脱原発運動の22の団体が、12月22日(木)に共同で政府への抗議声明「まやかしのGXに抗議-原発は最大のグリーンウォッシュ」を発表しました(以下全文)。
岸田政権は、本日にも、原発の建て替え(リプレース)、運転期間のさらなる延長などを含んだGX方針を打ち出そうとしています。
原発を「環境」の名目で推進することは、環境に配慮するように見せかける最大のグリーンウォッシュです。原発は、ウラン燃料の採掘から運転、廃炉まで、放射能汚染を伴い、何万年も管理が必要な核のごみを生み出します。トラブルが多く不安定であり、柔軟に止めたり動かしたりすることはできず、出力調整も難しく、計画外に停止すれば広範囲に大きな影響をもたらす原発は、電力需給ひっ迫の解決の役にはたちません。原発を維持し、推進することは、むしろ対策を阻害します。脱原発こそ進めるべきです。
「原則40年、1回に限り20年の延長可能」と規定されている原発の運転期間は、2011年の東京電力福島第一原発事故を受けて、与野党合意のもと、原発の安全規制として導入されたものです。それにもかかわらず、今回、運転期間制限は規制政策ではなく利用政策で決められるとして、原子力規制委員会の所管から、経済産業省の所管に移す方針です。これは、利用政策と規制政策の分離という、福島第一原発事故の重要な教訓を投げ捨てるものです。
経済産業省は運転期間制限に科学的根拠はないとして、審査や裁判所の仮処分命令などで停止していた期間を除外し、60年を超える運転延長を可能にする方針です。しかし、日本の原発の多くは40年運転を前提に設計されています。
また、老朽原発を動かすことは極めて大きな危険を伴います。運転休止中であっても、配管やケーブル、ポンプ、弁など原発の各設備・部品が劣化します。交換できない部品も多く、電力会社の点検や規制委の審査基準もきわめて不明確です。過去には、美浜原発3号機で配管減肉見逃しによる破断事故で、11人もの死傷者が出ました。フランスの原発では昨年末に配管のひび割れが見つかるなどの理由で、現在30基もの原発が停止しています。
原発推進方針の中には、「立地地域との共生」がうたわれており、原発立地地域に対するさまざまな支援策が盛り込まれています。従来、原子力関連では多額の交付金がばらまかれてきました。これは地域経済を原発依存にし、地域の健全な発展を阻害してきた面があります。最近では老朽原発の稼働に対する交付金の拡充案や、プルサーマルの受け入れに対して交付金を拡充する方針も示されました。これは地域振興の名のもとに、リスクの受け入れを地域に押し付けることにほかなりません。
2011年3月の東日本大震災に端を発した東京電力福島第一原発事故は未だ収束していません。多くの人たちが故郷を失い、生業を失い、生きがいを失いました。政府はこの被害と痛みに向き合い、被害者の救済や事故の原因究明、福島第一原発施設の安全確保、事故の教訓の伝承、脱原発こそ最優先で進めるべきです。
第6次エネルギー基本計画で国は「国民の間には原子力発電に対する不安感や、原子力政策を推進してきた政府・事業者に対する不信感・反発が存在し、原子力に対する社会的な信頼は十分に獲得されていない(中略)政府や事業者は、こうした現状を正面から真摯に受け止め、原子力の社会的信頼の獲得に向けて、最大限の努力と取組を継続して行わなければならない」と述べています。ところが、今回の原発推進方針は、原子力産業の利益を代弁するような委員が圧倒的多数を占める経済産業省の審議会で、パブリックコメントすら行わず、国民を置き去りにして決定されました。とても納得できるものではありません。
私たちは政府の原発推進GX方針に抗議し、撤回を求めます。
2022年12月22日
国際環境NGO FoE Japan、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)、脱原発福島ネットワーク、会津放射能情報センター、子ども脱被ばく裁判の会、「避難の権利」を求める全国避難者の会、女川原発再稼働差止訴訟原告団、さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト、エナガの会、原発止めよう!東葛の会、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会、避難計画を案ずる関西連絡会、オール福井反原発連絡会、ふるさとを守る高浜・おおいの会、玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会、川内原発30キロ圏住民ネットワーク、川内原発建設反対連絡協議会、川内つゆくさ会、名古屋の老朽原発40年廃炉訴訟市民の会、原子力規制を監視する市民の会、原子力資料情報室、福島老朽原発を考える会、Fridays for Future Tokyo