日本共産党第19回大会第2回中央委員会総会の討論の上田副委員長の結語(1990年)

いっせい地方選挙、中間選挙、国政選挙など一連の選挙戦について

上田副委員長の結語

 一連の選挙戦についての多くの発言がありました。それぞれ真剣で、率直で、積極的な内容をもつ発言でした。私はこの結語で、五つの問題について、のべたいと思います。


情勢を絶対に甘く見ずどうすれば勝てるかの展望をきちんと示す

 第一は、選挙をめぐる客観的情勢の見方と党のかまえの問題であります。
 勝利、前進の経験として愛知県、沖縄県、山形市、川西市などの選挙について多くの発言がありました。また敗北、失敗の痛切な経験として鳩ヶ谷市、舞鶴市、尾鷲市、飯山市などの選挙について、多くの発言がありました。しかし、たとえば勝ったところでも、中央・選対の五島同志が、多くは「辛勝」、かろうじて勝ったところが多いといいましたし、千葉の県委員長は松戸市の例をあげて、六名全員当選はしたけれども、票も率も減ったことを報告しました。党の票は千六百票近く減っているけれども、あの松戸の選挙では社会党は三議席から六議席に倍増して一万票以上票をふやしています。
 こういう状況をみますと、選挙をめぐる客観的情勢は、とくに反共攻撃、天安門、東欧・ソ連の激動以後の敵の攻めこみ、その反共宣伝の影響の浸透、等々からみて、「全体としてきびしい」と報告でいいましたけれども、絶対に甘くみることはできません。いっせい地方選挙についても、それまでの中間選挙についても、そういうことが討論をつうじていっそうはっきりしてきました。
 五島同志は、情勢判断の甘さをいましめ、そうするとかまえも甘くなる、これはかならず失敗につうずると警告しましたけれども、その警告を全党は重くうけとめる必要があると思います。千葉の松戸市でも北海道の士別市でも、力の集中をやってようやく勝っている。そうするといっせい地方選挙では、全県的・全道的集中が困難なので、それぞれの選挙で機関、選挙指導部が自力でたたかわなければなりません。選対としても点検し、援助し、オルグもいれ、力を集中してようやく辛勝という状況が多いとすると、いっせい地方選挙でそういう手がうてない場合には、やはりきびしいということになります。
 しかし同時に、そのきびしさを、ただ「大変だ、大変だ」というだけではいけません。東京の宮本書記長選対の太田同志も発言しましたが、私も最近、若干経験しました。ある演説会で「社会主義共産主義「崩壊」論のものすごい影響と浸透、「赤旗」の大きな減紙の二つでもっぱら選挙のきびしさを訴えていました。またある後援会の学習会で「きびしい」「大変だ」という報告ばかりで会場の雰囲気がしぼんできた、という報告も読みました。きびしさをしっかりみると同時に、どうすれば勝てるのか、前進の展望がここにあるということを訴えることが必要です。いまの客観的情勢のきびしさを正面からうけとめると同時に、多くの発言は、主体的に党機関と党ががんばり、「赤旗」読者、後援会員、住民の底深いエネルギーをひきだしてたたかえば勝利の展望がひらけるという実例をしめしておりますので、客観的情勢と主体的努力が明暗をわけることを統一してとらえて、選挙戦にのぞむことがもとめられています。

情勢の変化や有権者の気分・要求を政治的にとらえる

 第二は、「政治と理論を前面に」という問題です。
 内外情勢の展開は弁証法的なもので、アメリカに要求されてだした海部首相の、アメリカの戦争への協力法案、自衛隊派兵法案は廃案になっただけでなく、それが沖縄の知事選で最大の争点になり、十二年ぶりの革新県政奪還のもっとも大きな契機になるという、皮肉な結果さえもたらしたわけです。そういう政治情勢の変化を敏感にとらえて、大量宣伝で訴えることが力関係を瞬時にして大きくかえるという経験さえ沖縄の・教訓はじめしました。そういう問題がそう頻繁にあちこちでおきるわけではありませんけれど、政治情勢の変化、有権者の気分の変化、焦点となっている要求を、政治と理論を前面に、政治的にとらえて対応していくことが重要です。
 山形の市長選挙では、革新市長が変質しかけていました。北蔵王の「山新グループ」の開発に賛成したことを重視し、十回の交渉をやってとうとうやめさせた。これはひじょうに大事なたたかいでした。県委員長は、公明党は脱落しているし、それをしなければ、負けるにちがいなかった、これは「政治と理論を前面に」ということの教訓の一つだと強調されましたけれども、私も同感です。
なお参院愛知補選については、議長の冒頭発言の、統一への努力と統一の推進力としての日本共産党の地盤の強化、この二つを統一することがひじょうに適切な原則的な指摘だということについて、多くの共感の発言がありました。

候補者決定の遅れの最大の問題点は日和見主義と消極性・党派的戦闘性の弱化に

 第三の問題は、候補者決定のおくれと日和見主義との関連の問題です。
 報告でものべましたし討論のなかでも強調されましたけれども、国政選挙もそうですが、いま、いっせい地方選挙準備のなかで最大の問題は候補者決定のおくれであります。そのおくれを早急にとりもどして出足はやい選挙準備にふみださなければなりません。そして報告でもふれ、討論のなかでさらにあきらかになったように、この候補者決定のおくれの最大の問題点は、反共攻撃の党内への浸透のあらわれとしての日和見主義と消極性、党派性と戦闘性の弱化の傾向ということにあります。これはこの中央委員会でいっそうあきらかになった重要な命題です。候補者決定のおくれが、いつものことですまされない、党内の日和見主義とかかわっているという事態は、この会議で提起されたきわめて重要な問題だといわなければなりません。
 尾鷲市では、県委員長の自己批判の発言もありました。長野の飯山市では、直前に現職の候補者が立候補をとりやめ、反省が表明されたという報告もありました。党勢のつよい飯山市であのような敗北をきっしたことの重要な原因が、ベテランの現職議員のそういう日和見主義への屈服にあったことは、きわめて重要な教訓です。
大会後の中間選挙で離党後の無所属立候補が八名生まれているのに、この問題を系統的につかまず、重大問題として提起しなかったことが選対局の太田同志から反省的にのべられました。しかし、太田同志個人の責任ではありません。選対局としても、この問題を重要な問題としてとらえ、常任幹部会に提起し、全党に提起することができなかったことを反省しています。尾鷲市議選で、この問題がひじょうに重要な問題だということがあきらかになりました。それは単に八名という数にとどまる問題ではありません。
 同時にこの問題は、党の政治的・思想的教育、マニュアルを活用した基本課程の教育の問題、党建設の問題、地方議員にたいする機関の責任をもった把握と教育の問題等々と結びついております。さらに、空白克服をふくめて候補者決定のおくれの問題は、志位書記局長も強調したように、日本共産党員としての気概の弱さともかかわりがあります。かつては地方議員への立候補を機関からもとめられると、みんな、生活は変化するかもしれない、あるいは収入は下がるかもしれないなど、さまざまな困難を克服し、勇躍してその任務にこたえるという同志がひじょうに多かったけれども、こんにちではそこのところが候補者決定のおくれの大きな障害になっているといいます。いろいろな困難はそれはありますが、そこを乗りこえさせることが機関にとっての一番むずかしい課題となっているとすれば、それは、党のなかに革命的気概の弱化日本共産党員としての党派性の弱化の傾向が生まれていることをしめしています。
 ですから、候補者決定のおくれとは、党員が入党のときの初心にもどって、党からいわれた任務にたいして、もちろん意見をいう自由もありますし、困難の克服については党機関が親身になって相談におうじなければなりませんけれども、勇躍してこたえていくという革命的気概を党全体にあらためてみなぎらせていかなければならないという、党建設の基本にもかかわる問題であると思います。
 士別市の選挙では、反戦平和、主権在民をつらぬく党という姿をつよく訴えると、保守的な人でもうなずいてきいていたという報告もありました。この問題をいっそう重視してとりくんでいきたいと思います。この日和見主義との闘争と結びつけて候補者決定のおくれを全党的に早急に克服すること、これを果たさなければいっせい地方選挙での党の前進は困難なので至急責任ある積極的とりくみを各県の党機関に要望したいと思います。

前回比三割増の機関紙読者へ全党の奮闘を

 第四は機関紙の拡大の問題です。
 反共反撃のためにも、党の政治思想建設のためにも、さらに基礎的支持勢力拡大のためにも機関紙拡大がひじょうに重要な課題となっていることはいうまでもありません。
発言のなかで、得票率も得票も減らしたけれども六名当選した松戸市議のなかで、ひとりだけ票を伸ばした候補者がいて、そこだけは、「赤旗」が前回比で一一〇%だったという報告がありました。これは、機関紙拡大がもつ選挙戦にとっての決定的な意味を具体的な例でしめしたものだと思います。ぜひ前回比三割増の機関紙読者をもって、この歴史的な選挙戦にのぞむよう、全党が奮闘したいと思います。

演説内容を政治的に高めるなど候補者活動について

 第五は、候補者活動の問題です。
 大会決定にもとづいて候補者が党の政治的思想的建設に参加していった積極的経験もいくつかのべられました。地方議員もその活動の先頭にたつようにしたいと思います。同時に、地方議員、また予定候補者の同志の演説の改善もすすめる必要があります。これまで、たとえば中央から国会議員などの参加する演説会の場合、地方議員の同志は、プログラムの最初に話すことが多く、多少前座的な姿勢におちいりがちです。そうではなく、中間選挙でも、いっせい地方選挙でも地方議員の同志が主役ですから、地方議員の同志は、主役として、演説の内容、街頭の演説のなかみをもっと政治的に改善、充実する努力を強化してほしいと思います。地方政治も、中央の政治と同じようにさまざまな重要な政治的、政策的内容をふくんでいるので、それらの内容をしっかりつかんで、地方議員、予定候補者の演説内容をも、理論と政治を前面にしたものにたかめていくことが大事であります。十二月一日からの地方議員全国集会は、ぜひそのためにも貢献する会議にしたいと思っております。
 こんどの中央委員会で、一連の選挙戦をめぐるさまざまな問題点がいっそう鮮明になったと思います。どこに困難があり、どこに課題があるか、どこを乗りきっていかなければならないか、弱点も優位点もあきらかになり、展望もはっきりしてきたと思います。多くの実例や豊富な経験や教訓が語られました。ぜひ全党が、この二中総が提起した諸課題を全面的に実践する、そして一連の選挙戦、中間選挙、いっせい地方選挙、国政選挙、すべてで党の前進をかちとるために奮闘することをおたがいに誓いあって結語にしたいと思います。
(「赤旗」一九九〇年十一月二十七日)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

sixteen + nine =