当面する内外情勢と政治課題について
不破委員長の結語
二日間の討論で六十名の同志が発言しましたが、すべての発言が内外情勢と政治課題の問題で冒頭発言および私の報告で提起した方向に賛成するものでした。いろいろな側面でこれを深める内容をもつものも多くありました。
ここでは、全体としての情勢のとらえ方などについて、討論をふまえながら、若干のべたいと思います。大局的な発展方向を確信をもってつかむ
現在の内外の情勢はひじょうに激動にみちたものです。
たとえばこの間に、イラク問題がおこって世界情勢がこのように緊迫するとか、そのなかで自衛隊海外派兵問題が政局と国民の闘争の中心問題となり、自民党が孤立化の傾向を深め、海部内閣が支持率を大きく低落させるといったことは、党大会のころには、政府・自民党もまったく予想しなかったことだと思います。現に、私が国会で指摘したことですが、政府は、イラクの侵略がはじまる十日ほど前に、クウェートに駐在している大使の二ヵ月間の休暇を認めたほど、のんびりした見方でしたから。
しかし、政府・自民党にとって予想外の出来事であっても、こういうイラクの侵略がおこったときに、今日のようなするどい対決がおこり、自民党政治の海外派兵政策と国民の多数の意思の間に深刻な矛盾がひろがるということは、党大会決定が分析したように、世界情勢、なかでもアメリカの軍事ブロックに固執する基本路線からみれば、それからまた、それに追従して日米軍事同盟の強化をはかる自民党政治の現実からいえば、まさにおこるべくしておきたことであります。また、そのなかでもっとも道理ある立場でたたかうわが党の活動や方針について、国民の新たな期待がよせられたということも、おこるべくしておこったことであります。
この二中総では、議長の冒頭発言で戦後の半世紀にわたる視野で歴史と情勢をみることの重要性を強調しましたが、そういう大局的な発展方向を確信をもってつかむことが大事であります。
反共攻撃は歴史の逆流だが、うちやぶらなければ情勢を動かす現実の力をもつ
同時に重要なことは、それだけに、反共攻撃がわが党に集中するということも、法則的だということであります。「階級闘争の弁証法」ということをわれわれはよくいってきましたが、日本共産党の役割が客観的にあきらかになり、国民のわが党への共感や支持がひろがる客観的な条件がつよまればつよまるほど、それをくい止めようとする相手側の攻撃はいよいよ懸命なものになり、必死なものになります。もちろん、そういう反共キャンペーンのやり方にはいろいろな波がありますが、いったんやられた反共攻撃は、多くの否定的な毒素を国民の意識のあいだに沈殿させることはまちがいありません。イラク問題で海外派兵反対の声がおこるなかでも、日本共産党がとる立場にたいして、一部のマスコミが攻撃の論評をくわえるなど、そのときどきの問題をとらえての攻撃もおこります。さらに、大会の報告でものべたように、中国や東欧やソ連の現状が、「社会主義共産主義崩壊」論者に格好の材料をつぎからつぎへと提供してくることもまちがいないことで、これも重視する必要があります。
こうした反共攻撃は、まさに歴史の逆流をなすものですが、われわれがみずからの奮闘と、広範な大衆のあいだでの説得力ある解明でこれをうちやぶらないかぎり、この逆流が情勢を動かす現実の力をもつこともまた、まちがいない点であります。
そういうなかで、わが党が活動し闘争するわけですから、どんな局面のもとでも反共攻撃とこれを克服する闘争を軽視しないというのは、われわれの闘争の鉄則であって、主体的奮闘が前進か後退かを左右するということも、ここに深い意味があるのです。このことをわれわれの情勢認識の基本として深くつかんでもらいたいと思います。
情勢論と諸任務の提起を統一的にとらえて
機関紙の拡大にしても選挙闘争にしても、本格的前進をとげるためには、こういう問題をしっかりとらえることが重要です。
われわれが働きかける国民大衆自体、自民党政治の被害者としてさまざまな批判や要求をもち、またそれに結びついてわが党への期待をもっている人びともいると同時に、反共宣伝の影響を多かれ少なかれうけています。昨日の討論のなかでも、海外派兵法が危ないときには日本共産党に投票しようと思ったが、廃案になったら安心して他党支持にもどったという人があったとの発言がありました。ここには、現実のいつわらざる一側面がしめされているわけです。そういう人びとにいかに働きかけて、わが党への支持をひろげてゆくか、こういう角度から活動にとりくむ必要があります。
また、党と社会のあいだに壁があるわけではありませんから、そういう反共攻撃が党内にいろいろな影響をおよぼしてくることも不可避的であります。
いま問題になっている日和見主義の潮流も、そういう影響のもとで党の一部が思想的に腐食されたことのあらわれです。また党への確信を一般的な形ではもっていても、いま党の旗を大衆のあいだでかかげ、党の立場を説明する自信はないという状況は、よりひろくあります。そういうものが放置されてゆけば、これはやはり、さまざまな日和見主義をうみだす腐食された部分へと成長してゆきます。
いま、わが党が、選挙戦での前進の問題、機関紙の拡大、党勢拡大の問題をさしせまった任務とすると同時に、日和見主義にたいするイデオロギー闘争や、教育を中心にした前衛党らしい党づくりの問題を特別に重視して提起しているのは、そこに根本があるのです。これらの問題に正面からとりくむ党建設なしには、選挙での前進も、機関紙拡大の前進もない、ここに大事な点があります。
しかも、そういう課題は、長い時間をかけてゆっくりやらなければ解決できないという問題ではありません。二日間の討論のなかでも、党機関がこれまでの惰性をたちきって思いきってとりくめば、短期間に党の活力を結集し発揮できる、そういう課題だということが、多くの先進的な経験として報告されました。こういう立場で、この二中総で提起された情勢や党の任務の問題を総合的、統一的にとらえて、こんごの活動にたちむかっていただきたいと思います。
政治戦線――「自社公民」を紋切り型の図式にしない
もう一ついいたいのは、政治戦線についてですが、政治戦線の問題でも、その大局の方向は第十九回党大会の決定でも、この二中総の報告でも解明しました。自民党の反共野党とりこみが大きな流れとしてある。けさの新聞でも、公明党大会をまえにして、公明党がよりあからさまに「自公民」路線に転換しようとしていることが、書きたてられました。「社公合意」も結局はその方向に社会党をひきこむものであって、地方政治では「自社公民」体制が多くの地方で現実になっていることは、報告したとおりであります。
しかしここで大事な点は、激動する情勢のなかで、この「自社公民」という方向を、すでにできあがった固定した状態とみて、これをあらゆる時期、あらゆる問題にあてはまる紋切り型の図式にしてしまうことは、深くいましめなければならない、という問題です。
たとえば、「社公合意」以後、安保条約・自衛隊を肯定するというのは自社公民の共通の立場となりました。しかしこんどのように、安保条約の具体化として、自衛隊の海外派兵が問題になると、その各党のあいだでも矛盾が表面化します。さらに、国民世論がたかまってくると、自衛隊をふくむ派兵にごまかしの形をとれば賛成だという旗をいったんあげた公明党までが、協力法案反対という側にまわりました。また臨時国会の終結時に自公民が新規立法で合意するということがありましたが、社会党は矛盾やあいまいさを残しながらもそれと一線を画して参加しないという状況が生まれました。
こういう状況をリアルにとらえて、そのときどきに対応していくことが大事であって、わが党は国民の声にこたえる多数の結集、「国連平和協力法」案反対の一点での統一という立場をうちだしました。
反共諸党は実はこの問題でも、自民党に同調しうる立場と弱点を最初からもっていました。しかし、自民党への同調が現実の事実となり、具体的にあらわれるのに応じて、事実にもとづく具体的な批判をおこなうことが大切であって、それが現実になるまえから、「こういう弱点があるから結論的には賛成するはずだ」という図式的な批判を先取り”的におこなったのでは、わが党の立場が説得力をもたないものになります。
市川同志がきのうの発言でとりあげた国会の税制協での消費税問題での“勇み足”の誤り――社公民諸党が、それぞれ「経過措置」の案をだしたというだけで、すでに自民党の立場に同調したという結論をだしたのは、こういう点に大きな問題があったのです。
地方政治でも他党批判は当然問題になります。この他党批判をおこなう場合、こういう点をふまえて、その批判が多くの有権者大衆のあいだで十分な道理と説得力をもったものになるように、事実にもとづく批判ということに注意もし、研究もする必要がある、このことを最後に強調して、私の結語を終わりたいと思います。
(「赤旗」一九九〇年十一月二十七日)
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