが急務であります。この点ではとくに安保理事会の常任理事国である諸大国の責任は重大です。
 私は国会の質問で、ソ連でもイギリスでもアメリカでも、あるいは政府当局が協力維持の事実を公然と公表し、あるいはその国のジャーナリズムが事実をあげて内部告発をしていることをしめし、この問題の重大性をあきらかにしましたが、そういう脱法的な〝抜け穴”的行為はその後もつづけられています。たとえば、ソ連についていいますと、十月末の『文学新聞』には、最近イラクを訪問したレニングラードのジャーナリストの報告が載せられています。それによると、約四千人のソ連人専門家がイラク政府の「好意的な」態度のもとで、恵まれた生活条件が保障され、「締結された契約に基づく仕事を完遂する」ために働いているということです。そういうことは、西側の企業の活動についても多く指摘されています。
 経済制裁で侵略者をおいつめるという国連の決定をほんとうに有効なものとする、本気でこれを実行するというならば、こうした〝抜け穴”的なイラク援助をやめさせることにこそ、真剣な国際的努力をかたむけるべき中心点があります。わが党が国会論戦でこの問題を提起したのにたいし、海部内閣は、国連に提起された情報を提供するなどおざなりの対応はしましたが、けっして本気でこの問題をとりあげようとはしません。海部首相にいたっては、国会で、「私は他国の問題に口をだす趣味はもちあわせていない」とまで公言しています。結局、自民党政府にとっては、国連決議の「実効性」をしきりに云々しはするが、それは、海外派兵による米軍への支援・協力を正当化するための飾り文句でしかないのであります。

アメリカの戦争計画に反対する

 一方、アメリカやイギリスは、経済制裁を徹底させるための真剣な努力を欠いたまま、「制裁の効果があがらない」という口実で、平和的解決への努力をたちきり、軍事力の攻撃的な行使によるイラクの軍事的制圧という方向につきすすもうとしています。これは世界が一致して認めた経済制裁の努力を無にすると同時に、中東の全域を戦場として、ばく大な人命を犠牲にし世界経済にも破局的な被害をおよぼす悲惨な大戦争に道をひらくものであります。この冒険的な計画に反対する闘争は、いま世界平和にとってのさしせまった課題となっています。
 アメリカはこの作戦をすすめるために、国連決議がなくてもこういう行動を開始できるように、そのための軍事的政治的準備をすすめる一方、あわよくば国連の軍事行動容認決議をえようとして、ソ連、中国への了解工作をはじめ、集中的な外交活動を展開しています。こういう状況のもとで、わが党は先日、アメリカソ連の大統領と中国の政府にたいして、攻撃的な軍事力行使の計画やそれを容認する新たな国連決議を採択させようとする計画に反対する警告の電報をうちました。これは、世界平和にとって重大な先駆的意義をもっていることを、あらためてここで指摘するものであります。

「世界の憲兵」役を公然ととなえるアメリカの世界戦略

 アメリカがこのように国連決議の枠をこえてイラクにたいする軍事的制圧をしきりに急ぐ根本には、第十九回党大会で指摘したアメリカの新しい世界戦略があります。米ソ接近という体制のもとで、アメリカの世界戦略をどう構築するか。それは、「世界の憲兵」の役割を果たすという名目で、アメリカが核戦力などを世界的に配備し西側の軍事同盟を維持再編する、そして、「力の政策」による世界の軍事的制圧をめざす、こういう危険な計画であります。これは、ソ連の側の軍事ブロックが解体傾向にあり、そしてソ連がアメリカ接近の政策をとっている状況を活用しての、あらたな軍事ブロック体制構築の計画であります。
 この点で、最近注意をひいたものに、レーガン政権時代の国防次官補で、日本問題での発言で日本でも比較的著名なアーミテージという人物が、『中央公論』の最近号に発表した論文があります。そのなかで彼は米国は「世界で残った唯一の超大国」であり、「ポスト冷戦時代」には、「国際的な無法行為」をおさえる力を持っているただ一つの国である、「何ものも、この決断力のある、意思明確なアメリカの指導力には代わりえない」と、宣言しています。そして、そこに現在の中東危機の重要な教訓があるとして、米国は湾岸危機にさいしてとった軍事行動に「弁解がましい気持ちになる必要」はさらさらないんだ、むしろ「中東全域に持っている防衛関係の強化に思い切って歩を進める」べきだと、なんの遠慮もないあからさまな言葉で、ソ連が超大国の地位を失った今日では、アメリカだけが「世界の憲兵」になりうるのだという議論を、国連などどこにあるかといった調子で展開しています。ブッシュ政権自体が、すでにこうした立場から、イラク制圧後の中東における新軍事同盟の構築まで日程にのぼせていることは周知のことであります。
 アメリカが日本にたいして、血を流せ、国民の命を賭けろ、自衛隊を派兵しろという執ような要求をくりかえしているのも、この世界戦略と結びついたもので、当面のイラク問題だけでなく、アメリカが計画している新しい軍事体制のなかで日本がより大きな役割を果たすことを展望しての要求であります。海部首相はブッシュ大統領から「グローバル・パートナー(地球的な仲間)」とよばれたということをたいへんよろこんでいるようですが、これは、地球的規模で軍事同盟に参加しろという要求を、いいかえたことにほかなりません。
 いま、日本の進路にとっても、国際情勢をどうみるかが、大きな問題になりますが、こんどの国会論戦をふりかえると、世界を「冷戦の終結」、および「新しい国際秩序構築への過渡期」とみる点では、わが党以外の諸党は、与野党の別なく、ほぼ共通する認識にたっていました。しかし、現実の情勢は、そのようなバラ色のものではけっしてないのであります。
 たしかにアメリカは、「新しい国際秩序」をめざしています。しかし、それは、ソ連を中心にした東側の軍事ブロックが解体しつつあり、ソ連が対米接近・追従の外交路線をとりだしたことを好機として、アメリカとその同盟国が「世界の憲兵」役を買ってで、世界的な介入と支配の体制を一方的にととのえるというところに、目標があります。そのことが、イラクの侵略を契機に、いっきょに表面化したところに、今日の事態の重大な特質があることをみなければなりません。
 昨日終わった全欧安保協力会議(CSCE)首脳会議でも、戦争の防止などいろいろなとりきめがきめられました。それはそれとして意味のあることですが、そういう全体の流れのなかでみると、とくに世界平和にとってあるいは「冷戦」の終結にとって基本問題である軍事ブロックの問題でみると、この会議が、ワルシャワ条約機構についてはその解体を促進する重要な局面となったことはまちがいありません。しかし、西側の軍事ブロックについては、その解体どころか、西側の指導者がそれぞれ、NATOとその核戦力をヨーロッパで維持しつづけることが重要だということを、演説でくりかえし強調するという状況でした。ここでは、通常戦力の軍縮がとりきめられましたが、その内容をみると、削減される兵器の九割以上はワルシャワ条約機構の側のものであって、NATOの戦力はほぼ現状維持、兵器の種類によってはきめられた「上限」が現状よりまだ大きいというものもあります。
私たちはこの国際情勢を真剣に見すえながら、湾岸危機にたいしてもほんとうの平和の立場から対処していく必要があります。

湾岸危機のもとでの「新しい思考」路線

 これにたいして、ソ連のゴルバチョフ指導部は、「米ソ協調」体制のもとでは、国家間のイデオロギー的・政治的闘争は過去のものになり、「対話」がすべてとなったとして、国際舞台での政治的思想的闘争を否定する、いわゆる国家関係の「脱イデオロギー化」論をとなえてきました。こうした「新しい思考」路線が国際情勢の現実に背をむけた空想的な見方であることは、国家関係でイデオロギーが問題にならないどころか、現にイラクの覇権主義が世界平和と民族自決の諸原則を根本からおびやかし、この覇権主義との闘争が世界的な課題になっているという、現実の事態によってもあきらかにされました。
 この「新しい思考」路線は、わが党が以前から具体的に指摘してきたように、アメリカなどの帝国主義的侵略的な傾向を無視する対米接近と追従の外交を、最大の特徴としています。そのために、いま世界が、問題の平和的解決か大戦争への危険をはらむアメリカの軍事行動の容認かという岐路にたたされている湾岸危機にさいしても、ソ連は社会主義国にふさわしい平和的なイニシアチブを発揮できないでいます。ソ連が、一方では侵略者イラクにたいして軍事経済協力の継続という宥和主義的立場をとりつづけ、他方、世界大戦争の危険にみちびくアメリカの軍事力行使の計画にたいしてもこれを阻止するきっぱりした態度をとらず、なしくずしに追従するようなことになれば、これは社会主義国にふさわしいイニシアチブの欠如というにとどまらず、国際世論に正面からそむく事態となることを、はっきりと指摘しなければなりません。日本の平和民主勢力のになう任務は大きい
それだけに、国際舞台で、イラクの侵略主義を助長するいかなる宥和主義の傾向をも排除しつつ、経済制裁の徹底による平和的解決の追求、アメリカの軍事制圧作戦への反対と防止、こういう方向で世界の世論と運動を発展させる活動はいよいよ重大になっています。この点で日本の平和民主勢力がになっている国際的責任はきわめて大きいものがあります。

三、自衛隊派兵へのいかなる策動も許してはならない

つぎに、自衛隊海外派兵の策動にたいするひきつづく闘争の問題であります。

ひきつづき国会解散・海部内閣打倒を要求して

 海部内閣が国会に提出した「国連平和協力法」案は廃案になりましたが、これは、「日本国民の血の犠牲を」というアメリカの要求に屈従したものであったことは、かくれもない事実であります。この計画は、イラク問題でアメリカの戦争路線を自衛隊派兵という行動で支援するという当面の目的とともに、長期的には日米軍事同盟を地球的規模で展開させる体制をつくるという、きわめて危険なねらいをもっていました。
日米軍事同盟は一九六〇年の安保条約改定で日米共同作戦の条項をもうけ、この三十年間、その準備をすすめてきましたが、その日米安保条約でも、日米共同作戦が発動されるのは日本が直接武力攻撃をうけた場合に限定されていました。海部内閣の計画は、その制約さえいっきょにとりはらい、「国連協力」あるいは「国際協力」の名のもとに、自衛隊の海外派兵と日米共同作戦を地球上の各地で無限定で発動させる、こういう方向への重大な一歩となるものでした。
 この危険な計画を、短期間の闘争で、しかも自民党が多数をしめる衆議院の段階で廃案においこんだことは、日本国民のもつ平和のエネルギー、「深部の力」の大きさと根深さをあらためて発揮したものでした。わが党は、この闘争のなかで、国会解散、海部内閣打倒の要求をかかげました。この要求は自衛隊海外派兵法案に反対するたたかいに決起した多くの国民の共感をえました。今日、政府・自民党は、国民の圧倒的反対が明確であるにもかかわらず、この計画を断念せず、公明、民社との合意を基礎に、多少の手直しによる新規立法の策謀をすすめています。われわれはこの策謀に反対する闘争を断固としてすすめるとともに、国会解散、海部内閣打倒の方向に国民の世論をかちとる活動を、さらに強化しなければなりません。

新規立法のくわだてと自民党流の「国際貢献」論

 自民党は、三党「覚書」にもとづく新規立法を、こんどは三党あわせれば衆参両院とも議席が多数をしめているという条件を活用して、通常国会で強行成立させようとくわだてています。しかし、国民のねがいにさからい、憲法の平和原則に反する立法計画は、どのような手だてや策略を講じようと、廃案となった政府案以上の矛盾と不条理を避けられないものであります。第一回の対決で海外派兵法案を粉砕した闘争の成果をふまえ、国会内外の闘争を結合して、自衛隊海外派兵につながるいかなる新規立法も許さない闘争に全力をかたむけることは、緊急の国民的任務であります。この闘争が勝利できる条件と展望が、明白にあるということを、われわれは深い確信として根底にすえる必要があります。
 新規立法に反対するこの闘争では、自民党などが最大の論拠にしている「国際貢献」論日本が中東の石油に頼っている以上、「カネだけでなく、ヒトを送る」のが当然だという俗論を、徹底的に論破することが大切です。この論法は、自民党だけでなく、一部マスコミの論調などにも共通するものですが、現実には「ヒト」の派遣による軍事的協力をもとめているのは、アメリカ政府など国際的にはごく少数の勢力だけです。世界の多くの諸国民は、反対に、日本が自衛隊海外派兵のくわだてをもっているということを知って、日本軍国主義の復活にたいするつよい懸念と警戒の声をあげています。国際社会が「ヒトの派遣」をもとめているのだという「国際貢献」論は、結局のところアメリカ政府こそ「国際社会」だ自民党の小沢幹事長はテレビのインタビューでこの方程式を明確にのべたようですが、こういう自民党流の対米追従の論理に無批判に同調することにほかなりません。
 しかも、政府・自民党は、これまでは「国民の生命、財産をまもる」ことを安保条約や自衛隊増強の最大の口実としてきた人たちです。その政府・自民党が、こんどはアメリカの要求のままに、国民を危険な戦争地帯に動員し「国民の命を賭ける」ことが「国際的貢献」だと力説するというのは、まったく無原則なご都合主義だといわなければなりません。

国連の平和維持活動と日本がとるべき原則的態度

 「国連協力」と称して、米軍中心の「多国籍軍」への軍事支援をおこなおうとする策謀を暴露することは、ひきつづき重要であります。同時に、国連の「平和維持活動」にたいして日本がどういう態度をとるべきかという問題が、新たな焦点となっていることを重視する必要があります。自公民三党の「覚書」が最大の大義名分としたのもこの問題でした。この三党はまた、この問題を入り口として社会党を新規立法の方向に同調させようとくわだてており、社会党の側に、発表ずみの政策のなかでも、この種の策動に乗じられかねない弱点が現にあることも事実であります。それだけに、この点で、憲法の平和原則を厳守し、自衛隊の海外派兵につながるあらゆる策動に反対する立場から、国連の「平和維持活動」にたいしてとるべき原則的態度を明確にすることは、きわめて大事になっています。
 この点でまず第一に重要なことは、国連の正当な「平和維持活動」に協力する場合にも、日本は、憲法の平和原則をもって国連に加盟した国として、「平和維持軍」や停戦監視団など軍事的性格をもった活動とははっきり一線を画し、協力の対象を、選挙監視など非軍事的性格の活動に厳格に限定するということであります。
国連はその憲章に明確に宣言されているように、世界各国が「国際の平和及び安全」の維持のために力をあわせることを目的としており、国際紛争はあくまで平和的手段によって解決すること、「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為」が現実におこった場合にも、まず平和的手段による解決を最優先させることを、憲章で具体的に規定しています。国連が軍事力を行使するというのは、そうした手段ではどうしても問題を解決できないことが明確になった場合にとられる、きわめて限定された措置であります。ここに国連創立の初心があることを重視しなければなりません。
 さらに、国連憲章は、国連が軍事力を行使する場合には、加盟国と協定を結ぶ必要があるとし、しかもそこの協定は、各国の「憲法上の手続きに従って批准されなければならない」と規定しています。(第四三条)。ですから、各国の憲法上の立場を尊重するということが国連の活動の根本をつらぬいていることは、この規定をみただけでも明白です。「国連の決定は憲法に優先する」などといって、憲法をふみにじる自衛隊の海外派兵や各種の戦争協力のくわだてを、国連の名によって正当化しようとする自民党などの議論は、国連憲章の規定とそこを流れる根本精神をまったくゆがめた暴論にほかなりません。
 あらゆる問題の平和的解決を重視する国連の基本精神からいっても、各国の憲法上の立場を重視する憲章の具体的規定からいっても、日本は、自国の憲法の許さない「平和維持活動」については参加しないという立場を、堂々ととることができるのであります。
 第二は、そのときどきの国連の決定やその活動が、各国の民族自決権の尊重をはじめ、国連創立のほんらいの基本精神に合致しているということが、当然、協力の前提にならなければならないという点であります。
 国連憲章は、その前文で「基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念」を確認し、さらに、その「目的及び原則」の章で、「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係」の発展をうたっています。このように、国の「大小」にかかわらず諸国民の民族自決権を尊重じ、その「同権」をおかさないということは、国連の活動の全体をつらぬくべき基本精神であります。しかし、国連の現状には、大国中心の傾向が根深くあり、第二次世界大戦の終結時の情勢をも反映して、大国中心のこの傾向は、安保理事会の構成など、機構のうえにもあらわれています。そのために、米ソ接近”という今日の情勢のもとでも、パナマ問題など大国(アメリカ)が関与している侵略行為については、総会で非難決議をしても現実の制裁行動はなんらとれないできました。逆に大国の思惑が一致する場合には、他国の自決権の侵害など、国連の基本精神にそむくまちがった方策がとられる場合もありうることを注意する必要があります。実際、こうした傾向は、国連の「平和維持活動」の歴史のなかでも、コンゴでの内戦介入など現実におこったことであります。
 それだけに、日本が国連の「平和維持活動」への協力を問題にする場合、国連の決定や活動のすべてを無条件に絶対化することなく、国連の自主的な加盟国として、その内容を、世界平和を真剣に擁護する立場から、日本国憲法の精神、国連憲章のほんらいの精神にたってよく吟味し、それにもとづく自主的な対応をしてゆくことが大切であります。「国連協力」の名のもとに、あれこれの大国の思惑への無批判的な追従者になったり、他民族の自決権をおかすような活動に参加したりすることは、厳にいましめなければならないことであります。
 憲法の平和原則と国連憲章ほんらいの精神にそった、このような国連協力の活動については、これを実行するうえで、現在でもそれをはばむ法的な障害はなにもありません。新規の立法が必要だというのは、そのこと自体が、憲法の枠をこえた「人的貢献」すなわち自衛隊の海外派兵につながる法体制づくりをめざしていることの告白にほかなりません。
そういう点もしっかりふまえて、自衛隊の海外派兵を許さず、軍国主義の誤りをくりかえさないという国民の多数の意思を結集して、新規立法の完全な粉砕のために力をつくす必要があります。

四、政治戦線の現状と日本共産党の役割

自民党との連合か、革新統一戦線かの対決

 新規立法での三党合意は、憲法の平和原則に挑戦し、自衛隊の海外派兵をふくむ、日米軍事同盟の拡大強化につながる基本問題で、公明、民社の両党が自民党の野望に同調したことを内容とするものであります。これは、個別の政策問題での合意にとどまらず、自公民の連合路線の具体化の一歩という性格をもっています。
 公明党は、まもなくひらかれる党大会の議案のなかで、これまでは、「社公民」といってきたが、「大枠『社公民」路線による連合政権への展望には、喪失感を抱かざるを得ません」とのべて「新しい選択」がありうることを強調し、「三極体制」下の主体性とか、中道主義とは右にも左にも中立というのがほんらいの立場なのだとかのべて、「社公民」路線を放棄し、「新しい選択」の名のもとに自民党との連合への道を公認のものにする態度をすでにあきらかにしています。
 第十九回党大会が提起した、九〇年代の政治戦線での二つの方向の対決自民党政治を補強する自民党との連合路線にたつか、それとも、自民党政治を終わらせる革新統一戦線の路線にたつのかの対決は、「国「連平和協力法」案をめぐる闘争をつうじて、いよいよ現実的な意味をもつ問題となってきました。
 ところが、社会党は、公明党の自民党への接近がこれほどにも明確になったにもかかわらず、反共分裂主義にたった社公民路線にいまなおしがみつき、新規立法問題でも、公明党との「共通点」を追求するという態度を表明しています。その根底には、日本共産党排除と安保・自衛隊の肯定を主な内容とした「社公合意」への固執があります。反革新のこの枠組みからぬけだして、革新統一戦線の大道に勇気をもってふみださないかぎり、社会党はこんごとも、公明、民社に追従して自民党との連合路線におちこんでゆくか、それとも動揺と孤立の状態におちいるかの選択をせまられる事態に、しばしば直面させられるでしょう。
 こういう情勢のもとで、革新の立場を堅持し革新統一戦線を一貫した方針とする日本共産党の使命と役割は、日本の平和と主権と進歩のためにも、国民の生活と生命の擁護のためにも、いちだんと鮮明になっていることを強調しなければなりません。
 それだけに、相手の側からいえば、日本共産党が国民のあいだに共感や信頼をひろげることを、なんとしてもくいとめようとする、反共攻撃が、反動勢力の至上命令として、こんごともはげしくつづけられることは、必至であります。東欧・ソ連問題を材料とした「共産主義崩壊」論的な攻撃はもちろんのことですが、情勢や闘争のさまざまな展開に応じて、そのときどきの問題をとらえての日本共産党攻撃がおこなわれています。海外派兵問題でも、「三党覚書」が発表されたあと、日本共産党が自民党の「国際貢献」論に同調しない道理ある立場をとっているただ一つの党であることを理由として、これは「狭い考え」だといって攻撃するなどの論調が、一部のマスコミに、現にあらわれました。
 こうした攻撃をいささかも軽視することなく、的確な反撃でうちやぶること、日本の反共土壌を根本から変革していく気概をもってこの活動にとりくむことを、われわれは一貫して重視する必要があります。

コメ自由化と消費税問題

 自民党が反共野党のとりこみで悪政の継続・補強をねらうという政治戦線のこうした状況は、その他の問題にも、同様な形であらわれています。
たとえば、消費税やコメ輸入自由化など、国民生活の根本にかかわる経済問題でも、そういった状況が展開されています。
 コメの自由化の問題では、公明党は、自民党以上に対米追従的態度をとっています。先日の国会に、全国の農民や農民組織から「コメ自由化」反対の請願が提出されました。これは、これまで国会で満場一致できめられた国会決議に合致する内容のものでしたが、公明党は、この請願にも反対するという、国会決議さえ無視する態度をとりました。これは、自民党に先んじて、自民党がねがっているコメの輸入自由化への道をひらくという態度の典型的なあらわれでした。
 消費税問題では、前国会いらい、税制協での論議がつづいてきましたが、この論議を、ほんとうに国民の期待にこたえる実のあるものにするために、消費税実施が国民生活にいかなる影響をおよぼしているかの調査をはじめ、消費税問題への本格的なとりくみをすることを主張したのは、わが党だけでした。
 いま、税制協のとりまとめの方向として、「経過措置」の名による「見直し」論が浮かびあがっています。自民党は、「経過措置」といいながら、事実上これをこの問題の決着にして、消費税の定着をこれではかるということを、ねらっています。自民党のこの策動への批判と警戒をつとめ、国民の切実な消費税廃止要求を棚上げさせることが絶対にないように奮闘することが、いまきわめて重要であります。
 自民党海部内閣は、現在、自衛隊海外派兵、「多国籍軍」の戦争費用も負担する、在日米軍の駐留経費の負担もさらにふやす、そして自衛隊も増強するなど、軍事費のはてしない膨張と拡大の方向をうちだしています。そのときに、消費税の「見直し」での定着という自民党の要求に妥協したり追従したりするならば、そのことが、やがて税率の引き上げによる国民生活への圧迫のかぎりない拡大につながることは、不可避であります。
こうした情勢は、消費税問題を、国民生活の根本にかかわる問題としてとらえ、あらゆる状況をつうじての「戦略的要求」として一貫して追求することの重要性を実証しています。「消費税をなくす全国の会」が結成されたことは、この情勢と国民的な要望に適切にこたえるものでした。わが党は、ひきつづきその組織の拡大と活動の強化に、おおいに協力し、努力をそそぐ必要があります。
 なお、消費税の問題では、これが政党の機関紙活動への課税という、民主政治の基本にかかわる悪税だということも、重視しなければなりません。政党活動は営業活動ではないから課税しないというのが、歴代政府の態度でした。今回の消費税は、これをやぶって政党活動に課税するという転換をおこなったわけで、この税金の悪税ぶりをさらに証明したものです。われわれは国会の場でもこのことの不当性を多くの機会に主張してきましたが、この点は、どういう機会であろうとただちに是正することが、日本の民主的な政党活動の発展、日本の民主政治のために必要であることを、ここでも指摘するものであります。

天皇の元首化・神格化のキャンペーンと民主主義の侵犯

 つぎに、民主主義の問題ですが、その一つに、「即位の礼」から「大嘗祭」にいたる一連の儀式がおこなわれ、これを中心として、天皇の元首化、神格化のキャンペーンがくりひろげられているという問題があります。これは、憲法の主権在民の原則を空洞化させる危険な内容を基調としています。
 これについて「皇室の古来の伝統」だとか「日本の貴重な文化遺産」だとかいった弁護論が一部でしきりにいわれていますが、こんどおこなわれた一連の儀式は、実は、天皇を国民の上に君臨する専制的な支配者としておしだすために、絶対主義的天皇制を確立した明治時代に、人為的につくりあげられた制度の復活にすぎません。これを制度化したのが、一九〇九年、明治四十二年の「登極令」でした。この「登極令」は、戦後、民主政治とあいいれないものとして廃止されたものです。ところが、政府は、民主政治に逆行する諸儀式の復活を、民主政治にあいいれないものとして廃止された「登極令」をよりどころに、国民の税金をおしみなくつぎこんで、挙行したのです。国会に公式にはかることもなしに、これを強行した自民党政府の民主主義侵犯の罪は重大であります。そしてこの問題にだいしても、主権在民の立場から一貫した批判的態度で対処したのは日本共産党だけでした。
 また、「即位の礼」で新天皇は、昭和天皇は在位六十余年の間、「いかなるときも、国民と苦楽を共にし「た」とのべ、海部首相は、その言葉に感銘をうけたというあいさつ(よごと)をのべました。こういうやりとりに代表されるような、前天皇の戦争責任の免罪論が、この儀式とキャンペーンの一つの基調をなし、しかもそれが各国代表の面前でおこなわれたということも、不問に付すわけにはゆかない問題であります。最近、前天皇の「独白録」なるものが公表されました。この文章はまず、太平洋戦争の原因について、第一次世界大戦後、欧米各国が日本にたいして不当な態度をとったとして、人種差別、カリフォルニアへの移民拒否、青島(チンタオ)を中国に返還させられたことなどをあげ、それにたいする日本国民の憤慨が戦争の原因となったという議論から始まっています。それから、結びは、真珠湾攻撃の開戦のときに、自分が「国家、民族の為に・・・・・・是なり」として開戦の決定に同意したことは「正しかった」、自分が拒否権を行使していたら、かならず「大内乱」がおこり、「今次の戦争に数倍する悲惨事」がおこなわれたはずだという、自身の責任回避論と事実上の開戦合理化論で結ばれています。そして、この文章の全体をつうじて、なぜ戦争に負けたかという「敗因」論への言及はいろいろあっても、太平洋戦争で他国を侵略し、アジア諸国民に大惨害をあたえたことについては、一つの反省の言葉もないことが特徴であります。
 こういう問題は、けっして過去の歴史上の問題にとどまるものではありません。自民党政治は、日本が第二次世界大戦をひきおこした三大侵略国家の一つでありながら、そのことへの真剣な反省を欠いたまま、戦後政治に対処してきたところに、最大の反動的特徴をもっていました。今回のように、アメリカの要求があれば、自衛隊海外派兵など軍国主義の復活・強化の策動にただちにうってでる、こういうタカ派路線も、アジアの二千万の人命と三百万日本国民を犠牲にした軍国主義と侵略戦争への反省のなさと結びついていま
す。
 こうした状況は、三国軍事同盟の同じ仲間だったドイツやイタリアの戦後の政治状況とくらべても、異常きわまりないものです。こうした侵略戦争への異常な無反省と戦犯政治の温存の根底に、実は、十五年戦争の全期間にわたって名実ともに戦争の最高指導者だった天皇の戦争責任を免罪した問題があることは、かくれもない事実であります。
歴史のいつわりの上に、天皇の元首化、神格化という民主政治の空洞化が進行することを許さないためにも、侵略戦争とその責任をめぐる事実の究明にひきつづき努力をかたむけることは、重大な国民的な課題の二つであります。

小選挙区制・政党法導入の策動粉砕のたたかいは日本の民主主義の生死にかかわる問題

 民主主義の問題では、「政治改革」の名のもとにくわだてられている自民党の小選挙区制・政党法導入の策動との闘争が、きわめて重大であります。
 この点で、とくに注目する必要があるのは、わが党以外の多くの野党が、自民党のこの計画にたいして、小選挙区制の導入に正面から反対する態度をとらず、比例代表制とそれの組み合わせの仕方、「併用」制か「並立」制かの選択が問題だといった態度をとり、小選挙区制論議という自民党の土俵にのる傾向をつよめできたことです。そういうなかで、自民党はいよいよ図にのって、党略本位の反動性をますます露骨なものにし、小選挙区制の比重をさらに大きくするとか、さすがにこれはいまひっこめつつありますが、「一票制」といって、小選挙区での得票だけで比例代表の議席もきめてしまうといった無法きわまるやり方まで一時は問題にするといった、横暴な態度にでています。
 国民主権の具体化であるべき議会制民主主義を、自民党一党支配維持のための手段につくりかえようというこの陰謀を許すわけには絶対にゆきません。そのねらいを広範な国民のあいだで徹底的に暴露することは急務であります。
 国会の定数是正の早急な実施を要求しつつ、小選挙区制・政党法導入の策動を粉砕するたたかいを、日本の民主主義の生死にかかわる問題としてひきつづき強化する必要があります。参院選の比例代表制度を改悪しようという攻撃も重視して、これをうちやぶらなければなりません。

地方政治での革新的潮流の前進をめざして

 地方政治の問題ですが、ここでは政治革新の路線と自民党政治を補強するなれあい連合路線との対決が、国政の場合以上に明白になっています。全国の都道府県をみると、自社公民が与党だという県が十九府県、自公民が与党のところが十二都県、合計三十一都府県にのぼり、自民党単独の県政は十一県だけです。すでに、自社公民を中心にした翼賛体制、連合体制は都道府県の多数をしめ、そのかぎりでは日本の地方政治の支配的潮流となっています。そういう翼賛・なれあい政治の体制のもとで、住民の利益をまもるという自治体ほんらいの機能の喪失や、大企業本位の計画や中央政治の政策の下請け自治機関への自治体の転落、こういう事態がおこっていることを重視する必要があります。
これにたいして、最近一年間だけをとっても、われわれは、神戸市、川崎市、福島市、町田市、東京の中野区、山形市、新潟市、高知市などで革新自治体を防衛し、島根県の松江市や東京の東久留米市、沖縄の沖縄市、島根県の江津市、山形県の長井市などで新たに革新自治体を確立したり、奪還したりするたたかいに成功してきました。これら一連の中間選挙での革新の勝利は、地方政治をおしつぶす自民党の反動攻勢にたいする国民の側からの重大な反撃でしたが、それらはすべて、いろいろな形はありますが、革新の共闘の成
果としてかちとられたものです。それにくわえて、さきの沖縄県知事選挙での革新共闘の勝利は、自民党政治を終わらせ、国民本位の政治を実現するうえで、革新統一戦線が決定的な意義をもつことをあらためて証明したものであります。この経験と教訓を全国にひろげなければなりません。

日本共産党の躍進は歴史の要請にこたえる任務

 以上、中央、地方の政治にわたって、さまざまな問題をみてきましたが、政治情勢のすべては、国民の利益にこたえる革新の立場を堅持し、革新統一戦線の旗を一貫してかかげて奮闘する日本共産党の役割の重要性をますます浮きぼりにしています。すべての選挙戦で反共攻撃とその影響をうちやぶり、日本共産党の議・席と得票の前進をかちとることは、今日の重大な情勢のもとでの歴史の要請にこたえる任務であります。
 この間、一連の選挙戦のなかで、社会党への追随の立場から、日本共産党が独自の候補をたてることへの否定的な意見が一部のマスコミその他で表明されました。こうした意見は、根本からいえば、いまの情勢のもとで国民の利益をまもる日本共産党の革新的役割をみないものであると同時に、統一戦線が実現していない条件のもとで、統一戦線を前進させる力関係の発展は、どうしてかちとられるかという見地を失った見方であります。日本共産党は、その地方地方の状況に応じた統一戦線の努力を積極的におこないつつ、統一戦線が実現していない条件のもとで、革新の党・日本共産党が独自に積極的に立候補して自民党を政治的においつめ、その地方における真の革新的な立場の政治的比重を大きくするたたかいにとりくんでいます。このたたかいの大局的意義をしっかりとつかみ、大衆的にもあきらかにしてゆくことがこんごいよいよ重要であります。
愛知の参議院補選は、この方針を堅持して攻勢的にたたかい、投票率が大幅に低下したなかでも前回の通常選挙での得票をかちとり、得票率では十数年来の実績を大幅に上回る成果をかちえました。そのことによって、「国連平和協力法」問題が国政の上で争われているなかで、自民党を少数派においこみ、愛知県民がこの問題で自民党政治に大きな審判を下すことに大きく貢献したし、また、そういう状況のもとで日本共産党の前進が可能であることを実証することによって、党と自覚的勢力に確信をあたえるものになりました。この経験をしっかりとふまえ、こんごとも積極的な選挙戦のとりくみに生かしてゆくことが大事であります。

五、日本共産党と革新・民主・平和勢力の闘争の国際的意義

 つぎに、日本共産党と日本の革新民主平和勢力の闘争が、現在どのような国際的意義をもっているかという問題です。

世界的な混迷のなかでひかる日本共産党の路線と活動への期待

 第十九回党大会で深く分析したように、ソ連追随路線が破たんしたことからくる失望や失意、社会民主主義への転向現象、「社会主義・共産主義崩壊」論や「資本主義万歳」論への降伏、あるいはまた崩壊した抑圧的体制の弁護・合理化論など、世界の共産主義運動におこっている混迷は、ひきつづききわめて深刻なものがあります。そのなかで、萌芽的にもせよ、善意の模索や前進的な探究の努力が各所でおこなわれはじめていることを、われわれは注意深くみる必要があります。
 最近、国際委員会責任者の佐々木陸海同志を団長とする代表団が、南米のウルグアイ、ブラジルを訪問してきました。その帰国報告によると、ラテンアメリカ諸国の共産党の間では、ソ連追随の傾向がこれまでかなりつよかったのが特徴ですが、そこでもソ連離れ〟の傾向、ソ連追随の立場からの従来の誤った態度への反省、またいまソ連からもちこまれてきている「新しい思考」路線への批判的態度などがかなりひろくみられ、困難や危機はあるが、科学的社会主義の旗を堅持するなかで自主的な前進の方向を模索する努力が感じられたとききました。
 そういう世界的な情勢のなかで、日本共産党の路線と活動、最近の党大会決定が果たしている役割はきわめて大きいものがあり、科学的社会主義の事業の確固とした擁護者として、日本共産党への多くの期待と共感がよせられていることも特徴であります。「赤旗」の十月二十五日付には、アメリカ共産党のある活動家――世界労連で活動している幹部から、日本共産党中央委員会に寄せられた手紙を紹介しましたが、この手紙はそうした国際的状況を端的にしめすものでした。この活動家はこの時期にわが党の方針にふれた感銘をこうのべています。「アメリカ労働者階級の一代表にとって、あなたがたの方針や決定を読んだ影響がどんなに力強く、勇気づけられるものであったか、想像するのは困難でしょう」「歴史的に発展してきた科学的社会主義の諸原則を堅持し、共産主義の名称や理想の放棄を拒否しているあなたがたは、世界の労働者と人民にたいして偉大な貢献をしてきました。日本共産党の方針と民主主義の宣言は、今日のヨーロッパの混乱と資本主義の攻勢を乗り越えるうえで、また社会主義の前進を再開していくうえで、世界の党と労働組合にとって大きな援助となるものです」
 私たちは、わが党の路線と活動が、今日の国際的な状況のなかで、その正確さへのあらたな確証をえていることにさらに確信を深め、おおいに自信をもって活動したいと思います。

東欧・ソ連問題について

 つぎに東欧・ソ連の問題ですが、ここの情勢を科学的社会主義の立場で的確にとらえ解明してゆくことは、反共攻撃やその否定的影響を克服するうえでもひきつづき重要な問題であります。
 党大会では、われわれは東欧情勢について、スターリン・ブレジネフ型の体制の崩壊後、「社会主義の精神にたってよりよい社会への前進をめざそうとする積極的な傾向」はもちろんあるが、資本主義の復帰を待望したり、国づくりのモデルを社会民主主義にもとめたりする傾向、軍事同盟NATOへの加盟を是とする傾向、反共主義の立場から国民の政治的自由に制限をくわえる反動的傾向など、「社会進歩にも民主主義にも反する各種の逆流」が表面化していることを指摘し、東欧の事態のすべてを「民主革命」として無条件に礼賛する態度をいましめました。
 この逆流は、大会後の四ヵ月間に、一連の東欧諸国でいよいよつよまっています。東ドイツは、NATO体制と西ドイツ資本主義に吸収され、ドイツの統一が西側軍事ブロックの拡大という結果に終わるとともに、旧東ドイツでは人民の生活にたいするこれまでの保障が失われるという事態も生まれています。また、旧政権党が選挙で多数をしめたブルガリアや、救国戦線が選挙で勝利をおさめたルーマニアをふくめて、反動の側から進歩勢力の抹殺をめざすキャンペーンが展開され、国民の政治活動の自由がおびやかされる危機的な状況も進行しています。東欧のこうした状況は、旧政権党が社会民主主義への転向の道をえらび、ままた、科学的社会主義の立場にたつ前衛党が建設されていないという場合に、その国の社会進歩の事業がどのような混迷、どのような無力化におちいるかを、新たな悲劇的諸事件をふくむ生なましい事実でしめしたものであります。
 これらの国ぐにの前途はきわめて複雑で困難なものがあることを予想させますが、第十九回党大会決議が指摘しているように、東欧諸国が「真に社会主義的な前途をきりひらいてゆくかどうかは、科学的社会主義の立場を堅持した真の自覚的勢力がいかに成長するか、そして国民と結びつく努力をいかに精力的にすすめてゆくかどうかに大きくかかっている」のであって、この点をしっかりとらえて情勢の推移をみてゆくことが大事であります。

世界の平和・民主運動でも、「新しい思考」路線の解体作用を克服するたたかいを

 ソ連の「新しい思考」路線は、現代資本主義の礼賛論や社会民主主義美化論などをふりまくことによって、世界の共産主義運動の混迷を促進するうえで、重大な責任をおっています。同時に、ここで強調したいのは、「新しい思考」路線が、帝国主義との対話と協調を第一義的な課題とし、人民の闘争に従属的な地位をあたえる路線として、世界の平和・民主運動の分野でも、平和と自決・社会進歩をめざす諸国人民の闘争や各分野の国際的な運動にたいして解体的な作用をおよぼしているという問題であります。こうした否定的影響を克服して国際的な運動の前進をかちとるうえで、日本の革新・民主・平和勢力とその運動がになっている任務は、きわめて大きいものがあります。
 すでに多くの機会に報告したように、いま日本の平和運動は、「新しい思考」路線の大国主義的なもちこみと積極的にたたかって、「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」の署名運動をひろげ、「平和の波」の運動を数次にわたって国際的に組織するなど、世界の反核平和運動の前進をかちとるうえで貴重な貢献をなしとげてきました。
 これにくわえて、最近モスクワでおこなわれた世界労働組合大会も、「新しい思考」路線のもちこみとの闘争が労働組合運動でもその国際的な前途を左右する焦点の一つとなっていることをあきらかにした点で、ひじょうに重要な内容をもっていました。
 世界労連の大会は、世界労連加盟組織だけではなく、いろいろなかたちで関係のある未加盟の組織もふくむために、世界労働組合大会としてひらかれていますが、世界労連指導部が用意して大会に提出した運動方針の原案は、国際政治の諸問題で「新しい思考」に追従するというだけではなく、労働組合運動ほんらいの分野についても、きわめて深刻な転換としてあらわれていたのが特徴でした。方針案のなかから、「資本主義」の概念も「搾取」の概念もまったく消えていました。労働者の利益と権利をまもるという労働組合ほんらいの分野でも、資本主義的搾取と抑圧に反対してたたかうという基本を欠落させた方針が提案されたのです。全労連の代表をふくむ日本代表団はこの誤りを批判しておおいにたたかい、部分的であるが搾取に反対する闘争をとりいれさせるなどの、いくつかの修正をさせましたが、全体の基調はそういう協調主義のものです。日本代表の発言にたいして、多くの資本主義国の労働組合から共感や同意の声がよせられたとききましたが、そういう状況が労働組合運動の分野にもおきているという点を、われわれはよくみる必要があります。

日本の諸闘争の前進で世界に貢献する

 「社会主義・共産主義崩壊」論が世界的な規模でふきあれ、「新しい思考」とむすびついた逆流の解体的な作用がこのように顕著になっているなかで、平和と社会進歩の確固とした立場を堅持する日本の平和・民主・革新の運動が国内の諸闘争で前進をかちとることが、国際的にも重要な意味をもっているということを、この問題の最後に強調したいと思います。
 さきの総選挙で、日本共産党が反共攻撃に屈せずにほぼ前回並みの得票を維持したという事実がある国際組織の会合で紹介されたら、この反共の嵐のなかでよくぞもちこたえた、これは国際的に進歩の勢力をはげますものだとして拍手でむかえられた、ということを以前にも報告したことがあります。まさに、日本の諸闘争の前進の一つひとつが国際的に大きな意味をもっているのです。とくに、今回の二つの政治的勝利は、その点でも大きな国際的意義をもつものとなったと思います。
 かつてレーニンは、国際主義を論じて、その第一の内容として「自国内の革命運動と革命的闘争とを発展させるために献身的に活動する」という問題をあげたことがあります。今日の世界情勢のなかでは、自国、つまり日本における闘争の前進をかちとることで国際的に貢献する、こういう立場を国内のすべての活動において自覚的につらぬくことがとりわけ重要になっていることを、強調したいのであります。

六、日本共産党の躍進のために

 国内、国際の全情勢は、日本共産党の躍進を切実にもとめています。午後の諸報告で論じられる問題ですけれども、いっせい地方選挙と国政選挙、中間選挙での躍進をかちとることは、今日の情勢がもとめる歴史的な要請にこたえるために、どうしてもやりとげなければならない任務であります。
 そして、「社会主義共産主義崩壊」論などの反共攻撃がつづくなかで、これにたちむかって党の躍進という任務をなしとげるためには、わが党が、国民の利益の擁護者として諸闘争の先頭にたつとともに、「赤旗」の拡大を軸に広範な国民諸階層との結びつきを拡大強化すること、また、日和見主義を克服するイデオロギー闘争、教育を中心にした前衛党らしい党づくりの活動を飛躍的に前進させて、いかなる情勢にもたえうる強じんな党をつくる努力などが、不可欠な課題となっています。
 世界と日本の情勢、人民の闘争のなかでためされた党の路線、科学的社会主義の事業への確信を全党のものとし、日本共産党の躍進をめざす諸活動に全力をつくしてとりくむことを期待して、報告を終わるものです。
(「赤旗」一九九〇年十一月二十五日)

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