日本共産党第19回大会第2回中央委員会総会への上田耕一郎副委員長の報告「いっせい地方選挙、中間選挙、国政選挙など一連の選挙戦について」(1990年)

いっせい地方選挙、中間選挙、国政選挙など一連の選挙戦について

上田耕一郎副委員長の報告

 いっせい地方選挙、中間選挙、国政選挙など一連の選挙戦について報告をいたします。

一、情勢の特徴と選挙戦での前進の課題

 第一は、情勢の特徴と選挙戦での前進の課題についてであります。まず第十二回いっせい地方選挙は前半戦が四月七日、後半戦が四月二十一日投票ときまり、知事選の告示日、三月十八日まで四ヵ月足らずということになります。
 議員選挙は全国の自治体三千三百十五のうち半数ちょっとでおこなわれます。市長選挙は全自治体の約四分の一でおこなわれます。東京、茨城、沖縄は都議選、県議選がありませんけれども東京、茨城は知事選がありますので、全人口の九九%が、沖縄をのぞいてなんらかの選挙戦にかかわる選挙になります。首長選挙には十五の革新自治体、福岡県など一県六市一区七町村の首長選がふくまれています。それまでに六つの知事選、茨城の県議選、北九州の市長選など少なくない重要な中間選挙があります。
 こんどのいっせい地方選挙は自民党が多数を確保した総選挙いらいの最初の全国的選挙でもあります。四年間の地方政治にたいする国民的審判となるだけでなくて、中東危機の展開によって日本の進路とともに各党の立場の基本がするどく問われつづけるという、こんごの国政にも重要な影響がある選挙になります。国政選挙は、先日重要な成果をあげた愛知の参議院補選につづいていま、新潟の参議院補選がたたかわれていますし、参議院選挙は九二年におこなわれます。衆議院選挙も海部内閣打倒、衆議院解散総選挙を要求している党として、たたかうかまえにはやくたつ必要があります。
 国政選挙は参議院が与野党逆転になり、衆議院は自民党が多数確保という状況ですので、一つひとつの補選も参議院選挙も総選挙も九〇年代の政局の動向を左右するものとして各党が総力を注入する重要な政治戦になっています。

激動的で複雑な情勢をしっかりつかむ

さてつぎは、これらの選挙をめぐるいまの情勢の特徴はなにかということであります。この四年間、情勢はめまぐるしく激動の内外情勢を反映してかわりました。四年前のいっせい地方選挙は売上税法案をめぐって「列島騒然」のあの状況のなかで党は議員選挙で百四十八議席をふやす、七県二十市百二十五町村で空白議会を克服して史上最高の三千八百二十四名の地方議員数に達するという成果をあげました。その後も八九年の消費税廃止でたたかわれた時期には、たとえば首長選挙でぐっとのびていくとか、あるいは吉井さんが大阪で参議院補選で勝利するとかいうこともありましたが、天安門事件以後、ご存じのような「社会主義・「共産主義崩壊」論の攻撃等々で参議院選挙衆議院選挙で後退するという変化が生まれました。現在の選挙をめぐる情勢は、激動的で、しかも複雑です。そこをしっかりみる必要があります。
 注目すべき若干の特徴をあげてみますと、一つは、戦後政治の総決算をかかげた中曽根内閣いらいの四代の自民党政府のもとで、あらゆる分野で、中央でも地方でも攻撃が強化されてきた。反動化もすすんできた。そのため国民・住民との矛盾が拡大してきており、不破委員長報告で「二つの政治的勝利」といわれたような「深部の力」の発揮も生まれている、国民・住民と自民党政治との矛盾が中央でも地方でも激化しているという特徴があります。
 二つ目に、そういう自民党政治にたいして日本共産党をのぞく他の野党が、地方ではむしろ積極的に追随、加担をつよめている、といういちじるしい特徴があります。委員長報告でふれられたように、とくに社会党の右傾化がいちじるしく、自社の相乗りは地方政治の面でも全国的に拡大しています。
 三つ目に、この一年間におきた天安門事件、「スターリン・ブレジネフ型」の政治・経済体制とそのおしつけの破たんであるソ連、東欧の激動を利用した「社会主義・共産主義崩壊」論の反共攻撃、党大会前後の「民主集中制を放棄しろ」、「宮本議長やめろ」等々のマスコミまで動員された反共攻撃、その影響の有権者のなかへの広範な沈殿があります。これは現在すべての中間選挙、国政選挙で例外なく自民党、ならびに反共諸党が猛烈につかってきております。
 四つ目は、八月二日のイラクのクウェート侵略にはじまった中東危機、自衛隊海外派兵法案の提起とその廃案、それにつづく新規立法の動き、国民的な世論と運動のたかまり、そのなかでの反戦平和の伝統をもつ日本共産党への期待の高まり、という新しい情勢があります。

各党は消長をかけての必死のとりくみ

 では各党はどういう動向かといいますと、それぞれ全力をあげて来年のいっせい地方選挙、再来年の参議院選挙の準備をしながら、激動する政局のなかで各党の消長をかけて中間選挙にも参議院補選にも対応しております。自民党は総選挙での過半数確保のいきおいにのっていっせい地方選挙では前回の失地を回復しようとしており、また参議院での与野党逆転をなんとかしようということで、参議院補選、参院選に必死のとりくみです。衆院選については多数をもっていますから、なるべく解散はしない、という態度をとっています。社会党は土井ブームの継続に期待しています。「社会新報」をみますと、いっせい地方選挙では「自治体議員三割増」というスローガンを大きくかかげて、全国的に大幅に立候補者数をふやしています。国政選挙でも積極的姿勢です。公明、民社両党は少なくとも現状は維持しようと、必死のかまえで、準備をすすめています。そういう間隙をぬってさまざまな市民派、あるいは生活クラブ生協等々、あるいはMPD、緑の党など反共諸党派もはげしい動き、立候補の動きをすすめていることはご存じのとおりです。
 以上に指摘したような新しい特徴が立体的にからみあっている。そして、同時にそれぞれの選挙区ではその地方、地域の独特の特徴をもつ政治、経済情勢がくわわってくる。こうして、それぞれの選挙戦での具体的な独自の情勢、力関係が生まれてきます。

反共攻撃を軽視すれば失敗、攻勢的にたたかえば前進

 全体として、いまの客観的情勢は、わが党にとってきびしいといわなければなりません。もし、ぼんやりしたり、反共反撃を軽視したりしますと思わぬ失敗をしてしまうという危険がつよくあります。しかし、同時に攻勢的にたたかえば前進できる、勝利の可能性をきりひらくことができるという情勢でもあります。そういう点で、党の主体的奮闘が決定的であって、最近のすべての中間選挙、参議院補選の教訓がしめしたことは、どの選挙でも激動的で複雑な情勢のカギをにぎるのは、党機関と党組織の、また候補者の、主体的な奮闘のいかんにあるということであります。猛烈な反共攻撃にひるまないで、勇敢に反撃する、自民党政治、それに追随する反共勢力の実態を具体的に追及し暴露する、日本共産党の歴史と理念、政策と実績、候補者のおしだし、これらを攻勢的にたたかいぬいてゆくかまえでたたかったところでは、議席も得票も増大させたという少なくない実例が生まれています。
 しかし、逆に、反共攻撃とその影響、これを過小評価して、たいしたことはないとし、候補者の実績もゆたかだというので、マンネリズムにおちいり、安住的な姿勢をぬけきることができなかったところでは、予想外の敗北をきっするという苦い経験がかさなっています。
 いくつかの実例を申しあげますと、党が議席を後退させた参議院選以後でも、日本共産党が政党としてはただ一つ推薦しているという首長選挙で、たとえば昨年八月の三つどもえの京都の市長選挙、木村万平候補が三四八%の得票で自公民の候補に三百二十一票までせまり、もうちょっとで当選という惜敗もありました。十二月の東大阪市長選挙では自民党候補と一騎打ちの生田候補が四七・四%獲得しています。
 地方議員選挙では、京都の綾部市議選、埼玉の草加市議選では、議席をそれぞれ一議席増加させています。ともに「赤旗」を前回比増でたたかっていますし、綾部市議選では、反共攻撃が集中した地域には、「赤旗」号外の全戸配布を二回やり、独自ビラも作製して配布するという積極的なかまえでたたかいました。草加市議選では、ゴミ、固定資産税問題などで署名活動をひろげ、要求選挙をつらぬいていくかまえでたたかっています。
 他方、失敗の例では、「赤旗」でもくわしい報道をおこないましたが、熊本の玉名市、これは選挙戦のなかであまり目だつ反共攻撃がないというので、軽視が生まれました。ところが党自身がおこなったアンケートでは、「共産党は名前かえろ」とか「玉名には共産党はいらない」とかいう声が三割あったといいます。それにもかかわらず、反共反撃のとりくみの軽視におちいり、その結果、現職にかわって立候補した新人を落として空白になりました。この経験からは、全党的な教訓をひきだしました。

反共攻撃の影響は党内にも及んでくる点をよくみて対処を

 党大会後の中間地方議員選挙結果をまとめてみますと、定例選挙では、議席の増加が、十三市町村で十三名、議席の減少が二十市町村二十四名、合計しますと、前回比十一議席の減です。大会までの全国的傾向とくらべるとあきらかに減が増えているわけです。得票をみても前回比で増加が三十八市町村にたいして減少が四十四市町村。ですから大会後全体としては、票を減らすという傾向となっています。これは、絶対に過小評価できません。この減票がしめすものは、日本共産党にたいする、また科学的社会主義にたいする攻撃などさまざまなものがあり、また個々の問題での反共攻撃もありますけれども、この問題の過小評価を絶対にしてはならなということです。
 この問題の重要性は、有権者のなかにあるだけでなくて、党内にもやはり影響がおよんでくることです。党内の一部に思想的動揺が生まれ、党組織の活力も低下するということの背景に、あれだけ長期につづいている大規模な反共攻撃、反共宣伝があることは明白です。党内の一部に生まれているそういう日和見主義的傾向の典型は、党議員、党員の無所属立候補問題です。
 大会後の中間選挙で、党議員や候補者であったものをふくめ八名が脱落して無所属立候補した実例が生まれました。脱落しないけれども活動に自信を失って、立候補を辞退するという議員もでています。

党から脱落して無所属立候補の痛切な教訓

 十一月十八日投票の三重県の尾鷲市の市議会議員選挙は、この問題の重要性を痛切にしめすものとなりました。ここは三議席から一議席に二議席減という後退をきっしました。三名中の一名は党から脱落して無所属立候補をおこない、九月に除籍しました。他の現職一名も健康問題を理由にして固辞しておりまして、候補者決定が難航し、結局、選挙直前に決意となりましたが、選挙準備も大きくたちおくれました。結果は、一名が最下位当選、六期連続当選の現職一名は落選しました。「大番狂わせ」と地元の新聞には書かれまし
離党して無所属立候補したものはトップ当選しました。党の得票は前回の半分以下に激減しました。選挙戦では、現職の離党、それから無所属立候補が地元のマスコミに大きくトップであつかわれて、反共攻撃の影響が深く浸透していたにもかかわらず、影響を軽視し、県も地区も「反応がいい」として楽観していました。この点については、中央にも責任がありました。
 この痛切な例は、反共攻撃・日和見主義問題の決定的な過小評価から生まれています。
 党の思想的、政治的建設の重視、党機関の党の議員にたいする日常ふだんの指導援助、その活動をよく把握してゆくこと等々がぬけますと、選挙直前になってこういう問題がおきるということは、これらの問題の重要性をあらためて全党に警告している実例であると思います。
 これらのすべての教訓から学んで、全党が総決起し、参議院選挙、総選挙でのあの後退をはねかえして、一つひとつの中間選挙と国政選挙、いっせい地方選挙、参議院選挙、そして総選挙で、党と革新統一勢力の大きな前進をかちとり、党の議席の躍進、革新自治体の擁護と拡大、空白自治体の克服の課題を実現しなければなりません。

二、選挙の政策的争点について

つぎは、選挙の政策的争点についてであります。

政治と理論を前面にだしてたたかう

 第十九回党大会決議は選挙戦で政治と理論を前面にだしてたたかうことを強調しました。「党の政治思想建設の強化を土台に、政治と理論を前面におしだして選挙をたたかうという方針を、全党に真剣に徹底させることが必要である」。「全党に真剣に徹底させる」というのは、容易な事業ではありません。長いあいだの慣習があり、我流もありますし、大会決定にもとづいて今日の激動的な、同時に複雑な情勢のなかで党が躍進をかちとるために、二回の国政選挙で議席を後退させた後というこの状況のなかで躍進をかちとるためには、政治と理論を前面におしだしてたたかうことに全党がはやく習熟する必要があります。とりわけ機関は、その先頭にたたなければなりません。
 選挙戦を、組織的課題の遂行、これはもちろん重要ですけれども、それだけにわい小化しないこと、政策論戦をはじめ、「選挙戦の政治的様相を全面的につかみ、日本共産党の政策的・理論的優位を広範な有権者のなかに明りょうにするための攻勢的な政治・宣伝計画をたて、これを確実に実践」することを大会決定は強調しています。
 そのためには、一つひとつの選挙戦で政策的争点、全国的なおよびその地方における独自の政策的争点を新鮮な形で具体的に提起すること、政治宣伝戦においても組織戦においても攻勢的なかまえで、本格的な作戦計画をたてることがひじょうに重要であります。なぜ政策的争点、対決点を明確にすることが大切かというと、住民のもっている要求、不満にぴったりあった政策的争点の適切な提起によって、住民の政治的エネルギーをひきだすことができる、そして広範な住民を、その体験をつうじ、党の政策をとおして日本共産党の支持にひきつけることができるからであります。

新しい特徴――二つの問題での全国的争点がするどく問われている

 現在の情勢の一つの新しい特徴は、これまでの経過と内外情勢から、国政選挙でも地方選挙でも、二つの問題での全国的争点がするどく国民の審判を問われるという状況が生まれていることであります。これは、いっせい地方選挙についても同じであります。
第一の全国的争点は、「国連平和協力法」案につながる新規立法、自衛隊の海外派兵問題、中東危機の問題です。
 三十三万対三十万で勝利した沖縄の知事選挙で、状況をいっきょに緊迫させたものは自衛隊の海外派兵問題でした。告示直前の十月二十六日、与儀公園に一万人以上あつまった演説会で、不破委員長が毎日新聞を引用して、全国の四十七都道府県の知事のなかでただひとり西銘知事が賛成なんだということを暴露したとき、あつまった一万の人びとが地鳴りのようにどよめいたという。「沖縄タイムス」、「琉球新報」を読んでいる人が多いので知らなかったという。政府・自民党は大あわてで、にわかに反対を表明した自民党県連にたいして、この選挙に海部首相も行かない、小沢幹事長も行かないということになりました。この問題が沖縄戦の悲惨な体験をもつ多くの県民をふるいたたせていったという状況があります。
 これは国民の生命にかかわる問題なので、地方選挙と関係がないというのではなくて、いっせい地方選挙においても中間地方選挙においても、この問題はひきつづき最大の争点となります。中東危機の展開がどうなろうとかならずこれは大きな争点になります。ですから、たとえばいっせい地方選挙でも、アメリカのいいなりになって自衛隊を海外に派兵しようとする憲法じゅうりんの策動の根を、この全国的選挙の国民的審判できっぱりと断つという選挙にしなければなりません。そのためには、日本共産党の躍進がどうしても必要であり、沖縄知事選挙があたえた国際的な影響をみても、日本国民の明確な選択は中東危機の平和的解決にたいしても、かならず重要な貢献となるにちがいありません。
 第二の全国的争点は、一昨年来ひきつづいて国民的争点となりつづけている消費税、コメ輸入自由化、小選挙区制・政党法を中心とした政治改革の問題であります。くわしくは委員長報告、それからいっせい地方選挙政策の案にゆずりたいと思います。ただそれぞれ一言いいますと、消費税はいうまでもなく地方財政にも大きな負担がかかり、全国で革新自治体だけでなく、消費税の転嫁を拒否している自治体は、かなりの多数にのぼっています。たとえば、公営住宅家賃に消費税を転嫁している自治体は、公営住宅をもっている全国の二千八百六十七自治体の四九・九%、千四百三十二自治体にすぎず、半数の自治体が転嫁していません。コメ輸入の自由化問題では、公明党ははやくも部分自由化容認の態度をしめしてつよい抗議をうけています。ウルグアイ・ラウンド、これはかなり難航していると報道されていますが、日米の二国間協議もおこなわれる予定です。そうしますと、いっせい地方選挙の時期にはそれにたいする各党の態度もあきらかになるし、争点はいっそうするどくなります。輸入自由化問題を中心に、コメをまもる、日本農業・国土をまもも国民的運動の先頭に日本共産党、革新統一勢力がたたなければなりません。
 小選挙区制・政党法の問題では、自民党はこの問題でも、一部野党の協力をたのみにしておりまして、いせい地方選挙後の通常国会に法案提出のかまえであります。小選挙区制・政党法を中心とする自民党の政治改革なるものが自民党の一党独裁の永久化と海外派兵をもふくむ憲法改悪の条件づくりにあることは明白であって、このねらいと本質をひろく訴えてわれわれはたたかわなければなりません。
 そしてすべての中間選挙、新潟参議院補選などの国政選挙、いっせい地方選挙、参議院選挙、かちとるべき衆議院選挙のそれぞれを、政府・自民党とそれにたいする追随勢力にたいして国民の「海外派兵ノー」「消費税ノー」「コメ自由化ノー」「小選挙区制ノー」「自民党ノー」の審判をつきつける重要な機会にぜひしなければなりません。

地方政治の特徴と争点をよくつかみ新鮮に具体的に政策化する

 この四年間の地方政治の特徴と争点についてのべたいと思います。この問題でも、とにかく自民党の地方政治は悪いんだという一般的抽象的な宣伝や、また、たとえば国民健康保険税などのいくつかの個別的具体的争点にだけ、いつもと同じようにしぼるというのではなくて、この四年間に地方政治の分野でどんな新た攻撃と政策が強行されてきたのか、その結果どんな新たな矛盾が拡大し、どの階層がどう苦しみどういう要求をかかげているかという点を、全国的にも、またその選挙区での観点からもよく調べてつかみ、新鮮に具体的に生きいきと政策化し、宣伝し提起しなければなりません。
 その点で、私は、いまの日本の地方政治ですすんでいる事態が、「カローシ」という言葉が国際語になったのと同じような、ある異常さをもっていること、経済大国日本のなかできわめて異常な現象が進行し、国民にたいして過酷でしかも異常な反動支配、大資本支配がすすんでいる点を具体的につかむことが重要であると痛感しています。

新しい変化――「地方行革」で自治体が住民収奪と大企業中心の開発のためのシステムに

 さまざまな新しい変化がありますが、まず第一にあげるべき異常なそういう状況は、八五年から開始された臨調「地方行政改革」によって、教育、福祉が削減されうちきられ、地方自治体が自民党政府の下請け機関としての側面をいっそうつよめて、おそるべき住民収奪と大企業中心の開発のためのシステムに変ぼうしつつあるという事態です。お年より、障害者をはじめとする福祉の問題あるいは教育問題なども、そういう全体状況のなかで位置づけることがわれわれの政策宣伝の説得力をゆたかにすることになります。「地方行革」の名による国庫負担金、補助金の大幅削減は、八五年いらいの六年間で全国で六兆九千億円に達しています。ほこ先は主として福祉や教育にむけられました。保育所、老人施設、障害者施設にたいする措置費の補助率は、八割から五割に削減され、すでに恒久化されています。補助金カット額は各自治体ともよく調査し、その数字をつかむ必要があります。革新自治体以外の多くの自治体では、こういう攻撃を住民へのつけまわしでのりこえようとしています。公共料金の値上げがシステム化されています。
 国民健康保険の国庫補助の削減も、保険税のひきあげ、滞納者の激増、保険証のとりあげ、ついには自殺者までだすという事態を生みだしています。
 補助金カットだけでなく、八五年一月、自治省はモデル指針をしめして全国の自治体に「地方行革大綱」作成を強制しました。自治省のモデルは、福祉事業の縮小と廃止、職員定数の削減と待遇切り下げ、公共施設運営や清掃、学校給食の民間委託、自治体の単独施策の制限、新しい公共施設はなるべくつくるなとおしつけるもので、かつてない住民サービスの低下と住民負担の強化をもたらすものでした。
 重大なことは最近、地方財政が金あまり現象さえ生みだしているという事態であります。
 「行財政の簡素・効率化」を錦の御旗としておこなわれたこの「地方行革」なるものは、自治体行政の体制と能率を低下させました。ところが、この期間に好景気で税収は大幅に増加し、しかも公共料金をどんどん引き上げたので金があまってくる、それを住民のためにつかう体制はないということでつかい残しの積立金が激増しています。大企業中心の開発援助費、これにばく大な金を自治体がつぎこみつつあります。
 『世界』十月号で、佐々木信夫教授が「東京都の争点」という論文で東京都政を分析していますが、鈴木都政は十六の基金で一兆二千億円ためこんでいるという数字があげられています。こんな金をつかってあの豪華な新都庁舎を建設しているわけです。東京だけではありません。多くの自治体で、財政がピンチだから地方「行革」が必要と宣伝して福祉・教育をうちきりながら、豪華な庁舎を建設するところがふえているのもこのこととかかわりがあります。四十七都道府県でみますと、ためこんだ積立金の合計は九〇年度末でなんと五九千億円とみこまれ、八八年度にくらべて二兆五千億円、七七%もふえています。全地方自治体ではなんと九兆八千億円に達しています。
 「教育臨調」の進行もいうまでもありません。新学習指導要領による「日の丸」「君が代」の強制、「いじめ」と校内暴力にくわえて、登校拒否の激増と、教育における荒廃もすすんでいます。最近の調査では、小中学校生徒の半数以上が「学校をきらい」という異常な数字まで報道されています。
 こうして「臨調路線、『地方行革』のおしつけに抵抗し、住民の暮らしと福祉・教育を優先する自治体に」というのがこの問題でのわれわれのスローガンになります。この臨調「行革」路線に首尾一貫して反対したのが日本共産党であることは、もう証明する必要はないと思います。

重要な変化――住環境の悪化で町づくり 村おこしが共通の民主的課題として

 第二の地方政治における重要な変化は、住まいの環境が深刻な悪化をむかえてきたという問題であって、中曽根内閣いらいの「民活」導入政策、東京一極集中、大企業擁護の都市開発、八六年に東京中心にひきおごされた地価暴騰、その全国的拡大、環境無視のリゾート政策等々によって、都市と農村を問わず環境を悪化させ、町づくりと村おこしが共通の民主的な課題としてつよく提起されています。
 このなかで土地・住宅問題は、全国的にもカナメの位置をしめています。政府・自民党は税制調査会と自民党「税調」で土地税制のあり方を検討しています。選挙政策案にものべられておりますけれども、重要な問題の一つは、ドル安・円高をひきおこした八五年九月のプラザ合意が八六年におきた東京における異常な地価暴騰の大きな背景の一つだったということであります。
 大企業の土地買いしめのぱく大な円資金がどこから生まれたか。急激なドル安・円高のなかでアメリカの要請に応じた八六年から八七年にかけて日銀のドル買い介入、それによる円資金の大量散布、五回にわたる公定歩合引き下げによる超低金利政策などによって、市場に供給されたものであることが、すでに明白になっています。
 雑誌『経済』八九年十二月号の山田論文がこの問題を詳しく分析しています。地価暴騰が世界でなぜ東京だけにおきたのか、この異常な現象には異常な原因があるのです。日米構造協議問題と同じように地価暴騰も、日米軍事同盟にもとづく対米従属と、中曽根内閣の「民活」導入、規制緩和等々、大企業の国民無視の行動等々という異常な原因が、国民を苦しめているものにほかなりません。
 さらに地価暴騰問題につづいて、全国に熱病のようにひろがったリゾート開発、これがおそるべき環境破壊をひきおこしています。リゾート法は日本共産党だけの反対で成立した法案です。
 また、環境問題、ゴミ問題、公害問題がとりわけ重大化し、地球の環境問題もすべての選挙で大事な争点になってまいりました。
 地球環境問題は、猶予を許さない国際的課題となっていますが、これは、どの問題をとっても発生源、元凶としての大企業の「後は野となれ山となれ」という利潤目あての生産があり、それが地球の限界にぶつかったという深く根源的な問題をはらんでいます。
 日本の独占大企業は、余儀なくされる場合をのぞいてこの人類の未来にかかわる課題にほとんどこたえようとしていません。ですから、六〇年代から七〇年代にかけての公害問題と同じように住民運動と自治体の役割がかつてなく重要となっています。
 国際的にも、「シンク・グローバリー、アクト・ローカリー」、地球規模で考え、地域で行動を、草の根で行動をというのが共通スローガンとなっていますが、われわれもそのたたかいの先頭にたつ必要があります。
 こうして「大企業のもうけのための「民活」路線をやめ、住民主体の街づくり、村おこし、かけがえのない地域と地球の環境にとりくむ自治体に」ということが、いっせい地方選挙政策で二番目の問題にたいするわが党のスローガンになっています。

平和と民主主義の問題でも

 第三の問題は平和と民主主義の問題です。
 国際情勢の急激な変化のなかで、アメリカがアジア支配のカナメとして位置づけている日米軍事同盟は、ソ連を対象としたものから第三世界を対象としたものにむけられ、やはり異常な形で強化されています。これも詳しくのべますときりがありません。私も長野の伊那谷を木島さんといっしょに調査しましたけれど、通告なしで空母ミッドウェーの艦載機が谷を百材、二百鰭の低空で音速の速度で飛ぶ訓練がおこなわれていました。こういうことを通告なしでやっているのは、アメリカ本国でもヨーロッパでもないという、おどろくべきことがおこなわれています。沖縄でも、恩納村では養鶏場、人家のすぐちかくに、都市型戦闘訓練施設が建設されて、実弾を発射しています。アメリカ本国では絶対にやらないことを彼らは傍若無人に日本本土と沖縄でやっている。三宅や逗子の問題もいうまでもありません。この日米軍事同盟、基地問題は、日本共産党の独壇場だと思います。
 民主主義の問題では、金権腐敗も反動化もさらにすすみました。リクルート事件等々をひきおこした中央の自民党政治に負けずに地方でも苅田町、西山町、川西市、大阪市等々、マスコミも大きく報道する金権腐敗が進行していますし、千葉県成東町では町長がゴルフ場建設で一億円のわいろをうけとった疑惑で逮捕されるという問題も最近おきました。清潔な政治という問題が日本共産党の出番であることはいうまでもありません。
 政治の反動化では、地方政治で重視すべき新しい問題として、中曽根型にならった臨調型の審議会、懇談会の多用、それによる議会の空洞化の問題があります。
 先ほどあげた、『世界』の佐々木論文では、鈴木都政が三期の間に七十三の懇談会を設置したことが追及され、議会の意味がなくなってくる、都民の世論もきかない都政だとするするどい批判が展開されています。福岡市でも市長の私的諮問機関が約八十つくられ、北九州市ではなんと百五十つくられているという報告がきています。
 こういう状況がすすみながら他方で、議会制民主主義を縮小するものとして議員の定数削減がすすんでいます。一年間に七百六十八人が減らされ、八三年当時にくらべますと、五千七百九十人、約六千人近くの地方議員定数が減らされています。
 こうして真の地方自治をよみがえらせるという課題がこの腐敗と反動化に抗して提起されています。市民、なかでも女性の新しい自覚とたちあがりがすすんでいます。いっせい地方選挙政策案では、「参加と公開、住民と自治体労働者との連帯を軸に、女性の声が生かされ、民主主義と平和が息吹く自治体」にというスローガンが提案されています。
 各層・各分野の切実な要求がひじょうにふえています。いっせい地方選挙政策案では、十二の重点公約が提起されていまして、たとえば「三つの増税ストップ―消費税・固定資産税・国保税」、「大店法改悪を絶対許さず、中小商店をまもる」というように、各層・各分野の具体的政策が提起されています。
 これらの個別分野の政策についても、中央委員のみなさん方が意見をどんどんだしていただくことが期待されています。

三、自社公民地方政治と革新統一、革新自治体の役割

 つぎに、この四年間のあいだに地方政治で、自社公民の連合政治の拡大が生まれている問題にかかわって、自社公民地方政治と革新統一、革新自治体の役割についてのべたいと思います。

自民中心の連合政治の実態を広範な住民に知らせよう

 この四年間、社公民の右傾化は地方政治でもいちじるしいものがあり、すでにのべた深刻な反動化がすすんだにもかかわらず、地方政治においては、すでに自民党中心の連合政治の時代がきているといってもいい状況になっています。この四年間に社会党が、県政で新たに自民党と連合したところが五県、秋田・静岡・岐阜・岡山・大分となりました。不破委員長ものべたように自社公民府県政は、十七から十九へふえています。こうした状態にたいする住民の怒りと批判が、消費税、リクルートにたいする批判と結合して、八九年前半には日本共産党の推薦・公認候補への支持増大傾向を生んだことは記憶に新しいものがあります。社会党はあわてて名古屋の市長選挙後、一定の反省をしめしてみせました。しかし、その後の京都の知事選、香川の知事選、兵庫の知事選では自社公民を平然と組みました。参議院補選で瀬古さんの大善戦があった愛知では来年二月に知事選がありますが、すでに現職の知事の支持を社会党は決定しています。
 こうした現状を国民はまだまだよく知りません。広範な有権者にこの問題を知らせていくことが重要であります。

革新自治体が新しい役割と魅力をもって登場している

 こういう自民党地方政治の反動化、自社公民連合翼賛政治の拡大というなかで、革新自治体が新しい役割と、新しい魅力をもって登場しているという情勢もよくみる必要があります。
 革新統一の問題についていいますと、八七年のいっせい地方選挙後、この四年間で、党が新たに与党となった自治体は、大阪の枚方市、島根の松江市をはじめ二十六自治体です。沖縄県も今回くわわりました。このうち革新統一で勝利したのは、一県四市で、県では沖縄県、市では東久留米市、沖縄市、島根の江津市、山形の長井市の四市です。ササニシキか外米かが最大の争点になった宮城の古川市長選では、政党では日本共産党だけの支持で勝利したことも特筆すべき成果であります。原発問題を争点とした高知の窪川町長選、和歌山の日置川町長選、日高町長選では日本共産党がおした候補が勝利しました。これらは成果ですが、他方、敗北もあります。
 この四年間に日本共産党が与党でなくなった自治体は、大阪の羽曳野市など五十二自治体です。ですから新たに与党になったのは二十六あって、与党でなくなったのは二倍の五十二あるわけです。
 この敗北のなかでは、当時、大阪の党も全党的にも教訓をひきだしましたが、党員市長の羽曳野市の敗北がひじょうに痛い敗北であって、痛切な教訓となりました。これは当時、あきらかにしましたように、消費税など全国的な争点に集中して、敵が市政問題で党員市長にたいして猛烈な攻撃をかけてきたのに、実績はきわめてゆたかなのに反撃が不十分だったこと、この攻撃にたいする過小評価が敗北のもっとも主要な原因であったという教訓でした。
 しかし、大会決定で強調されているように革新自治体が住民の暮らしと権利をまもる「防波堤」として、生活・営業・権利をまもり、子どもたちの教育・環境をまもるとりでとして新しい魅力とかけがえのない役割をになって登場してきています。ああいうひどい「地方行革」、あるいは環境悪化から住民をまもりうるのは、自民党政治や自社公民の翼賛政治ではない、革新自治体なのだということが多くの事実と体験によって立証され、そのなかで新しい革新自治体がかちとられてきています。
 東京都知事選にからんで、自民党の粕谷自民党都連会長が、海部首相が属する派閥の河本会長を訪ねたところ、河本氏が「鈴木都政は赤字財政を立て直し、黒字にしたことを誇っているが、黒字というのは税金を取り過ぎているということだ」と批判したことが新聞で報道されています。自民党幹部でさえ、革新自治体赤字論の破たんを認めているのです。しかしまだまだ、「美濃部都政をみてみろ、赤字になったではないか」という、この宣伝はつかわれています。住民もまたこれをうけいれる要素もありますので、革新自治体の新しい役割と魅力を、多くの住民に知らせていくことが重要になっています。
 革新統一の威力は、こんどの沖縄の知事選挙であざやかな形でしめされました。それは、団結をみだすさまざまな策動とも原則的にたたかった結果であります。これは重要な教訓です。
 党は沖縄の選挙で政策宣伝戦でも組織戦でも大きな役割を果たしました。
 しかしあの勝利も偶然にかちとられたものではありません。沖縄では革新自治体のもとでの人口がすでに過半数、五三%になっていました。こんど県政も獲得したから全人口になりました。とくに県都の那覇市、それから四月に二番目の人口をもつ沖縄市で勝利したこと、それから二月の総選挙では古堅さんがトップ当選をかちとり、西銘知事の息子を落選させたという党と革新統一勢力の前進が、県知事選での勝利をかちと推進力だったということができます。
 そういう一つひとつの勝利をつみかさねていくことによって、大きな勝利も生まれるということをわれわこれは学ばなければなりません。
革新統一の問題では、この間もさまざまな経験をかさねました。首長選挙の共闘問題、統一問題は今日の複雑な状況を反映してさまざまなパターンがありますが、これについてはそれぞれの県機関、地区機関が習熟してほしいし、中央とも協議しながら正確な政治的対応をすることが重要です。

統一の努力と推進力としての党の地盤の前進――この二つを統一して

 国政選挙でもいくつかの新たな経験をつみかさねてきました。とくに参議院の補選では、参院選で与野党逆転しましたから、一議席一議席がひじょうに大事になっているという新しい情勢があります。昨年十月の茨城補選は、社会党に共闘を申しいれる、むこうは拒否する、そして立候補してたたかうという新しい経験でした。ことし六月の福岡の補選、これは革新県政をまもるために県知事選の共闘を党としてはひじょうに重視して、非公開でしたが社会党と協議し、社会党が共闘を約束したという経過をふまえて、参議院の一議席のもつ重要性からいって党は国政選挙ではじめて立候補しないという態度をとりました。
つぎの愛知補選は、すでにみなさんご承知の、また議長の冒頭発言、委員長の報告で強調されたようなたたかい方をしました。こんどは「共産党はおとなじゃない」というので、当初マスコミの評判は悪いし、それに影響されて投書や質問がよせられる状況も一時ありましたが、しかし攻勢的な政治宣伝、そして二十一万票を瀬古候補が獲得した選挙の結果が、自衛隊の海外派兵にたいして過半数の五五%が反対したことをマスコミのうえでも評価の最大の基準とさせてゆきました。愛知補選は奮闘することが道をきりひらくということをかさねてしめした重要な教訓です。いまたたかっている新潟の参議院補選は、これは愛知とちがって新潟の市長選挙これも勝ちましたが――などで社会党との共同がありますけれども、立候補して党の前進の基盤強化のためにたたかいぬく方針です。とにかく参議院で一議席が大事な場合には、「共産党はおと「なになれ」というと、いつでもどこでも立候補せずに、右傾化した社会党の当選に協力せよということになります。そういうとんでもない意見に負けるわけにはいきません。宮本議長が冒頭発言でこの愛知補選に関連し、統一戦線が成立していない状況での統一の努力、統一の推進力としての党の地盤の前進、この二つを統一してたたかうことが重要だと強調されましたが、まさにそのとおりだと思います。議長が強調した二つの問題を統一して勇気をもってたたかいぬき、こういう中間的な国政選挙でも、党の勝利の土台を拡大していくことが重要であります。

一つの注目すべき点住民の圧力で前進的な施策が生まれている

 そのつぎに、今日の地方政治のなかで一つ注目すべき問題として、若干の自治体で住民の圧力におされ、その要求をとりいれて、国の政策よりもさきに前進的政策を行政措置としてとりあげ、条例もつくるという先進的な例がいくつか生まれている問題があります。福祉・教育問題、土地・住宅問題、環境問題、公害問題、ゴミ問題などなどです。これも全国的にいろいろな例がでていますけれども、たとえば福祉の問題では老人性白内障の人工水晶体――この健康保険適用問題を金子書記局長(当時)が予算委員会でもとりあげましたや特殊めがねの助成を足利市や東京の中央区でおこなっています。乳幼児医療費の助成が各地にひろがっていることとか、土地住宅問題でいいますと住宅条例、これは一番たいへんなんで東京の例が多いのですが、世田谷区、中央区、高齢者用の住宅条例が三鷹市でつくられました。
 家賃補助も続ぞく生まれています。高齢者のために荒川区、江戸川区では老人の住み替えにたいして差額の全額を区が補助するという予算がすでに組まれて実行されています。新宿区では、幼児をもつ二十歳代、三十歳代の世帯にたいする家賃補助、台東区は新婚世帯の家賃補助で、これには申し込み者が殺到しました。国が責任をもっている住都公団が建て替えで、三倍もの高家賃をおしつけてお年よりを泣かせ、自殺者まででているという恐るべき悪政を強行しているのに、自治体が、革新自治体だけでなくてこういう問題で国よりすすんだ政策をとりはじめている、これはひじょうに大事な現象です。
 ゴミや公害の問題、リゾート問題、ゴルフ場問題などでもそうで、平和と民主主義の問題でも川崎市ではオンブズマン制度を日本ではじめて実行しましたし、中野区では平和行政条例を施行しました。
 六〇年代末に四日市市、川崎市などで公害が激化したあのとき、住民運動、公害裁判、それから革新都政など革新自治体が先頭にたちました。とくに東京では公害規制条例を制定する。国と大げんかになりましたけれども結局、国民世論と革新勢力が主導権をとり、七〇年には公害国会がひらかれていくつの法律が成立しました。それとある意味では共通の状況が、たんに公害問題だけでなくて、土地・住宅問題、あるいはゴミ問題、福祉の問題などなど、いろいろな分野ですすみつつあります。
 平和の問題でもそうで、非核平和都市宣言をもつ自治体はすでに人口八千万人をカバーする千五百二十六に達しています。

憲法、地方自治の原点をよみがえらせるために

 憲法の平和原則、国連憲章の初心にかえることが必要になっている時代だということが、議長の冒頭発言でも強調されましたが、憲法、地方自治の原点にかえってほんとうに住民自治をよみがえらせることが提起されています。そのためには自民党と対決して一貫して住民とともにたたかってきた日本共産党とともに、主権者としての住民が参加する地方自治をかちとること、住民本位の革新自治体をまもり、拡大することが切実な課題となっています。なぜなら、日本の場合には民主的な地方自治のにない手は革新勢力であり、日本共産党だからです。日本の自民党は真の自治を敵視する反動的な政党であり、日本共産党をのぞく他の野党は、その自民党との連合にむかっているからです。鈴木都知事は知事公選に反対という主張をもっている人物です。日本においては民主主義と住民自治のにない手が革新勢力しかないということは、戦後の地方自治、地方政治の歴史とたたかいのなかで事実によって立証されてきました。そういう点では、本ものの地方自治、住民自治をねがっている人は、革新勢力を支持しなければならないし、なかでも日本共産党を支持する以外にないことを、事実によって多くの有権者に理解してもらう条件は無数に生まれています。

四、「四つの原点」にもとづく活動の強化

 つぎは四つの原点にもとづく活動強化の問題についてのべたいと思います。
 この四年間の国政選挙、中間選挙の結果からひきだされる共通の教訓がいくつかあります。

日本共産党の押し出しと反共反撃を徹底したかどうかが明暗をわける

 現在ではまず第一に、日本共産党の押し出しと反共反撃を徹底的にやりぬいたかどうかが明暗をわけます。中間選挙の例をさきほども若干あげましたが、九月の沖縄のいっせい地方選挙では反共攻撃の新しい戦術として置きビラというものが生まれました。小さな紙に発行者もなにも書かないで反共文章をならべてある。「共産党はもうごめん!ソ連・中国・ルーマニアで証明されたように国民不在、一党独裁、財政破綻、このような共産党はいりません」。こういう小さなビラを団地の階段だとかあちこちに置いていくのです。そういうやり方さえとられました。こういう攻撃と徹底的にたたかっていくことなしに前進はありません。なお、党にたいする攻撃と結びつきながら首長選挙でも、党推薦の候補、革新統一の候補にたいしてもおどろくほど悪質なデマ攻撃がくわえられる例が最近目だっていることについてもこの際ふれておきたいと思います。
 去年の静岡の富士市の市長選挙では、悪質なデマ・中傷がおこなわれ、とうとう最後には市長は死んだというビラまででたといいます。しかし過小評価して反撃しなかった。これは負けて革新市政が倒されました。勢いにのった自民党は、ことしの六月にあった同じ静岡県の革新市政、伊東市の市長選挙でも同じようなデマ攻撃の手にでてきました。これには徹底して反撃してビラにもいれて反撃しました。この選挙は、五十八票のきん差という辛勝でした。ちょっとでも気をゆるめていたら負けていたでしょう。

反共攻撃にもデマ・中傷にも残らず反撃してこそ

 「赤旗」の報道で知られているように、沖縄の知事選挙で大田候補にたいする攻撃は言語に絶するすごいものでした。二十数種類のデマ攻撃がでたのですから。最後にまかれようとしたジャンボ・ビラ「沖縄ジャーナル」は、ドギツイ見出しのカラー刷りでした。すべてマッカなウソ八百をならべたてた違法ビラを大量に配布する、落城をまえにして、手段を選ばないひどさでした。
 この「沖縄ジャーナル」は那覇地裁が公職選挙法違反として配布禁止決定をくだしました。これまでこういう違法ビラの配布禁止決定がかちとられたのは、立川市での勝共連合のビラなどもそうです。自民党陣営が配布した違法ビラについて地裁の仮処分をかちとったのは沖縄では二回目だといいます。これは西銘陣営のなりふりかまわない攻撃をいっきょに弱みに転化させました。大量におりてきたこの違法ビラの処分に困ってドラム缶で焼いた企業もでたとのことです。
 沖縄で「大田候補は共産主義者」というビラも終盤ででたように、中傷・デマ宣伝を、反共攻撃と結びつけてふりまいてきます。「社会主義共産主義崩壊」論だけでなく、さきほどの尾鷲市の例のように、その連地域の日本共産党についての問題もつかわれます。その一つひとつを重視して、かならず反撃することが必要です。いくつか反撃したけれど「この問題はたいしたことはない」として反撃をしないでいると、「黙っているのはなにかあるんだろうな」と思われますから、とにかくすべて例外なく反撃しなければなりません。もちろん記事の大小、あつかい方は別として、共攻撃もデマ・中傷も全部一つ残らず反撃することが原則であります。

中東問題での宣伝の意義、要求にもとづく活動の重要性

 第二に、最近の選挙では国政選挙、中間選挙を問わず、中東危機問題、自衛隊海外派兵問題、その政治宣伝を積極的にやればやるほど党への支持がひろがっていることが共通の傾向であります。
 第三は、「四つの原点」が強調しているように、要求にもとづく活動の重要性です。さきほど草加市の例をあげましたが、佐賀の神埼町では得票率一七倍で初の複数議席獲得、兵庫の川西市は一議席増です。得票も得票率もともにふえました。新潟の見附市、ここは総選挙の三倍の得票で一議席ふやしたという成果をかちとっています。

基礎的陣地の拡大が勝利の土台

 第四は、基礎的陣地の拡大が勝利の土台だということです。機関紙読者は前回比で三割増をめざしてがんばっておりますが、京都の綾部市、日刊紙は一〇〇%に達しませんでしたが、日曜版は一〇六%、佐賀の神埼町は日刊紙一五〇%、日曜版一一三%、埼玉の草加市は、後退していた機関紙読者を「月間」でがんばって五月以降千人以上ふやして増勢に転じました。日刊紙一一〇%、日曜版一〇四%で、この力で議席をふやしました。
他方、愛媛の生名村、五〇%に機関紙読者がおちこんでいたのを、他からの援助もえて八〇%にまで回復したけれども、せり負けたという例があります。高知の須崎市、これは選挙準備もおくれたのですけれども日刊紙九二九%、日曜版八三・三%、得票率・得票ともに大幅に後退しています。
 歴然たるものがあります。中間地方選挙のこれらの明白な教訓から真剣に学んで、選挙戦をかつための体制をつくり、準備をすすめなければなりません。
 くわしいことは、改訂版の「選挙学校用教科書」が発行されますので参考にしていただきたいと思います。ここではいくつか重要な点、強調したい点についてのべますが、その第一はかまえです。かならず勝利するという本気のかまえを指導部がとるかどうか、これが明暗をわける岐路となります。かならず勝利するかまえのなかでまず大事なのは、選挙勝利のための作戦計画をしっかりたてることです。経験主義や我流を排して、これまでの全党の無数の経験からみちびきだされた法則にちゃんとのっとって作戦計画をたてなければなりません。「四つの原点」にもとづく活動を土台に、「四つの基準」にもとづいて情勢と力関係を正確判断して作戦計画をたてる。政策的争点の明確化や政策づくり、候補者宣伝をふくむ政治宣伝の戦略と計画、選挙作戦のいくつかの基本、支部の問題、後援会の強化、それから選挙体制、選挙財政まで、こういう作戦計画を本格的にねりあげ、よく論議して仕上げ、全党と全後援会に徹底する、そしてそれを実践する指導を貫徹する本気でやるというかまえにしっかりたっていただきたい。
 そのさい、正確な政策的争点の提起が大切ですが、全国的な争点についてはすでにのべましたが、その地域の自治体での争点はなにかという点については、党機関が日ごろの都道府県政、市町村政について、よく知っていなければ明確にできません。ところが、いつも議員団まかせで、選挙が近づいて、「さぁ「黒書」づくりだ」とあわててとりくむのではまにあいません。「黒書」をつくって批判をならべてにわかに宣伝しでも、それまで日常的になにもいっていなかったのですから「いきなり悪口をいいはじめた」とうけとられかねません。これでは、かえって逆効果になる場合もありえます。ですから党機関が議員団まかせにしないで、議員団をよく把握し、指導援助しながら日ごろから都道府県政、市町村政について、その地域での日本共産党を代表する党の機関としてよくつかみ、分析していることが大事です。そういうことによってはじめて、正確な争点をえらぶことができるのです。選挙戦での政策的争点というのは、あまり数多くならべても、みんなの頭にはいりませんから、そう多くはないんです。重点にしぼってそれについてほんとうに住民の心を、有権者の気もちをつかむと、「なるほど、その争点は私たちの望んでいることで、日本共産党がそこれをやってくれるのか、革新市長はやってくれるのか」ということを知れば、投票しようとなるのですから、そういう努力をつよめていただきたい。

党支部の建設・強化は選挙勝利の一番の土台

 第二に大事なのは、党支部の建設・強化です。支部会議が定期にひらかれていない、一年間支部会議がひらかれていないとか、支部の乱れ、くずれをそのままにしていては、選挙になりません。地区委員が選挙になって現地にいってみると、支部会議のあつまりも少ない、党費のあつまりもよくない、そこで支部長といっしょになって党費あつめをする、教育もする、チューターもやる、十二条該当の党員をたずねる、支部建設がすすんで選挙をたたかう態勢が短期間にできたという経験も少なくありません。
 作戦計画は、党が土台ですから、党の支部・グループの建設と強化をしっかりすえなければなりません。ですから、選挙というと選挙戦でうつ手だけでなく、機関指導、党支部と党グループにたいする機関としての政治教育、思想教育、支部建設、それから「赤旗」の配達、集金の問題にいたるまで、そういう党の建設と強化の課題が選挙の勝利のためにも一番の土台だということを、あたりまえのことですけれども、強調しておきたいと思います。
 機関紙拡大をはじめ、基礎的支持勢力の拡大についてはさきほども強調しました。はげしい反共の嵐に抗しての選挙ですし、また地方政治の問題、国政の問題、中東危機の問題等々、「赤旗」の役割がかつてなく大きくなり、紙面改善もひじょうな好評をはくし、魅力も増大しているときです。この「赤旗」読者を拡大し、大きな陣地をきずきあげることが勝利の欠くことのできない土台であることはなんど強調しても強調しすぎることはございません。有権者対比、労働者対比での拡大目標を追求して前回比かならず三割増をかちとらなければなりません。パンフレット、学生新聞、「グラフこんにちは』、『女性のひろば」等々を活用し立体作戦のこと、それからこんどの「月間」でみんながとりくんだ「読者ニュース」のこと等々はくりかえしません。

後援会の確立、強化で大衆的選挙を

 つぎは、後援会活動です。「前衛』の十二月号に、桑原常任幹部会委員の後援会問題についての全国連絡会での話に手をいれた論文がのっておりますので、参考にしていただきたい。後援会重視の方針が明確となり、この間、各地で後援会の総会、学習・研修会がひらかれて、いろいろな成果を生んでおりますし、単位後援会の確立の努力もすすんでいます。それから後援会自身が住民運動、大衆活動にとりくみはじめています。後援会員の拡大、あるいはビラの配布や「赤旗」読者の拡大に協力しようという組織活動の課題にとどまらず、後援会自身が住民運動の問題あるいは請願の署名とか、条例制定の署名をやるとか、あるいは新宿では地上げ問題で後援会が懇談会をひらいたところ急速にひろがって、町会長までのりだして、小学校で地上げ問題の集会がひらかれるというような成果をあげているところもあります。
 しかし、全体としてとりくみにアンバランスがあって、情勢がもとめる規模と内容に後援会活動がおいついていません。ひじょうにすすんだところがある一方、まだ後援会は名ばかりだという地方、県もなくはないのです。後援会を確立、強化することによって、大衆的な選挙にすることができるわけで、支持拡大、票の飛躍的拡大は、党の強化確立、支部の強化確立だけでなく、「赤旗」読者の拡大だけでなく、「赤旗」読者にも後援会にはいってもらい、いっしょに選挙運動をやってもらうという後援会の確立と拡大が必要です。江東区の経験では、「赤旗」読者を全部まわってみたら、七割から八割が、すすんでこころよく後援会に参加してくれました。まず、「赤旗」読者との結びつきを「読者ニュース」などでつよめながら、読者にまず後援会に参加してもらう、こうして大衆的な後援会を確立しなければなりません。すべての党支部が対応す単位後援会を確立して、後援会と一体となった選挙準備活動をすすめることが重要です。党員自身も当然後援会に積極的に参加しなければなりません。
 こういう単位後援会の確立、活動継続にとって一番大事な問題は、役員会を定例化できるかどうかです。役員会が定例化されていれば、後援会の活動は継続します。では役員会の定例化をどうすればかちとれるかというと、事務局長がいるかどうかが大事です。しっかりした党員が事務局長になって、後援会の会長さん、役員さんといつも連絡しあいながら役員会を準備し、セットし、すすめていく。そのことによって単位後援会の活動が活発化し、選挙になると総会もひらけるようになります。選挙区単位、あるいは県単位では全部役員会はありますが、そこでいい方針をきめても、単位後援会が役員会をひらいて、さらに総会までひいて討論するところまでなっていかなければ大衆的な選挙運動となり、ほんとうに力を発揮することはできません。後援会の運営もいろいろ創意を発揮して、工夫していただきたいと思います。
 なお、タテ線後援会は、意外に手がぬけることが多いのです。選挙の途中になって、どうも経営支部が動かない、大衆団体も動いてないというので、タテ線の後援会ににわかに力をいれるというのでは間にあいません。地域の後援会だけでなく、ほんとうにタテ線後援会の活動を継続的に強化していくということが必要で、これには党グループの奮闘がカギになります。

支持拡大の問題、得票目標について

 支持拡大の問題、得票目標の問題では、基礎的支持者名簿を一気に作成・整備してほしい。これがつくられておりませんと、仕事はすすみません。集中した作業で、この名簿をまだつくっていないところでは、一気に作成し、日常的な支持拡大の計画をたて実践していくことを要請したい。支持拡大のカードをおおいに活用していくことは当然であります。
なお、以前、中央委員会でも議論になったことがありましたけれども、得票目標について一言いっておきたいのは、多くの機関はよく知っている問題だと思いますが、有権者比での得票目標を堅持すると同時に、選挙区によっては指導部としてはその選挙で議席をとるために必要な基準をもたなければならない場合があります。指導部としてはその基準を明確につかんで全体を指導していくことが大事だということをつけ加えておきたいと思います。
 作戦計画をたてて、その計画にもとづく選挙闘争を機関として選挙指導部として責任をもってやりとげていくこと、そして党建設、機関紙読者拡大、後援会確立を土台として、ほんとうに党員のエネルギー、支持者のエネルギー、住民の新しいエネルギーをくみつくして、情勢をかえていく、力関係もかえていくこと、そうすればかならず勝利への道をきりひらくことができると思います。全党の奮闘を期待したいと思いま

五、それぞれの選挙戦について

 つぎに、それぞれの選挙戦について若干触れておきたいと思います。
 首長選挙については、いっせい地方選挙の知事選では革新福岡県政の防衛、これがひじょうに重要な任務ですし、同時に東京都、大阪府の知事選など革新自治体の再建、さらに拡大が任務になります。沖縄の統一勢力の勝利は知事選にも全国的に影響をおよぼすと思います。福岡は社会党の動揺で新たな困難も生まれています。大阪はこれまでの自社公民連合に一定の矛盾が生まれています。東京では畑田重夫氏を有力候補の一人として都委員会を先頭に準備活動を強化しておりますが、自民党側も社会党もまだ候補者をきめていません。都民のなかから革新統一の世論をもりあげていくこと、これは大阪とともに東京でもひじょうに緊急の任務になっています。
 知事選挙、市長選挙、町村長選挙をとわず一番の問題は候補者決定のおくれで、大阪は、「明るい会」が系統的に活動し、はやくから角橋てつや氏を予定候補ときめてすすめていますが、まぎわになってあたふたするという例がまだまだ多い。これでは敗北主義の克服はできません。最近は、市町村長選挙などで原発建設、あるいは金権腐敗問題などで市民派その他が日本共産党に共闘をもとめてくるという例なども生まれているように、さまざまな情勢の変化に注目をおこたらないようにしたいと思います。

道府県議選、政令市議選

 つぎに、道府県議選と政令市議選です。道府県議選と政令市議選は前回いっせい地方選で前進しただけに、さきほどいいましたように今回はきびしい情勢なのでとくに重視する必要があります。かつてない激戦でこのままでは現有議席を失いかねない選挙区も少なくありません。個別に検討した結果でも、いま県議の空白は島根と佐賀の二県ですけれども、ここで空白を埋めたとしても、ほかでまた空白を生みかねない危険が現実にあります。前半戦の結果は後半戦に大きな影響をあたえます。国政選挙にも影響します。ですから前半戦の道府県議選、政令市議選でかならず現有議席を維持し確実な拡大をはかることが、いっせい地方選挙全体にとってひじょうに重要な課題になっています。ですから、必要な幹部配置をふくめて万全の対策をただちにとらなければなりません。議席獲得をめざす選挙区とあわせ、地区委員会所在地など政治的に重要選挙区では候補者を積極的にたててたたかう必要があります。政令市では市議選にも影響します。
 各党の動きのなかでは、とくに自民党、社会党の動きが重要です。自民党は「共産シフト」をしいているところが多い。しかも、積極的な立候補をみせています。仙台では現有十議席にたいして十六十七人の立候補の動きといいます。岐阜市でも現有議席の倍加をめざしています。滋賀では県議選で「共産シフト」をしいています。京都では「共産党とのたたかいがすべて」と自民党は必死です。社会党も県議三割増と積極的なかまえで、とくに「資料」にいれてありますが、日本共産党が県議をもっている選挙区で社会党が新たに議席をめざしているところが、報告では二十三あります。これまで日本共産党が県議をもっているが社会党はもっていないというところで新たに立候補させるところも六あります。こういうところではぼやぼやしていると、反共攻撃と、これまでの参議院選挙、衆議院選挙での社会党への票の集中傾向とが結びついて党が議席を失いかねません。女性候補の擁立もふえ、大阪では女性候補を六人から十二人に倍加させる予定です。いくつかの選挙区では候補者を公募するという動き――これは県議だけではありませんが――を社会党はとろうとしています。そのほかに「連合」の推薦候補が東京・大阪では多い。いくつかの県で「連合」推薦候補の動きがあります。また、生活クラブ生協、ネットワーク、女性擁立、無党派の動きも県議選であります。鳥取の県議選で倉吉市では反党分子が立候補を予定しています。

市町村議選、区議選

 市町村議選と区議選の動向は、傾向としてはいまいった県議選とほぼ同様です。自民党と社会党がひじょうに積極的で、さまざまな無党派候補あるいは反共候補がでます。緑の党――これはこのあいだ「赤旗」が書いたように日本労働党から枝わかれした毛沢東盲従集団ですが――これが二十三区すべてに立候補します。市・区・町村議選では、一般市議では三十市、区議で二区、町村議で八十三町村の定数が削減されています。
 ですから楽観してとりくんだら、とりこぼし、あるいはとも倒れがありうるので、本格的な攻勢的なかまえでたたかわなければなりません。けっして楽観しないことです。五期当選、六期当選というベテランの同志がひじょうに多いのですが、ベテランであればあるほど、候補者本人も実績があるから自信があります。まわりも、まさかあの人はと思いますからどうしても甘くなる傾向があります。中間選挙の結果をみても、ベテランの同志でも必死の奮闘なしには議席の確保が困難だという情勢です。選対局としても点検、指導援助に全力をあげる、現地でも全力をあげる、それでようやくとおったという選挙戦が少なくありません。と倒れは絶対しないように、これは当然のことですが、とくに指導部がこの点できびしい責任をもつことが必要であります。

中間地方選挙

いっせい地方選挙までに茨城県議選など百をこえる中間選挙があります。この一つひとつが前哨戦になります。新聞も報道します。他党もみます。この一つひとつの中間地方選挙を全力をつくしてかちぬかなければなりません。さきほど、大会後は差し引き減少だといいましたが、この一県二十市九十三町村の選挙戦でかならず増勢傾向に転化させなければなりません。議員をふやすという傾向をかならずかちとる、その上げ潮でいっせい地方選挙を迎えなければなりません。

国政選挙

つぎに、国政選挙です。その重要性はさきほどのべました。候補者決定をいそいでいただきたい。参議院選挙、衆議院選挙で候補者がかわるところできまっていないところがまだまだありますので、候補者決定をいそいでいただきたい。現状はきわめておくれています。
 内閣打倒、国会解散総選挙を要求しながら候補者もきまっていないというのでは、だれがみても本気ではないなということになります。いまの時期の国政選挙の候補者活動は大会決定で強調しましたが、開拓者精神を発揮して有権者と多面的な結びつきをひろげるとともに、党の支部会議や後援会の学習会への参加をふくめて、党と後援会の政治的自覚と決起をかちとる活動に候補者自身がくわわっていく。党の政治的思想的建設の推進者の役割をになうことが、いまの時期に重要な国政選挙の候補者の活動であります。東京の衆院選候補者はその努力をつとめておりまして、毎週報告もきておりますが、注目すべき成果をあげております。
 国政選挙でとくに議席をめざすところでは、参院選でも衆院選でも、選対本部体制の確立、選挙区内の政治分析、攻勢的な政治宣伝計画と候補者活動の推進、候補者パンフ、リーフの準備、すべての候補者がいっせい地方選挙で先頭にたってたたかうようにとりくまなければなりません。

六、選挙準備について

 最後に、選挙準備についていくつかの点をのべたいと思います。

最大の問題点は候補者決定の遅れ

 選挙準備で、現状で最大の問題点は候補者決定のおくれであります。いっせい地方選挙でも候補者決定のおくれであります。とくに、区議、市議とくらべると道府県議と町村議がおくれています。道府県議の決定率は五八・八%、町村議は六〇・五%です。ともにまだ六割前後という水準です。どんなにおそくても年内にやらなければなりません。重視すべきは現職議員がいるところで、その現職議員と交代する候補者の決定がまだすすんでいないところが百七十四市町村で百八十八名あります。万一きまらないままだと、現職議員ですから議席減になるわけです。なぜ、候補者決定がおくれているかというと、現職議員の不確信と動揺があり、さきほど尾鷲市の例で強調したような党員の消極性、戦闘性の弱まりが重要な原因です。任務をあたえられたら勇躍して困難でもやろう、候補者として立とうという戦闘的な気迫が薄れているという傾向がある。四ヵ月で選挙だというのに、まだ六割しか道府県議と町村議の候補者がきまっていない。こういう状況ではほんとうに県議選で後退しかねないということになります。ですから、とくに各府県委員会は候補者決定を強力な指導で、責任をもってすすめていただきたいと思います。
 十四市六百二十八町村にのぼる空白議会の克服問題でも、たちおくれがあります。これもいまの問題とつながりますけれども、計画がきわめて消極的になって、たてまえになっている。ほんとうに開拓者精神をもって実際に空白を克服すると、やりがいのある仕事ですばらしい感動的な実例が多く生まれています。ところが、このとりくみがおくれている。空白克服募金も全党で実行し財政援助措置もおこなっているわけですから、そういう措置も活用して積極的な挑戦をすすめていただきたい。このこともつよく要望したいと思います。

政策準備、宣伝物の作製、選挙体制の確立について

 つぎは、政策準備と宣伝物の作製で、政策準備はいうまでもなく全体の柱であります。地方政治の分析、各党の役割、他党批判の材料あつめ、議員団、候補者の実績、その整理、明確化、これはある時間がかかりますからはやくすすめていただきたい。
政策問題では全国での順位、他の自治体との比較、あるいは革新自治体との比較等々も重要な材料です。
 実績づくり、他党批判にとって議事録はひじょうに有効です。ですから、選対指導部は候補者の議事録や他党の議員の議事録をとりよせて、自分で読んでほしい。ひじょうに生きた活動の紹介にもなり、他党批判も具体的になります。
 前半戦についてはこういう準備がはじまっていますけれども、後半戦については全体として大きくおくれています。候補者宣伝物、ポスター、リーフ、パンフもおくれていますのでいそいでいただきたい。候補者ポスター作製ずみは三六%、四割に達しません。パンフ、リーフは三〇%、三割です。七割ができていないという状況です。候補者パンフについては、以前中央委員会でも強調しました。沖縄での古堅さんのトップ当選には、四十五万部刷った候補者パンフが県民の心をとらえたということがあったわけです。こんどの大田候補のパンフもひじょうにいいもので、敵の中傷宣伝をはねかえすうえで大きな威力を発揮しました。あまり立派な、お金のかかるものでなくて結構ですからお金がかからなくて、しかも有効な、魅力的な候補者パンフ、リーフもおおいに工夫していただきたいと思います。県議の現職区でもまだというところもあります。
 選挙体制の確立は、統一選対、個別選対の確立をいそぐことが、まずスタートです。責任者をきめる、これなしには仕事がはじまりません。必要なところは臨時をふくめて専従者も配置する、そういう体制をつくることによって、たちおくれも克服できるわけです。
担当者もいない、きまってもいない、体制もできていないというのでは、パンフ、リーフもメドがたたないまま日を暮らすということになります。

日本共産党の風を候補者先頭に全国のすみずみにみなぎらせよう

 候補者活動の強化について、最後に強調しておきたいと思います。いうまでもなく、候補者は党を代表して活動するので、その候補者の気迫ある活動は選挙戦を左右します。国政選挙の候補者だけでなく、地方選挙の候補者も党の政治的・思想的建設の先頭にたつ。支部会議にもでる、十二条党員のところも訪問する、機関紙をとっていない党員のところへも候補者自身がいく、そういうことが支部をふるいたたせることにもなるわけです。すべての党員に確信をもたせる活動に全力をあげていただきたい。マニュアルによる二時間の講義もやっていただきたいと思います。
 それから、住民にたいしては、街頭宣伝、音のでる宣伝がひじょうに重要で、音のでる宣伝が弱いと、こんどは日本共産党が力をいれていないのだということになるわけで、音のでる宣伝でまわりますと、家にいても、「あっ日本共産党はやる気だな」ということになります。おもしろいなと思うとでてきてきいてくれるので、音のでる宣伝の強化、またその器材の準備、整備をいそいでいただきたいと思います。音だけでな話の内容もほんとうに住民の心をとらえるような準備をしてほしい。そのためにはよく集団討議をして、また候補者自身もよく勉強して材料をあつめて、なによりも「赤旗」をよく読んで、やっていただきたい。ほんとうに有権者の心をとらえ、日本共産党に投票することに誇りをもつような演説をぜひすべての候補者がやっていただきたいと思います。
 十二月一日から三日間、日本共産党地方議員全国集会もおこないますので、ここでも報告ならびに充実した討議で候補者活動のレベルをあげていくようにしたいと思います。そして日本共産党の風を、候補者を先頭に日本全国に都道府県のすみずみにみなぎらせるという選挙活動を展開していきたいと思います。
 一連のこういう重要な選挙で全党員の決起が決定的であって、昨年来の複雑な情勢のなかでの党の政治的・思想的建設、これが全国的な政治戦で中間選挙で、いっせい地方選挙で、参議院選挙でためされることになります。そのためには機関の戦闘体制の確立が必要であって選挙戦における積極的な政治宣伝のために機関紙拡大のためにも前衛党らしい党づくり、これがすべての基本になります。世界でも日本共産党の活動に注目があつまっているわけですかれわれは確信と誇りをもっていますが、まだ多くの国民は反共攻・撃の影響にとらえられて日本共産党の存在と活動に誇りをもつというところまでいっていません。しかし、党員だけでなくて、また後援会員だけでなくて読者だけでなくて、多くの国民に日本共産党の存在と活動に誇りをもたせることができる条件と状況がいま現にあるわけです。前衛党らしい党づくりをすすめ、反共反撃をはじめとする政治宣伝をすすめて、参議院選挙衆議院選挙での二回にわたる議席後退をかならずとりもどしましょう。いっせい地方選挙でもまた日本共産党が後退したということには絶対にしない、国民と支持者の期待にこたえてかならず躍進をかちとる、そういう選挙戦にぜひしたいと思います。
 中央委員の同志のみなさんの討議と奮闘を心から期待して報告を終わります。
(「赤旗」一九九〇年十一月二十六日)

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