情勢展開の特徴と求められるわが党の強大化
宮本議長の冒頭発言
みなさん、ごくろうさまです。
第七回中央委員会総会いらい約三ヶ月の短い期間でありましたが、党内外に重要な事件がありました。中央委員会総会の任務は、すでに通知してある議題の審議であります。同時にわれわれは党大会をめざしてとくに「党勢拡大全党運動」に全力をあげたいと思います。
冒頭発言として、この間の若干の重要な政治問題について発言いたします。
反核運動の到達点に立って
第一は、核兵器をめぐる問題であります。わが党主催の反核国際シンポジウムとことしの原水爆禁止世界大会の特徴は、核戦争阻止、核兵器廃絶を要求する世論と国際連帯の新しい運動のひろがりがしめされたことであります。
たとえば、この間世界科学者連盟が反核国際統一戦線の一翼を担うという決議をしました。また国際民婦連は「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名へのとりくみを決定いたしました。
ことし〔一九八七年〕の原水爆禁止世界大会の国際会議で、今日世界百五十カ国におよんでいる「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名を十億にしようと決定したことは非常に重要であります。国連軍縮週間にこの署名運動を国際的な共同行動とする「平和の波」運動を世界的にすすめるという提案がアメリカ、ソ連の代表の共同提案として採択されたことも、同じくたいへん重要な意義をもっています。
INF(中距離核ミサイル)の問題でありますが、レーガン大統領もダブル・ゼロ・オプションを原則的には受け入れると声明いたしました。しかし、西ドイツ等の態度もあり、前途は多難であます。もしこれが実現すれば、戦後の核兵器の管理交渉から、はじめて大幅削減の方向にすすむという重要な意義をもちうるものであります。
同時にいま重視すべきことは、このINF問題だけで核兵器の廃絶が自動的に約束されるものではないという点であります。原水爆禁止一九八七年世界大会国際会議宣言のいう、「現在の情勢は、国際政治において、核兵器全体の廃絶に道を開く政治的合意を緊急に実現させる努力を求めている」ということが大事であります。そこから世界の反核運動全体としては、INFゼロ・オプションをつよく要求しつつ、同時に絶えず核兵器廃絶を緊急中心課題とする世論をたかめ、これと結合しつつすすむことが大事であります。したがって、いまはINF廃絶運動をやればいい、そしてつぎの段階で核兵器の廃絶をという段階論は正しくありません。
このことはサミット参加国の政府代表が「核抑止力」信仰の立場にたっているということ、またサミットの会議の政治声明に「核兵器の廃絶」ということが一言もないという点からみて、いっそう重要であります。サミットに参加しているような独占資本主義諸国の反核平和運動の共通任務はそれぞれの国の支配層の核抑止力論、核兵器永続論に反対して、人類は核兵器と共存できないという点を強調することであります。
NATOや日米軍事同盟が「核の傘」ブロックであるところからみても、軍事ブロックそのものが、検討の対象になっております。最近もワルシャワ条約機構が軍事ブロックの解体を訴えているところからみても、この点は世界政治の新しい課題であります。
資本主義諸国の反核平和運動は、米ソ・ブロックの軍事的均衡こそが平和の保障であるという軍拡時代の古いテーゼから、新しい平和の哲学へと前進する必要があります。
中曽根内閣の核兵器永久必要論
臨時国会でのわが党の再三の政府追及で、自民党の核兵器問題の本質的態度が究明、暴露された意義は、たいへん大きなものがあります。一つは通常兵器があるかぎり、核兵器は必要という立場です。いま一つは、ソ連は絶対に核兵器を廃絶しないから西側も核兵器がいつまでも必要であるという議論です。これはソ連の態度を根本的に歪曲していることが前提であります。そしてこれらは、中曽根首相のいう核兵器「究極廃絶論」なるものが、核兵器永久必要論であるということを証明しているものであります。同時に、核兵器廃絶をめぐる国会決議で、「究極廃絶」に賛成して自民党に同調した諸党の責任があらためて問われる問題であります。
自民党のパンフレットは、日本の各地の自治体が「非核都市宣言」をしても、ソ連が攻めてくるのであります。
ということもいっております。しかし、日本が戦争に巻きこまれるのは米ソ戦争のときだけという米高官の周知の言明からみても、これは無用な脅しであります。同時に日本における非核政府をつくる運動の重要性をしめしているものであります。
この臨時国会においても中曽根首相は、核軍縮交渉論で、カテゴリー論ということを強調いたしました。しかし、核兵器の交渉にカテゴリーはほんらいないのであります。核兵器をめぐる交渉では、日ソ両党共同声明いらい、軍備管理、または一定分野だけの削減という範囲でなく、核兵器の廃絶そのものが課題になるべきものであることは周知のことであります。一九八五年のグロムイコ・シュルツ共同声明、最近でもシェワルナゼ外相がジュネーブ軍縮会議で演説しておりますが、双方が合意すれば核兵器の廃絶をふくめ、なんでも交渉が可能なのであります。
日本政府が、日本に向けられたソ連などのアジアの核兵器の撤去をほんとうにもとめるのなら、アジア太平洋地域の非核武装地帯化を主張すべきであります。しかし中曽根内閣は核兵器固執勢力ですから、そのような発想とは無縁であります。倉成外相が東南アジア非核地帯構想を非難した発言は、アメリカの核兵器や核艦船の日本配備、日本への寄港を擁護した発言であり、言語道断のものであります。
なお、この間日本で総評・「禁」ブロック大会を僭称した企てをおこないましたが、その実態はみじめなものであり、失敗であります。いつまでも、この種の策動が可能なものではありません。日本の多くのまじめな科学者、知識人、宗教家が正しい潮流に確信的に結集をすすめているということがことしの夏で実証されました。
盗聴は警察の体制的仕業
国内問題でまず重要な問題は、わが党にたいする盗聴事件であります。緒方国際部長宅への盗聴事件が、警察の体制的仕業であることは、捜査にあたった検察庁も認めざるをえなかったのであります。しかるに、若干の出先警官にたいする内部での懲戒や、警察人事の異動で問題をごまかし、起訴猶予、不起訴処分にしたことは、多くの世論の失望と憤激を買いました。わが党は、衆参両院で、この問題をするどく追及し、中曽根首相も再発防止を約束せざるをえなかったのであります。わが党はこんごとも、法律的にもあらゆる手段をつくして、このような陰惨な権力犯罪の根絶のためにたたかうものであります。同時に、上田副委員長宅への盗聴事件もうやむやにすることをけして許さないという立場であります。
再登場した公約違反の「マル優廃止」のお化け
つぎに、マル優廃止問題であります。この問題の国会審議が始まり、中曽根首相はマル優廃止は、大型間接税実現の道と深く結びついており、「時と所を得て、しかるべき手続きをとって推進していく」ということを、居直り的にあきらかにいたしました。この法案上程にいたる過程の自民党と社公民のかけひきの全構図は、いかにこれらの党が中曽根首相の同時選挙の公約違反を棚上げにして、国民への恥ずべき裏切りをおこなっているか、その場所として日本共産党を無理やり排除した「税制協」なる私的協議機関をいかに隠れ蓑としているかということを暴露しております。いっせい地方選挙であのように世論がわきたったのは、中曽根首相のハッキリした公約がおこなわれたということを国民がよく知っているからであります。たとえば、昨年同時選挙中の六月二十八日、中曽根首相は大阪市でつぎのように演説いたしました。
「よくいう大型間接税とか、マル優の廃止とかそういうようなことを私がやるもんですか。それはもう以前から言っているとおりなんであります。野党のみなさんは、これは六月になると四谷怪談の時期だからお化けをうんともってくる。お化けにだまされないようにしてくださいよ」
こういうことをあちこちでしゃべっていたのです。このことをいま暴露することは、きわめて大事であります。
こういう言明をしておいて選挙で多数をしめると平然と大型間接税にほかならない売上税やマル優廃止問題を国会にもちだしてきたので、それを批判する世論のあのようなたかまりがおきた。四年に一度の地方選挙でありながら、あのおしゃべり好きの中曽根首相がどこにも演説にでられないという世にもまれな光景がおこったことは万人周知のことであります。
最近も自民党の派閥領袖の一人、河本敏夫氏は青森でつぎのようにいわざるをえませんでした。「自民党は売上税問題で国民にウソをつく政党という印象を与えてしまった」
社公民の国民への裏切りのあきれた実態
ほんらいならば、こういう公約違反の暴挙をやって失敗したら引責辞職は当然であります。そこで自民党は日ごろ、社公民の弱点を知り、連絡のヒモをもっているので、あの議長あっせん劇を仕組み、そこに社公民を誘い込むことに成功しました。これで、「直間比率の見直し」なるものが、社公民によって是認されたと中曽根首相は勇気づき、この悪税が、二十一世紀への国際的レベルの新しい税であるかのようなスタンドプレーをはじめました。サミットでの中曽根首相の言明その他が証明しております。
私たちは、さきの七中総で、中曽根内閣を、死に体〟の末期政権と単純化することは誤りである、その「悪あがきを過小評価してはならない」ということを指摘しましたが、事態はそのとおりにすすみました。現にいまの国会では大学審議会設置法案、いわゆるココム規制強化法案、労働基準法改悪法案などの悪法がめじろ押しに強行されようとしております。端的にこんどの減税・マル優廃止は、形のうえでは減税先行にみえる措置をとっております。それで国民をあざむき、社公民をつる作戦であります。しかし中身をみると、このマル優廃止で政府は一兆六千億円、国民一人当たり赤ちゃんまでふくめて一万三千円、四人家族で五万円の大増税をねらっております。そしてわが党がくりかえし解明してきているように税率の引き下げ等で大資産家にとっては大減税となる税制であります。政府案は全体として、戦後税制の大原則であった累進制と総合課税制度を根本的にくずす制度大改悪をふくんでいるものであります。
マル優廃止を正当化するための政府のさまざまな主張は公正で民主的な税制という理念にまった相反するものであります。なによりも、社会保障や年金制度の不備な日本社会で老後や病気、あるいは子弟の教育等のために、最小限の生活防衛措置としての少額の貯蓄への新しい収奪と攻撃であることは、わが党議員の国会での質問でも明白であります。
八中総一情勢展開の特徴と求められるわが党の強大化
政府は一貫して否定しておりますが、この収奪は“日本国民の貯蓄が多すぎるからアメリカ製品の輸入が少ない”というアメリカのいい分への屈服であり、さらに根本的には、わが国の予算で毎一年突出的増加を当然視されている軍事費の恒久財源のためのものであることも明白であります。
しかも、三井、三菱、伊藤忠、丸紅、日商岩井その他、一社あたり十何兆円という取引をおこない、ばく大な利潤をあげている大手七商社などが、日本国内において法人税は一円もだしていないという驚くべき大資本優遇の実態があります。だからこそ、さきの国会での廃案後、財界がこぞってくりかえし、この税制改悪の早期実行をせまってきたのであります。
「税制協」のいまのやり方は、議会制民主主義の破壊であるという指摘は、一般マスコミにもたびたび登場いたしております。この点での社公民諸党の国民への裏切りの背景に、労組の右翼的潮流と、その幹部の動向があるということは明白でありまして、同盟が民社にマル優廃止反対を主張しないようにと申し入れをしたのもその一つであります。
このあきれた事態はわが党の立場、わが党の国民生活をまもる役割を国民にかつてなくわかりやすくしめしております。同時にわが党と革新統一勢力、統一労組懇や革新懇に結集している民主的諸団体は大型間接税・マル優廃止反対各界連絡会などをふくめて、いまこそその役割をおおいに発揮しなければならない時期であります。
八月十五日の教訓は何か?
去る八月十五日は、われわれに新しくこの前の侵略戦争の教訓を深刻に想起させました。あの侵略戦争は絶対主義的天皇制の専制によって発動され、そのなかで保守党だけでなく社会民主主義諸政党、右翼労働組合が「大政翼賛会」、「大日本産業報国会」として奉仕させられたのであります。当時は、日独伊軍事同盟、今日は日米軍事同盟これらはいずれも反共軍事同盟であることは同じであります。
アメリカは一方では日本の貿易自由化や市場開放を要求し、他方ではココムによる貿易制限強化をあつかましく要求し、まったく勝手きわまるものであります。
栗原防衛庁長官が安保国是論を国会でのわが党議員との論争で展開いたしました。しかし、ポツダム宣言は、「占領軍は直に日本国より撤収」と明記したものであります。
サンフランシスコ条約は、基本的にはポツダム宣言と矛盾するものでありますが、大事なことは、その第六条で、原則としては条約の発効後、「いかなる場合にもその後九十日以内に」占領軍は日本から速やかに撤退しなければならないということを書いているのです。ただし書きで条約、協定を結んだときは別だとはしていますが。したがってこれはけっして国ではありません。例外的な措置とあのサンフランシスコ条約でさえ書かざるをえなかった程度のものであります。そして実際の役割は、戦後四十年以上たちまして、これが平和と国民生活を破壊しているということを無数の事実が証明しております。
日米軍事同盟と社公民の「現実主義」
社公民の根本的特徴は、この日米軍事同盟の肯定という点であります。そこから自民党との接点がでてくるのです。この道に集まるものは、なるほどいまの日本の政界では多数でにぎやかそうでありますが、これは基本的には戦前の教訓を踏みにじる破滅の道であります。
いま、社会党党首の訪米が問題になっております。そして、社会党の路線をめぐっては、わが国の保守的諸潮流はもっと「現実化せよ」ということをしょっちゅうくりかえしております。新聞報道によりますと、土井委員長は八月十五日に、憲法の精神と自衛隊、安保条約とは両立できないなどといったと伝えられておりますが、実際に社会党の指導部がやっていることは、安保・自衛隊容認という社会反共連合政権構想の道を国会内外で日常的に追求することなのであります。
山口書記長の談話が最近発表されました。これは、安保・自衛隊の正当性をもっと率直に容認せよという民社、公明などの主張にたいして、社会党の二十一世紀をめざす構想なるものを抽象的に描きつつ、実際には公明、民社との共同の道および自民党との連合政権構想を両立させる道を、「現実主義」として合理化しようとするものであります。
このことは、実際をみれば明白であって、彼らのいわゆる連合論は、予算要求その他でも民社、公明が主導して、社会党が追随するものです。ですから政府予算案にたいして軍事費の削減は絶対にいわない。核兵器問題の国会決議では、さきにのべましたように自民党の大枠にみな追随しています。自衛隊はけっして専守防衛の軍隊ではなくて、対米従属の軍隊であることは現にあらゆることが証明しているイロハであります。したがって、いまの社会党の道は、なしくずし的に戦前の翼賛政治への道をとるのかどうかということが問われるものであります。「新宣言」路線に不安を感ずる多くの社会党のまじめな第一線の活動家の心配もそこにあるものと、われわれは考えます。
日本共産党が健在でつよくなっていく限り
こういう状況ですが、だからといってなしくずし的にいまのままで、戦前のいわゆる暗黒政治、軍国主義がそのままの形で復活するというようなことはありえないということを強調しておきたいと思います。というのは、戦前とちがって、いまは数百万の大衆と深く結びついた日本共産党が健在であるということです。わが党は、世界と日本の民主的平和的発展のために原則的で不屈にたたかっております。この党があるかぎり、この党がつよくなっていくかぎり、戦前の暗黒政治そのましまの再現はけっして許さないのであります。いまの情勢で唯一の反核・平和、革新に徹するわが党は、戦後の四十年間、平和と民主主義に自覚した人びとのなかの支持をうけ発展してきております。この党が強大になることが戦争への道である日本の軍国主義復活を阻止する最大の保障であり、それがわが党の綱領路線であります。国際的、国内的にわが党の使命と役割はきわめて重大だということをここで強調しておきたいと思うのであります。(拍手)
「党勢拡大全党運動」の基本的前提
第十八回党大会をめざす最高時突破の党勢拡大全党運動についてのべます。
ご承知のように、わが党は党綱領のなかでつぎのように記述しております。
「民族民主統一戦線の基礎をなす労働者、農民の階級的同盟を確立しなければならない。民族民主統一戦線の発展において、決定的に重要な条件は、わが党を拡大強化し、その政治的指導力をつよめ、強大な大衆的前衛党を建設することである」
現在は、政党間の革新統一戦線は、社会党の社公反共政権構想以後、不可能になっております。そこでわが党は、社会党待ちでなく上からも下からも統一戦線をつくるという構想にもとづいて、いち早く一九八〇年の第十五回大会で革新統一懇談会を提案しました。それが民主的諸団体の支持を受けて、今日では実に四百五十万近い大きな勢力となっているのであります。そこには労働団体、農民団体、市民団体、婦人団体、青年・学生組織、文化団体、これらの団体と革新的な人びととの共同が成立しております。そして日本の真の独立と平和、生活向上、人権擁護の目標のもとに地味ではあるがねばりづよくたたかっております。
わが党は政治的、経済的、文化的闘争では全体として先駆的であります。とくにいまの国会の状況などをみて、それぞれの党の演説を検討すればこのことはきわめて明瞭であります。また大衆との結びつきということにつきましても、同時選挙以降の国会請願でわが党は四千万ぐらいの請願署名をうけつけております。いまの国会でも、マル優廃止反対の請願は日本共産党に集中されております。
こうした問題だけでなく、人と車に同時に青信号をだしておこる交差点内の交通事故問題があります。これは実に重要な社会問題であります。なぜこれが根絶できないか、なぜこういう矛盾が平気でおこなわれているか、結局これは大企業を利するモータリゼーションに迎合する自民党政府の責任問題だということを追及して多くの国民の共感をよんでおります。
選挙戦でも、同時選挙の比例代表選挙では、百万票以上ふやして五百数十万の票を獲得し、いっせい地方選挙では史上最高の議員をもつにいたりました。第十七回党大会いらい、選挙戦でも、四つの原点を日常活動の指針として、有権者の一〇から二〇、それ以上の得票をめざすという二中総の方針を綱領路線にもとづいて確立いたしました。七中総では、いわゆる選挙の支持拡大というものを日常活動化することをうちだしました。
こういう点でわが党は、まぎれもなく政治的、経済的、文化的闘争では、歴史の任務にてらしても、大局的にはこれにこたえる先駆的闘争をやっているということを確信をもっていうことができます。
党勢拡大との関係でいえば、わが党の戦後の再出発であった第七回党大会以後、党員、機関紙の計画的拡大運動をおこない、一九五九年には党勢倍加運動をおこなって成功いたしました。それ以降、大会ごとに新しい峰を築いてまいりました。わが党の機関紙活動の実態は、資本主義諸国のなかでも出色であり、文字どおり第一線にあるし、日本においてもこの機関紙活動は政党のなかでいちばん先駆的なものです。
しかし、それならばなぜこの十年間、二本足のうちの党勢拡大の方がおくれているかという問題、この点をはっきりつかむ必要があります。党員拡大は、一九七七年の第十四回党大会時、四十万近い党でありましたが、当時から五十万以上を目標といたしました。第十六回党大会で四十八万を確認いたしました。しかし名実ともに五十万を突破するという課題がまだ残されており、そのために五万以上の拡大という目標をこんどたてているわけであります。機関紙読者は従来の最高が三百五十万でありました。しかしこれが後退するということがおこりましたので、第十七回党大会水準の突破という目標で「月間」をおこなって、そして今日は最高時を突破する、すなわち三百五十万を突破するという目標をかかげております。
この十年間のこうした党勢拡大のたちおくれは、第二次反動攻勢下で自民党と反共野党の合作による革新分断、反共潮流のつよまり、同時にこういう情勢のなかでのマスコミのいわゆる右傾化、そういうものが革新陣営内にも、そういう雰囲気に影響をうけるさまざまな受動主義、日和見主義が発生いたしました。
また、社会主義国の否定的現象からくる、社会主義のいわゆる不人気もあります。たとえば中国の「文革」当時のああいう蛮行が社会主義の姿であるかのように伝えられたり、あるいは中国自身がかつては全面的に批判し否定していた日米軍事同盟を肯定する、中曽根内閣と「相互信頼」を強調しあうというような、社会主義にあるまじき姿をとっていることです。また学問的にも、日本の科学的社会主義陣営に浸透した民主集中制否定の「前衛党論」こういう歪曲学説が一部の活動家のあいだにも影響をあたえたということがいえます。
これらの事態にくわしくはふれませんが、わが党の立場は、最近の入党のよびかけ「日本の現在と未来のために」のなかにも簡潔でありますが、はっきり書かれております。また、大衆的にわれわれが訴えるものとしては、わが党のパンフレットはひきつづき重要な問題について発行されております。『日本共産党はこんな政党です』とか、『日本共産党は、なにをめざしているか』等、日本共産党の政策、歴史を知る宝庫となっております。
わが党の写真雑誌の『グラフこんにちは』はたいへん好評で、党の雑誌のなかで読者もいちばん多いものです。こんど月二回刊ということを決定しました。そのためには全党のいろんな援助が必要でありますし、おおいに協力をねがいたいと思っております。
党が党勢拡大のたちおくれを放置せず、その前進のために奮闘することは、日本の共産主義者としてもとめられる不屈さからいって当然のことであって、これは第十八回党大会にたいするわが党の重要な任務であります。
「機関紙拡大月間」の総括の中心は
党勢拡大の具体的な問題にはいります。
七月末機関紙読者の増加申請は四十五万九千、四十六万近くでありました。これは、一、二ヶ月機関紙読者を増加させたという奮闘としては、けっして少ないものではありません。しかし、八月一日のいわゆる締め切りの申請で八万二千がへっております。日刊紙が一万七千、日曜版が六万五千で、日曜版の方は大会水準を割りました。全体としての拡大は三十八万弱となり、「月間」目標の四十万は達成できませんでした。これをどうみるかということが、いわゆる「月間」の総括問題の中心であります。
この点では、中央の「赤旗」の報道にも問題がありました。八月二日の記事ですが、一日の夕方になると七月の結果がでますから、八版以降は、「月間」の結果がわかっていたわけであります。しかし残念ながらその結果にふれませんでした。四日の記事は「第十六回党大会以降とりくんできた『月間」や「大運動」などのなかでは最大の成果」と書きました。
しかし、八月一日の減紙の実態、「月間」目標の全体としての未達成という側面にふれなかったという点で率直さと現実性に欠けるものでした。いま、八月にはいっての一服状態ということが心配されておりますが、中央機関の一部の指導にあるこういう問題点を常任幹部会は重視いたしました。そしてこの不正確な見方の基調は五日付の「赤旗」主張以後はっきり是正されました。
十八日からの機関紙の「集中拡大週間」の開始にあたってのよびかけのなかで、機関紙誌局長がこの点を自己批判しております。しかしこれは、一同志の問題だけではなく、さきにのべたように近来たちおくれがつづき、この数年間、「月間」や「大運動」がある程度党勢を回復はするが、しかし目標は達成しないという状況で終わっていることが各級機関での指導上の消極主義への悪なれとして、全体の反省をもとめるものであります。前進した面を強調してきびしさを正視しない受動主義では全党に正しい教訓を提起することはできないのであります。
小成に安んじるな
また、「減らさず前進」ということでなく、「前進をつづけ減らさない」という攻勢的な姿勢が必要であります。減紙を上まわるおう盛な拡大こそ、もっとも効果的な減紙対策であり、最大の攻勢的防御だということを常任幹部会は最近主張しております。
商業マスコミは、新聞だけでもこの十年間八百万部発行部数がふえているのです。そのなかでわが党が前進するためには、目標に達しなくても、がんばったという面だけを評価していくというのでは正しい対応にならないわけであります。とくに今回は、七中総でも「機関紙拡大月間」を成功させ、年内最高の峰へという継続的活動をよびかけていました。そのために八月に実質十万ふやすためのスローガンとしてつぎのようなものを六日付で中央はかかげたわけであります。
「八月実質十万以上の読者拡大は、最高時突破への重要な一歩。必ず十万の増紙で九月を迎えるためには、減紙回復にとどまらず、読者拡大の輪を思い切ってひとまわり大きくひろげよう」この点はすでに七月末の拡大幹部会で「中央としても、進行状況によって、具体的措置について適時調整的指示をおこなう」というさきを見とおした決定をしていたわけであります。
もちろん、全党組織がそれぞれの地方の消極主義とたたかい、三十八万部をこえる新読者をえたということは、これを正しく位置づければ確信と勇気をあたえる要素であります。それはまた、わが党のなかの革命的前進力の可能性を実証したものであります。しかし、全党員からみれば成果をあげた党員はまだ二三、二目標達成した支部は約二一であり、全党的には力がつくされたというものではとうていありません。余力は十分残っております。この点で、スローガンでは小成に安んずるなということを強調いたしました。
「一定の前進にもかかわらず、全党的には大会水準を突破しなかった「機関紙拡大月間」の教訓に学び、小成に安んぜず、各種の日和見主義を打破し、全党組織による事実上の『月間』目標達成に学び、機関紙の最高時突破に英雄主義を発揮しよう」
わが党は志の大きい党であります。したがっていつでも小成に安んじるような指導を各級機関は断じてやるべきでありません。保守的潮流がわが党のこういう苦闘について、いくらいろんなひやかしや勝手な論評をしても、そういうことに問題があるのではなくて、わが党自身が事実において強大な党になるということが歴史にたいするわが党の最大のこたえであります。
党員と機関紙読者の拡大は同時進行で
いま、党員拡大と機関紙読者拡大の二つの課題を大会にむけて追求しております。ほんらいどちらも党建設、党勢拡大の根幹であります。とりくみはそれぞれの性格に応じたたじろがない積極的な対応が必要であります。
同時に大事なことは、独自に同時的に進行するという点であります。党内にはこんど「週間」も設けるということがいわれたというので、なにか「週間」のときだけ機関紙拡大をやる、その「週「間」のときには党員の拡大の方は自粛するというような誤った解釈が一部にあります。そうではなく、「週間」を設定しようとしまいと、大会まで日はないわけでありますから、それぞれの課題を独自に同時的に進行させる。これは機関、とくに県委員長、書記長の同志の構えとしてはきわめて大事な問題であります。
入党のよびかけは、百万部印刷して党内でも党外でも積極的活用がもとめられています。青年へのよびかけもあります。青年の分野では、民青のなかのいまの党員比を倍にするということが提起され、とりくまれております。また今日、労働運動や革新統一をよびかけている重要な団体等のなかには、わが党にはいってふさわしい多くの人が成長しております。
したがってこの課題は党と大衆との結びつきの現状からみて、おおいに希望があるものであり、勇猛心をふるってこんどこそどうしても達成するというのが常任幹部会の決意であります。だからこそわれわれは、さきにふれた「赤旗」記事の問題でも、これを簡単にみのがさないで、ここに従来の惰性主義、いままでこうだったんだからということでそれを漫然とくりかえすということはよくないということで、きびしい相互批判もやりました。
また、党の活性化のためのいろんな諸課題があります。これも当然党員拡大と結びつけてやるべき課題であります。
党中央は、全党がその知恵と力を発揮して、この党史上の新しい峰をめざす活動で、共産党らしい力をしめすだろうことを確信して、自己・相互批判をふくめて固い決意で前進をつづけるものであります。(拍手)
選挙問題での前進を
七中総では選挙問題が大きく論議されましたから、その後の問題についてふれます。
「機関紙拡大月間」中の反省として、「拡大月間」が全党の課題になっているということで、中間地方選挙について地方機関がとりくみを弱めた点があります。しかし、中間地方選挙は、その地方の大衆にたいする党の責任であって、その地方としてはこれに勝つことが第一義的課題であります。全国的にどんな運動がされていようと、中間選挙で負けたり、手をゆるめるということがあったら、これは党の精神に反するものであります。このことがこんどの「月間」中の教訓であり、こんごの全党運動の教訓として常に肝に銘じておく必要があります。
七中総以後空白克服は、三十七町村の見送りがありまして、見送り率は七〇になっております。この消極的傾向は、革命党にふさわしくない気概の弱さをしめしています。空白克服は、空白地域への党勢の確立・拡大と不可分であり、これはまさにいまおこなっている全党運動の一環であります。
いま一つの問題は、いっせい地方選挙後、空白克服地での当選議員の活動を保障するために、中央は苦しい財政事情にもかかわらず、積極的な財政的措置を講じました。地方によっては十万円くらいしか議員報酬がでないところがあります。これではなにかほかに職をもとめなければ暮らしてゆけないという矛盾がおこります。そういうところにたいして、党の議員にふさわしい活動をするための財政援助ということをやったわけであります。
さらに、そういう当選した人たちだけでなく、職を投げうって空白克服の選挙に挑戦したが成功せず、ひきつづいてその任務にあたる同志への全党的な援助が必要であります。しかし現状では、中央がそういう同志たちに、またこんごたくさんの空白地帯の選挙のために資金援助することは財政上困難であります。したがって財政難から空白克服の見送りがおこらないようにするためにも、空白克服のための募金をこんご精力的に本気でつづける必要があります。いっせい地方選挙に向けてもやりましたが、中央地方をふくめてまだまだ本気さが足りないという反省があります。だから七中総の精神をうやむやにしないでそういう点まで考えてやろうということであります。
七中総では支持拡大運動を日常化するために、基礎的支持勢力の名簿と他の各種名簿にふれました。しかし、いろんな名簿と基礎的支持勢力名簿との関係がまだ十分はっきりしない点がありました。これをこんどははっきりさせて、基礎的支持者の名簿に一本化する。ほかの名簿のなかから党の安定的支持者を基礎的支持者名簿にくわえていくという関係であります。
いままでは、機関紙読者について読者全体がなにか即党の支持者みたいな扱いがありましたが、そうではなく、機関紙読者でもいろいろで、業務上とっているという人もいるわけですから、そのなかの党支持者を選んで基礎的支持者名簿にくわえていくということです。そして毎月一回定期的に点検することにしました。これはすでに通達をだしてありますが、中央委員会においても、みなさん方のご承認をえたいと思っております。以上が選挙についてです。
第十八回党大会の招集について
最後に、第十八回党大会の招集をこの中央委員会総会で決定したいと思います。きょう中に別に議案として提出いたしますが、内容はつぎのとおりです。十一月二十五日に大会を招集する。場所は伊豆学習会館。議題は中央委員会の報告と決議、規約の一部改正、中央委員会の選出、その他であります。
決議案と規約の一部改正案は、九月中につぎの中央委員会をひらき、そこで決定して全党討議を開始する予定であります。
なおことしは、党創立六十五周年ですので、「日本共産党の六十年」にその後の五年間の活動をふくめて「日本共産党の六十五年」を常任幹部会の責任で発表する予定であります。
以上でありますが、あとで幹部会を代表して党務報告もおこなわれ、また、「党勢拡大全党運動」についてもくわしい提起があります。
みなさん方が、短時日でありますが、この中央委員会総会のもつ意味、重要性を認識されて、この総会での活発なご討議、ご審議をおねがいし冒頭発言を終わります。(拍手)
(「赤旗」一九八七年八月二十八日)
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