日本共産党第19回大会第2回中央委員会総会への志位和夫書記局長の報告「日和見主義とのイデオロギー闘争と、前衛党らしい党建設の推進について」(1990年)

日和見主義とのイデオロギー闘争と、前衛党らしい党建設の推進について

志位和夫書記局長の報告

 日和見主義とのイデオロギー闘争と、前衛党らしい党づくりの推進について報告いたします。
 党綱領路線と党大会決定にもとづいて、どんな反共の嵐がふこうとゆるがず前進できる全党の強固な思想的・政治的団結をはかることは、激動する内外情勢のもとでわが党が「社会発展の促進体」としての歴史的役割を果たしていく不可欠の土台です。それはまた、目前にせまったいっせい地方選挙、中間選挙、さらにきたるべき国政選挙で、日本共産党の躍進をかちとる最大の保障でもあります。これまでもくりかえし強調されてきたように、「全党員がたちあがれば勝てない選挙はない」、このことは、選挙勝利の不滅の鉄則にほかなりません。
 そのために、九月の全国都道府県・地区委員長会議での方針にそって、日和見主義の潮流を克服するためのイデオロギー闘争にひきつづき積極的にとりくむこと、それと結びつけて、教育を基本とした前衛党らしい党建設のとりくみを中途半端にせずにどうしてもやりきることが、いまつよくもとめられています。

一、日和見主義を克服するイデオロギー闘争について

(1)現在の日和見主義の本質と、その克服の重要な意義

 まず、のべたいのは、日和見主義の潮流を克服する思想闘争の問題です。
 第十九回党大会を前後して、科学的社会主義の原則から背反した一部の日和見主義の潮流との思想闘争が、党活動の重要な課題としてとりくまれてきました。この日和見主義の潮流の主張は、「ソ連や東欧でああいう現象がおこっているのだから、日本共産党もこれまでの路線や体制をかえるべきだ」という、わが党の路線と体制の根本的変更を要求するものでありました。それは、ある場合には、党綱領と規約の否定、民主集中制の否定、さらに指導部にたいする漫罵をともなった中傷にまでエスカレートしました。

科学的社会主義の活動と日和見主義の潮流

 こうした日和見主義の潮流の本質は、昨年来の東欧・ソ連での激変にたいする清算主義的動揺と、この問題を利用した国際的・国内的な「社会主義共産主義崩壊」論への屈服にほかなりません。
科学的社会主義の学説と運動は、その歴史的発展のなかで、さまざまな日和見主義の潮流の発生に直面してきました。よく知られているように、レーニンは、「マルクス主義と修正主義」のなかで、「すこしでも「新しい」問題、すこしでも思いがけない、予想外の転換がおこるたびに、―たとえその転換が発展の基本方向を、ほんのわずか、またほんの短い期間かえるにすぎないばあいでもつねに不可避的に、修正主のあれこれの変種が生みだされる」とのべています。情勢のさまざまな転換がおこるとき、日和見主義の潮流が不可避的に生まれるというレーニンのこの指摘は、今日でも重要な意味をもっています。
 ソ連や東欧の事態でふきあれた風は、大規模な暴風となって世界を席巻しました。「スターリン・プレジネフ型の体制」の大規模な崩壊、これにともなって生まれている資本主義化や社会民主主義への屈服傾向な発展の基本方向」からの逆流現象をまえにして、社会発展の根本的法則を見失い、動揺し、確信を喪失する状況が一部に生まれました。世界各国の共産主義運動のなかにも、科学的社会主義の党を解体し社会民主主義にみずからを解消する傾向、あるいは民主集中制の放棄など、少なくないところで深刻な解党的状態が生まれています。こういう歴史的時期に、科学的社会主義の立場から離れた一定の潮流が生まれたのは、けっして偶然ではありません。
 わが党の規約にも、「党はつねに科学的社会主義の革命的真髄を擁護し、修正主義、教条主義、セクト主義などあらゆるかたちの『左』右の日和見主義とたたかう」とありますが、科学的社会主義の学説と運動は、たんたんとしたものではなく、誤った潮流からの挑戦をうけ、それを克服することをつうじて、その発展をかちとることができるということについての深い自覚的認識が、いまもとめられているのであります。

反共攻撃とのたたかいのひきつづく重要な意義

 しかもこうした国際的激動を利用して、日本共産党の存在そのものを否定する反共キャンペーンが、公安調査庁など秘密警察の直接、間接の謀略的な筋書きもくわわって、ブルジョア・マスコミを動員して、大規模かつ、系統的におこなわれました。日和見主義の潮流は、多かれ少なかれ、意図するとしないとにかかわらず、こうした反共攻撃の影響下にとらわれたものにほかなりません。
 すでに戦後第二の反動攻勢がふきあれた時期から、党内にもさまざまな受動主義、敗北主義が生まれていましたが、日和見主義におちいった人びとのなかには、ソ連・東欧の激変と国際的な反共の嵐をむしろ絶好のチャンスとみて、かねてからのみずからの思想的変質を合理化する論拠をそこにもとめようとするものもいました。
 わが党は、学問上、研究上のさまざまな意見のちがいをただちにセクト的に敵対視することを、党の団結にとっても学問研究の自由な発展にとっても有害であるとしてつよくいましめるとともに、党の国際的、国内的に果たしている役割を、大局において誇りをもって肯定的にみることができるのかどうかという点に、学者・研究者の党的な団結の基準があることをあきらかにしてきました。しかし、反共攻撃の影響ともあいまって、そういう党の積極的役割をみることができずに、党への論難のみに身をおく一部の風潮は、あらたまりませんでした。これにたいする一部の党機関の指導傾向にも弱点がありました。これらの誤った傾向にたいして、党の方針を説明することのみに終始して、その基本的誤りを理論的に克服するという態度や意気ごみに欠ける場合が少なくなかったことは、ときとして誤った傾向の正しい克服をおくらせることになりました。
 歴史的成果をおさめた第十九回党大会の成功は、反共勢力がめざした党の変質と無力化のたくらみをうちくだきました。また、大会後の情勢には、イラク問題を焦点として、国際的にも、国内的にも、日本共産党の出番といえる新しい劇的展開も生まれています。しかし同時に、そのことをもって、天安門事件から党大会を前後した時期にかけて長期にわたっておこなわれた謀略的攻撃の党内への影響の沈殿を軽視することは許されません。また、反共攻撃は、たとえばイラク問題などの「国際貢献」論などをめぐっても、たえず新しい形態で再生産されています。わが党に不当な非難と中傷をくわえる反共攻撃にたいしては、どんなものでも細大もらさず機敏に反撃し、その国民への有害な影響と、党内への浸透を一掃するためにたたかうことは、ひきつづく党活動の重大な任務であります。
戦前、戦後のわが党の歴史的発展は、さまざまの日和見主義との闘争によってきりひらかれてきました。その経験は、誤った潮流にたいして、道理と勇気をもってたちむかってこそ、より高い次元での党の戦闘的団結をかちとれることを教えています。この三十年来にわたって大国主義・覇権主義反対をつらぬき、日本の実情にそくして科学的社会主義を自主的・創造的に発展させてきた日本共産党は、不当な論難や中傷を恐れる必要はありません。わが党は日和見主義の潮流の克服を、全党の任務として戦略的に位置づけ、その影響を根絶するまでたたかうものであります。

(2)いくつかの理論上の問題について

つぎに日和見主義の潮流にかかわるいくつかの理論上の問題についてのべます。大会後のこの分野でのイデオロギー闘争をつうじて、日和見主義の潮流の理論的誤りはすでに鮮明にされています。

大国主義反対の見地、科学的社会主義を三分野からみる見地の欠落

 この潮流の多くに共通する特徴は、第一に、日本共産党の自主独立の路線にたった大国主義・覇権主義反対の先駆的闘争への無理解と不確信という問題です。そして、その裏返しとしての、「ソ連・東欧がかわったのだから日本共産党もかわるべき」という事大主義の立場です。
 第二に、科学的社会主義を学説、運動、体制の三分野から全面的にとらえるという見地を欠いているということです。現存する社会主義の体制の問題だけにその視野を局限するというきわめて狭い立場が顕著にみられましたが、それは、東欧・ソ連でのゆがんだ体制の破たんから、社会主義そのものの「危機」や「破たん」をみちびくという短絡的な主張に帰結しました。これが、反動勢力が流した「社会主義・共産主義崩「壊」論と同一の軌道上のものであることは、あきらかであります。
 こうした主張が、科学的社会主義の原則的立場そのもの、社会発展の法則そのものへの確信の喪失へとつながっていったことは必然的でありました。歴史の逆行現象もふくめて東欧の事態を一律に美化した「東欧民主主義革命論」はその一産物でした。しかし、その主張の誤りは、東欧のその後の現実の推移東独の
 西独への併合とNATO(北大西洋条約機構)加盟、資本主義化の傾向、政治反動の深刻化など、複雑な逆流が生まれていることをつうじていまや明りょうとなっています。
 大会決定が深くあきらかにした、大国主義、覇権主義との先駆的な闘争の到達点から世界をみる〟〝社会主義の学説、運動、体制の三分野から世界をみる”という見地は、日和見主義の潮流を克服していくうえでも、その根本的立脚点となるものであります。

民主集中制の否定、前衛党の存在そのものの否定

 日本共産党の組織原則である民主集中制の原則の否定の主張も、日和見主義の潮流の共通項でした。東欧の諸党やイタリアの党などが民主集中制を放棄していることを「根拠」として、日本共産党もこれにならえという主張がなされました。しかし、民主集中制を放棄したこれらの党のその後の実態が、こうした主張の破たんをしめしています。イタリア共産党は、三派にわかれた派閥抗争によって、イラク問題などにも党としての統一的な対応がとれず、重大な党勢の減退におちいっています。東欧でも、過去の誤りを口実にした暴力をともなう反共攻撃がかけられ、進歩勢力の存在と活動を抹殺しようとする動きがつよまっていますが、民主集中制を放棄した一連の党はこれにたいする有効な反撃をおこなえず、深刻な状態においこまれています。
 ソ連や東欧で、前衛党の「指導性」を強制的・行政的なやりかたで国民におしつけた誤りが破産したことをもって、そこから一足とびに前衛党の先進的役割や、その存在意義そのものを否定する議論も生まれています。なかにはもう、前衛という概念そのものが過去のものになったのだ、という議論もあるわけです。しかし、もともと前衛党の先進的役割とは、社会発展の法則にかなった正確な路線と方針にもとづく、大衆のなかでの政治的・思想的活動によって、広範な人びとの自発的な共感と支持をかちとることをつうじて、は
めて発揮されるものであります。日本共産党が規約でわが党を労働者階級の前衛と規定しているのは、けって人民大衆にそれを行政的な方法でおしつけ、その公認をもとめるというものでなく、社会発展の先進的な促進体としてのみずからの役割の自覚にすぎないのであります。
 こうした立場から、わが党は、スターリンやブレジネフ流の、共産党の「指導的役割」を憲法に書きこむなどのやり方を絶対にとらないことを、かねてからあきらかにしてきました。ソ連や東欧で主権在民の原則とあいいれないやり方が破産しているのは歴史の必然ですが、これをもって前衛党そのものの役割の否定をとくのは、重大な誤りであり、解党主義そのものの主張といわねばなりません。

前衛党の集団的認識としての真理の認識を否定する不可知論

 日本共産党が、世界と日本を分析し、社会科学の理論を発展させることそのものを、科学的真理の独占だといって攻撃する議論もなされました。これも、ソ連などで、党が「真理」を強制的・行政的手段によって国民におしつけてきた誤りが破たんしたことから、短絡的に前衛党がその集団的英知として真理を認識していくことそのものを否定するというものでした。
 しかし、日本共産党は、第一に、いかなる「国定の哲学(真理)」も許さず、社会において思想・言論の自由を確固として保障していくこととともに、第二に、前衛党が科学的社会主義を指針として、実践による検証をへながら社会発展の法則・真理を探究し、それにたいする国民の自発的支持をかちとるために努力するという見地にたっています。
 この両者は対立するものではなく、当然統一しうるものであります。それをことさら対立させ、後者を否定するとなれば、結局あらゆる客観的真理の認識の可能性を否定する不可知論、懐疑主義とならざるをえません。こうした不可知論の主張、あるいはその漠然とした気分は、日和見主義におちいった人びとのなかに、広範にあらわれました。
 しかし、科学的社会主義の世界観は、人間は、客観的真理を認識できる、対象のすべてを全面的にいっきょに認識することは困難としても、真理にかぎりなく接近できるという確信のうえに立脚したものであります。前衛党による真理への接近を否定することは、党が科学と理性にみちびかれて社会発展において積極的役割を果たすことそのものを否定するものであり、また客観的真理にもとづく全党の統一というわが党の団結の認識論的基礎を否定することにもなります。それは、科学的社会主義を土台にするかぎり到底成立しえない、すてばちの党攻撃というほかありません。

指導部への攻撃にたいして――組織問題の理論化の新たな前進

 「長い」「古い」といった指導部攻撃は、反共謀略勢力の党攻撃の重要なテーマでした。それに触発、影響されて、日和見主義の潮流からも、指導部にたいする非難と攻撃がさまざまな形でくわえられました。これにたいして、党は、組織問題、指導部論の理論化の新しい展開をはかることによってこたえました。これは、この問題での反共攻撃を根底から粉砕し、科学的社会主義の前衛党論の発展に新たな貢献をなすものでした。
 宮本議長の論文「歴史にそむく潮流に未来はない」は、この問題の理性的探究の大きな成果であります。この論文は、反共攻撃と生きた形できり結びながら、日本共産党の重層的な指導体制の歴史的発展過程とその意義を解明するとともに、内外の複雑な情勢と諸問題に「正確」「機敏」に対応できる指導部をもつことの決定的意義を究明するなど、反共勢力による指導部攻撃に、大きな打撃をあたえました。
 第十九回党大会における「中央委員会の選出基準と構成について」の報告が、「複雑な内外情勢に対応して、中央委員会の正確、機敏な指導性を保障するため、また革命的伝統にそって党のひきつづく確固たる発展を継続するため知恵と経験に富んだ試練ずみの幹部と有能な活力ある新しい幹部の適切な結合をはかりつつ、若い将来性のある幹部を大胆に抜擢登用する」とのべているのは、短いなかにもわが党の指導部論の基本点をあきらかにしたものとして、重要な意義をもっています。浜野組織局長の論文「わが党の発展と幹部政策について」も、党大会決定の見地にそって、わが党の指導部論に解明をくわえたものです。これらの成果を全党が深くつかむことを強調したいと思います。

(3)日和見主義の潮流の党内でのあらわれの克服のとりくみ

大会後のとりくみの到達について

 つぎに、大会後すすめられてきた、日和見主義の潮流の党内でのあらわれを克服する活動の到達点と、こんごのとりくみの方向についてのべます。
大会後のこの分野でおこなわれてきた努力の結果、誤った意見をもっていた同志のうち少なくない同志が、機関の指導をうけて率直に自己検討をすすめ、学習を深めて、党の軌道にたちなおってきています。また、イラク問題などがつくりだした新しい情勢のもとでの日本共産党のかけがえのない存在意義が明りょうになるなかで、これまで科学的社会主義にたいして不確信におちいっていた同志のなかからも、日本共産党が現に「社会の法則的発展の促進体」として果たしている役割にあらためて確信をもち、みずからの考えを前むきに変化させてきている人びともいます。党中央が、誤った意見をもっていた同志にたいして、そのままにせず、大会決定がなされた段階で、決定にもとづいて団結し、みずからの意見について決定にてらして自己検討するよう指導をはかることを、大会後の方針としてうちだし、実行したことは、積極的成果を生んでいます。
 しかし、なお客観的には、混迷と動揺のなかにいる人びとも残しています。日和見主義の潮流の党内への影響を克服するとりくみは、まだ端緒的な段階にすぎません。こんごもソ連や東欧の動向には、さらに大き激動も予想され、それを利用してまた大がかりな反共攻撃がくわえられることもありうるわけで、誤った潮流の克服のためのいっそうの本格的な努力が必要であることを強調しなければなりません。

党規約と民主集中制の原則にそくした正しい問題の解決を

 この問題を正しく解決するためには、党規約と民主集中制の原則にそくした適切な態度を堅持することが、なによりも大切です。無原則なことなかれ主義とともに、規約の精神にそむいた官僚的態度をとることを、きびしくしりぞけなければなりません。誤った立場におちいっている同志への批判は、あくまでも客観的・具体的な事実と、説得力ある道理にもとづいたものでなくてはなりません。
 異論をもっている同志にたいして、道理をつくしてその解決をはかることはもちろん必要ですが、同時に、党の規約は意見のちがいの保留を認めているわけです。したがって、党大会の決定にしたがって党の統一をまもるという立場が明白であるならば、同志的な団結は可能であります。民主と集中を統一した組織原則を正しく実践するという立場にたつかぎり、党は、綱領、規約の精神で団結し、前進することが保障されているのであります。
 しかし、自説に固執することに終始し、あるいはどんなに疑問にたいする解明をつくしても際限なく新たな疑問をだしてくるなどして、決定にしたがう態度をあくまでとらない同志もなかにはいます。そういう同志にたいしては、党の統一と団結に反するそうした態度そのものを根本から批判し、克服していくことを避けることはできません。これは妥協や弁明によって対処すべき性格の問題ではありません。
 党が現在の路線や民主集中制をとっているかぎり、もう活動する意思がないと離党を表明している同志にたいしては、道理にたった原則的思想闘争は当然だが、ただ慰留するのは正しくないという方針を、八月の都道府県委員長会議で明確にしたことは適切でありました。また、ごく一部ですが、意見のちがいを党規約にそったやり方で解決せず、党外から党を攻撃したり、党内に同調者をつのるなど分派的行動をとったものにたいしては、党規約にてらして必要な措置をとることがもとめられることはいうまでもありません。
 以上、日和見主義を克服するイデオロギー闘争についていくつかの角度から報告いたしましたが、この問題はわが党が日本の社会の進歩的変革という歴史的使命を果たすうえで、どのような前衛党がもとめられているのかということと深くかかわった問題です。いかなる風波にも動揺せず前進しうる、より思想的にも政治的にも強固な党をつくるうえで避けることのできない重要な課題として、ひきつづき全党がこの問題を重「視してとりくむことを訴えたいと思います。

二、教育を基本とした前衛党らしい党づくりの推進

 報告の大きな二番目の問題は、前衛党らしい党づくりの推進についてです。
 教育を基本に前衛党らしい党づくりをすすめることは、全党員の自覚的な革命的エネルギーをひきだし、いっせい地方選挙や国政選挙にむけて全党が総決起し、「四つの原点」の活動や選挙準備の活動を壮大な規模でおしすすめていく最大の保障となるものです。また、それは日和見主義の潮流を全党的に克服するための基礎的土台をつくることにもなります。これを一過性のとりくみとして中途半端に終わらせるのではなく、新入党者教育のすみやかな修了はもちろん、とくに全党員の基本課程教育が修了するまで、これをやりぬく決意を全党のものにする必要があります。
 方針はすでに、九月の全国都道府県・地区委員長会議の報告であきらかにされております。ここでは、この二ヵ月間の実践をふまえた推進方向について報告することにいたします。

(1)マニュアルにもとづく基本課程教育を中心とする学習教育とりくみの到達点について

 まず、マニュアルにもとづく基本課程教育を中心とする学習教育の問題であります。
 支部を基礎としたマニュアルにもとづく基本課程教育に、全党員が参加する党活動の活性化にむけた法則的な発展方向があることは、この間の全国の実践によってあざやかに実証されています。「特別月間」の活動でも、支部を基礎にして基本課程教育に真剣にとりくんだところでは、それが末ひろがりに機関紙拡大への党員の自覚的参加をひろげる最大の力となっています。この教訓は、選挙闘争や機関紙拡大など、こんごの党活動のあらゆる分野の前進にも生かしていかなければなりません。
 しかし、全国的には、このとりくみはまだ緒についた段階といわなければなりません。基本課程の学習会を一回でも開催した支部は二七・一%、党員は九〇%です。重大な問題は、各都道府県、各地区ごとのアンバランスがひじょうに大きいということです。開催支部率が四九二%に達している静岡県をはじめとして、この課題に正面からとりくみ、党活動の各分野での活性化をすすめてきているところが生まれている一方、事実上これを棚上げにして、ほとんど真剣なとりくみがみられない県、地区も少なからず残されています。高知、沖縄、新潟、茨城、福岡、佐賀、兵庫、徳島では、開催支部率が二〇%にも達していないという状況です。

教育こそ、前衛党らしい党づくりの根幹

 なぜこういう大きなアンバランスが生まれているのか。党中央の方針の正確な理解の大きな差が、とりくみのアンバランスになってあらわれているといわなければなりません。まだ少なくないところで、この方針への過小評価、あるいは消極論が払拭しきれていない状況や、これまでの我流の活動を漫然とつづける状況がみられます。そこであらためて、なぜこの方針を提起したのか、そのことを、いま全党に徹底することが大切になっています。
 この点で、第一に強調したいのは、教育こそ、前衛党らしい党づくりの根幹であり、あらゆる党活動の活性化の不可欠の土台であるということであります。九月の全国都道府県・地区委員長会議では、前衛党らしい党建設の問題として、義務教育の徹底、「赤旗」をよく読む党風の定着と日刊紙未購読党員の克服、支部を基礎とした党生活の確立、〝十二条該当〟党員の解決と党員拡大の問題、党機関とくに地区委員会の活動この問題など総合的に活動の方向を提起しています。しかし、これらの方針を、バラバラに並列的につかむということに終わらせないということが、大切な点です。
 これらの方針のそれでは根幹はどこにあるか。それは、マニュアルにもとづく一回二時間程度の学習での基本課程の徹底ということにあるわけであります。わが党の現状には、機関紙拡大でも、選挙闘争でも、活動する党員が一部にとどまってなかなかそれがひろがらないなど、党がほんらいの前衛党としての戦闘力を発揮できないさまざまな弱点があります。また、あれこれの外国からの「逆風」によって、動揺し、元気をなくすという状況も、党の一部ではくりかえしあらわれているわけです。その根本には、日本共産党員としての基本的な教育科学的社会主義の世界観、党綱領路線の基本点などについての教育がなされていないという大問題が横たわっているのであります。日本と世界の進歩のために献身したいという大きな高い志をもって入党してきた多くの同志たちを、未教育のままで放置しているというのは党の重大な責任です。全国都道府県・地区委員長会議の報告でものべたように、このたちおくれの克服は、「『前衛党らしい党づくり』のまさに根幹をなすもの」にほかなりません。
 実際のとりくみでも、支部での基本課程の学習会をつうじて、日刊紙未購読の同志が自発的に「赤旗」をとりたいということになったり、この学習会を契機として支部会議の定例化がおこなわれるなど、これが、前衛党らしい党づくりの方針の全体を前進させる推進力となっています。また、機関紙拡大や、選挙闘争、さまざまな大衆活動への参加など、党活動全体の活性化の知的エネルギーの源泉ともなっているわけです。

反共攻撃にたちむかう世界観的確信をつくりあげる活動

 第二に、マニュアルにもとづく基本課程教育が、反共攻撃の党内への影響を克服するうえでも、きわめて重要な意義をもっているということです。昨年来の東欧・ソ連の激変と反共の嵐のなかで、その否定的影響は党内にも深く沈殿しており、これが全党員が自覚的にたちあがるうえで、重い足かせとなっているという状況があることを直視する必要があります。実際に、基本課程に真剣にとりくんだところでは、それをつうして昨年来の反共攻撃の党内への影響がいかに深刻なものであったか、とくに社会主義論、民主集中制論、指導部論など無数の疑問が党内で未解決のまま残されているかを痛感したということが、どこでも報告されています。基本課程教育へのとりくみが真剣なものとなっていない党機関では、こうした反共攻撃の党内への影響にたいする軽視と過小評価があるのが特徴であります。
 イラク問題をはじめ内外情勢のなかでわが党が果たしている先駆的役割を全党の確信とすることはもちろん重要ですが、それがわかったからといってただちに反共攻撃の否定的な影響が党内からなくなるということにはならないのもまた事実であります。この間の反共キャンペーンは、日本共産党の存在そのものにかけられた攻撃であっただけに、その影響を払拭するためには、科学的社会主義と党綱領路線にたいする世界観的確信、大局的な確信を全党のものにすることが不可欠なのであります。
 基本課程のマニュアルは、第十九回党大会決定をはじめとした、わが党の最新の理論的到達点をふまえて、不可知論の誤りの批判など、党内の一部にあらわれている日和見主義的潮流を克服していくということを重視した構成と内容となっています。これにもとづく教育をやりきるならば、党内に沈殿していた反共的影響や日和見主義的傾向をうきあがらせて、それを克服、一掃する大きな思想的土台がつくられることは確実なわけで、そういう見地からも、このとりくみをやりきる必要があるわけです。

なぜ一回二時間の学習か――党建設の歴史的経験ふまえて

 第三は、なぜ一回二時間程度の学習ということにしたのかという問題です。それが、わが党のこれまでの大衆的前衛党建設の歴史的経験をふまえたものであることを、しっかりとつかむ必要があります。
 これまでも、わが党は、大衆的前衛党建設の根本に教育・学習をすえること、とくに基本課程を終えていない党員は一人もいないようにすることを、くりかえし強調してきました。すでに一九七七年の第十四回党大会では、義務教育の一〇〇%修了を中心とする「教育立党」を強調し、その後の大会や中央委員会総会でもくりかえしその重要性が訴えられてきました。一九八八年の第十八回党大会三中総では、教育学習・決定の読了のおくれと機関紙拡大のおくれという「党建設における二大分野でのおくれの克服」をよびかけました。このときも、決定の読了・討議、国際問題や科学的社会主義の基本などの学習、基本課程教育の年内修など義務教育の徹底、支部の活性化と支部の確立などの方針の提起がされています。
 しかし、そのための努力は、「基本課程』の出版その他さまざまとりくまれてきましたが、全体として成功したとはいえない現状があるわけです。それは単に中間機関の問題だけではなく、党中央自身のとりくみの弱さの問題でもありました。とくに、これまでのような長時間の教育ということになると、現在の党の力量や到達点からみて、実際にはそれをやりきるうえで大きな困難があったという問題点がありました。そこを思いきって、この点を割りきろうということで提起されたのが、マニュアルにもとづく一回二時間程度の学習で基本課程を身につけるという今回の学習方法なのであります。
 このようにこんどの方針というのは、これまでの党建設のとりくみの教訓と反省にたって、十分にねりあげられて提起されたものであります。全党が、これを一時的な、あるいは経過的措置ということで終わらせず、大衆的前衛党づくりの普遍的な方針として深く位置づけてとりくむことを、最後までやりきることをつよく訴えるものであります。

支部を基礎に、全党員を対象に

 つぎに基本課程教育の推進方向ですが、すでにくりかえし強調してきたように、「支部を基礎に、全党員を対象に」がとりくみを前進させる基本であります。
 まず、「支部を基礎に」という点が、この方針を党活動全体を前進させる生きた力にしていくうえでの最大のカギとなっています。支部を基礎にしていくことによってこそ、手軽にとりくめて参加者もひろがることは、これまでの全国の経験がしめしています。また、さまざまな課題が個別的にバラバラに追求されて力がでないというこれまでの党活動の矛盾を解決し、諸課題を統一的に推進する自覚的土台をつくりあげることにもなるわけであります。
 この点で一部の党機関のなかに、支部を基礎とした活動への敗北主義、不確信があり、これを克服することの重要性を強調しなければなりません。基本課程教育のとりくみについても、これに十分にとりくめていない党機関をみると、「あの支部は困難」ということで、結局これを先のばしにしてしまう傾向が根づよくみられます。しかし、これはまったく逆転した考えといわなければなりません。逆に、マニュアルにもとづ基本課程の学習をつうじて、困難な支部を自覚的な前進の軌道にのせていくという変革の見地こそ、いまつよくもとめられているのであります。支部が困難であればあるだけ、いっそう基本課程教育のとりくみの重要性が切実になっているわけで、それをつうじてこれをかえていくという見地がいま大切になっているわけです。実際のとりくみでも、この学習をつうじて、長期にわたって支部会議がひらかれていなかったり、崩壊状態にあったような支部が、つぎつぎに変化してきていることは、たいへん教訓的であります。
同時に、「全党員を対象に」ということを強調したいと思います。これまでの基本課程の未修了の同志をさがして、そういう同志にたいして教育するというのではなく、これまで基本課程教育をうけたかどうかの経過にかかわりなく、文字どおり全党員を対象に一人残らずこれを修了するまでとりくむことが大切です。支部の学習会でも一回で全員が修了できないときは、全員が終わるまで二回、三回ととりくむようにすることがもとめられているわけであります。

講師の活動について――マニュアルにもとづいて自分の言葉で

 とりくみの飛躍をつくるカギは講師の配置と活動にあります。これまでに講師活動をおこなった同志は、まだ全国二万人の講師の二〇%と、講師資格者でない幹部活動家約二千人であります。全国の講師・幹部活動家のすべての力をひきだすならば、短時間のうちにこれをやりきる条件はおおいにあるわけで、それをやりきるいわば「教育行政」の態勢を党機関がとることがつよくもとめられています。
 今回のマニュアルの重要な特徴は、約二時間の講義時間でできるように、党綱領路線と大会決定の基本点だけをしめして、あとは講師が自分の個性を生かして自由自在、臨機応変にやれるようになっているところにあります。このマニュアルはイラク問題に関連した自衛隊海外派兵の問題が表面化する以前につくられたものですが、講義例にもあるように、安保問題と結びつけてイラク問題についてものべるなど、この問題もきちんとおりこんだ講義がやられてきています。
 紋切り型ではなく柔軟にさまざまな内容をおりこむことができることは、マニュアルにもとづく新しい教育方法の大きな長所であります。これをおおいに生かすことが大切になっています。講師がマニュアルにもとづいて情勢の新しい流れもふまえて、自分の生きた言葉で語る、このことが党員の心をとらえて力になるのであります。党機関は、「講師ニュース」や講義例をよく活用して、講師にあたる同志がそういう積極的な活動ができるよう、よく援助しなければなりません。

(2)党支部を基礎とした全党員結集の党づくり、党機関の活動について

 つぎに、党支部を基礎とした全党員結集の党づくりと、それをすすめるための党機関の指導の問題について報告いたします。
 この間、党が、日刊紙未購読の党員の克服、〝十二条該当〟党員の解決、党支部を基礎にした党生活の確立などについて強調してきたのも、全党員の力をひきだして党の直面する歴史的課題にたちむかっていくうえで、これらの課題が避けてとおれないからです。ここでは、全国都道府県・地区委員長会議で提起された方針を前提として、その後のとりくみをふまえた必要な問題についてふれることにします。

日刊紙未購読の党員の克服―政治的自覚と教育を軸にすえて

 まず、日刊紙未購読の党員の克服の問題です。
 日刊紙未購読の党員の克服のとりくみを前進させているところの教訓として重要なことは、なぜ党員として「赤旗」を読むことが大切なのか、マスコミの画一的右傾化のなかで「赤旗」ぬきには未来への展望をもって党員としての活動と生活をしていくことはできないことなどを、よく理解してもらうことに力をそそいでいることです。つまり「赤旗」をよく読む党風の確立という、党の質的強化の不可欠の一部として、この課題を深く位置づけてとりくむことが大切になっているということです。そういう見地ぬきに、日刊紙未購読党員をいわば機関紙拡大の一対象者として、「拡大」を訴えるという活動にとどまったところでは、多くの場合、この課題の前進はかちとられていないのが特徴であります。
 いま一つ重要なことは、この課題の解決も、教育を軸にすえてこそ、前進するということです。それは、マニュアルにもとづく基本課程教育をうけた同志が、みずからすすんで日刊紙を購読するなどの経験が各地で生まれていることにもしめされています。ここでも支部での基本課程教育に日刊紙未購読の同志を積極的にさそい、党員としての自覚と確信をもたせていくことが大切です。
 この間、中央として、一世帯二部以上日刊紙をとっている世帯の減額措置をとりましたが、これは全国で歓迎されています。生活が困窮状態にあるなどの理由で日刊紙が未購読になっている同志にたいする援助としては、党支部や地区委員会でよく討議して、すでにさまざまな形であたたかい同志的な援助をおこなっているところが生まれてきています。これらの努力は、プロレタリア・ヒューマニズムあふれる党風の確立のうえでも、きわめて貴重であります。中央としての援助措置については、こうした努力を基礎として、必要に応じて決定していくことにします。

 ”十二条該当”党員の原則的解決と、青年学生党員の拡大

 ”十二条該当”党員の解決を前進させているところでは、それを契機として、ふたたび脱落者をうまないあたたかい同志愛あふれる、また規律ある党風を確立しようという意欲がたかまっているのが特徴です。こんご、十二条該当〟党員にたいする党組織の判断と対応については、第一に、支部が結集可能と判断し、働きかけの対象としている党員、第二に、支部は党員としての実態を失っていると判断しているが、除籍、離党の手続きをとっていない党員、第三に、支部は除籍、離党の申請をしているが、県、地区で手続き未了の党員について、区別してそれぞれの責任を明確にして、その解決をすすめるようにすることが大切です。とくに党機関の責任に属するものの処理は、すみやかにおこなうことを強調しておきたいと思います。
 これらの努力とあわせて、とくに青年・学生のなかでの党員拡大のとりくみに、特別の努力をそそぐことを訴えたいと思います。この間、昨年来の柔軟で新鮮な働きかけの努力や、若者がまっさきに犠牲にされる自衛隊海外派兵問題でのたたかいと結びついて、青年・学生のなかでの党建設を前進させている経験も生まれています。しかし、地域や経営での青年党員の割合の減少はいちじるしく、学生党員も一部の積極的変化があるものの、全体として後退傾向がつづいています。いま、若い活力を党に迎えいれるために力をそそぐことは、党と革新運動の現在と未来にとっても、いっせい地方選挙にむけて党の活性化をかちとっていくうえでも急務となっています。各級党機関は、この重大な課題を学生党支部と民青同盟グループだけにまかせるのではなく、すべての経営、居住支部が、青年党員を迎えいれる計画をもち、青年係をおいてこの分野でのとりくみを系統化していくよう、指導をつくすことがもとめられています。

支部会議と支部学習を軸にした党生活の確立

 つぎに、支部会議と支部学習を軸にした党生活の確立についてのべます。
 いっせい地方選挙は、市町村の小さい選挙区を単位とするだけに、それをたたかう主人公は党支部となります。一つひとつの党支部が、得票目標の実現をめざして、どれだけ自覚的に「四つの原点」の活動にとりくむかが、選挙戦の勝敗をわけることになります。このなかで、週一回の支部会議の定例化を軸に、すべての党員との心のかよいあう日常的連絡・連帯網をつくりあげていくために、ひきつづき力をつくすことの重要性はいうまでもありません。
 この間の教訓は、ここでも支部での基本課程の学習会が、そういう支部活動をつくっていく大きな契機となっていることであります。これまで支部会議もひらけていないなど困難な状況にあった支部が、基本課程の学習をおこなうことをきっかけとして、その自覚的意欲がひきだされ、支部会議の定例化など党生活確立にすすみ、「特別月間」でも力を発揮したなどの経験が、全国各地で生まれています。ここにも法則的な党活動の前進方向がしめされています。こうした努力をさらに発展させ、基本課程の学習をやりきったところでは、それだけに終わらせないで、支部会議のなかでさまざまな問題での支部学習を時間をとってかならずおこなうなど、支部活動のなかに学ぶ気風をみなぎらせていくことを強調したいと思います。
 すべての支部員と日常的な連絡をとりあうような党支部活動の有機的なしくみをつくるためにも、その中核となる支部指導部の確立は不可欠であります。定年を迎えて年金生活にはいっているが、高い意欲をもち、また力量や経験にも富んだ同志も多いわけで、こうした同志にその希望をいかして適切な任務についてもらうこともふくめ、支部指導部の確立のために力をつくすことが大切であります。

党機関の指導の問題、財政問題について

 報告の最後に、党機関の指導の問題と、機関財政の問題についてのべます。
 基本課程の教育のとりくみは、党機関の理論的・政治的指導とはなにかを具体的な形で鮮明にすることにもなりました。機関幹部がみずから講師活動の先頭にたつことをつうじて、党機関にたいする新しい知的信頼と団結がつよめられてきています。党中央の決定はもちろん、国際問題や、科学的社会主義の古典などの機関学習を日常的に定着させることによって、こうした指導のいっそうの強化をはかる必要があります。
 党支部にたいする一般指導とともに、個別指導に習熟することの重要性は、いっせい地方選挙にむけた活動のなかでは、とりわけ強調されなければなりません。いっせい地方選挙では、地区委員会自身が政治責任をもって多くの候補者をかかえてたたかうことになります。こうしたなかで、行政区・選挙区ごとに、たくさんの課題をかかえてそれをどうするかに終始し、結局、指導の焦点が支部にいかない傾向におちいることが少なくありません。しかし、肝心の支部と党員のたちあがりをつくる指導に本腰がはいらないことになると、結局は選挙勝利に必要な課題の推進も空回りということになるわけであります。行政区・選挙区ごとの必要な対策を着実にすすめながら、指導の焦点はしっかりと支部にあて、一つひとつの支部で基本課程教育をおこない、すべての支部が「四つの原点」をはじめとする選挙勝利のための諸活動に自覚的にとりくめる状況をつくることに徹することが、選挙での勝利をかちとっていくうえでの大道であり、またその近道でもあります。
 党機関の財政活動の現状は、一部の中間機関で給与遅配のひろがりと慢性化など困難がまし、党機関の活力をそぐ重大な原因の一つとなってきています。この改善は、いっせい地方選挙での躍進をかちとるためにも急務であります。こうした機関財政の困難は、根本的には党費納入、紙誌代集金という党財政の基本がくずれているところから生じたものです。したがって、それを根本的に打開するためには、教育を基本とした前衛党らしい党づくりのとりくみとかたく結びつけて、党員結集のバロメーターとしての党費納入の抜本的向上をはじめとする、三原則の財政活動の強化に本格的にとりくむことがどうしても必要であります。
 そして、これをやりきるために、機関の長の責任はとりわけ重大です。この点で、これまで大きな財政困難にあった島根県党組織が、「党費を集めることは党員の心を集めること」と不退転の決意で財政再建にとりくむことをきめ、党大会後の三ヵ月間連続して党費納入を前進させて財政健全化の一歩をふみだし、そして党機関にたいする信頼と団結をつとめた教訓は貴重なものであります。

(3)いっせい地方選挙での躍進、機関紙拡大の前進の生きた力として

 同志のみなさん。全党は、「特別月間」のなかで、「「前衛党らしい党づくり」のとりくみを『月間』推進の生きた力として合流させよう」ということを、合言葉にしてとりくみをすすめてきました。この流れを、いっせい地方選挙での躍進にむけたこんごの党活動のなかで、さらに太く、大きく発展させていく必要があります。
 いよいよ、いっせい選挙にむけて、その勝敗をわける正念場をむかえています。「四つの原点」を中心とする選挙勝利のための諸活動の飛躍的推進と、またそのなかでとくに「前進しつつ減らさない」という方針にそって機関紙の陣地を絶対に後退させることなくひきつづき前進させていくことが、全党につよくもとめられています。
 それを成功させる根本は、支部を基礎としてすべての党員の知的確信と自覚的エネルギーを発揚することにあります。いっせい地方選挙にむけて、マニュアルにもとづく基本課程教育をやりきり、全党の思想的・政治的水準の新しい画期をきりひらくことをかさねてつよく訴えて、報告を終わるものであります。
(「赤旗」一九九〇年十一月二十六日)

© 日本を本国とするこの著作物は、政治上の演説等であるため、著作権法第40条の規定により自由な利用が認められています。

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