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日本共産党「第6回全国協議会」(六全協)決議 「党活動の総括と当面の任務」(1955年)

党活動の総括と当面の任務 

 新しい綱領が採用されてからのちに起ったいろいろのできごとと、党の経験は、綱領にしめされているすべての規定が、完全に正しいことを実際に証明している。
 一九五一年九月に、ソヴェト社会主義和国同盟・中華人民共和国・インドその他の国家を除いて結ばれサンフランシスコの単独講和条約の締結と占領制度の形式的な廃止は日本民族の独立を回復しなった。
 わが国はあいかわらずアメリカ軍の占領下にある。アメリカ帝国主義は、わが国の産業農業、財政、貿易を管理し統制して、わが国民を搾取し、略奪しているかれらは、わが領土内に七百カ所以上の軍事基地、飛行場その他の軍事施設をつくり、これを拡大して、わが国を、アジアで侵略戦争を行うための重要な橋頭堡にかえている。
 朝鮮侵略戦争に失敗したアメリカ帝国主義者はアジアにおける支配を確立するためには、自分の力だけでは足りないことをさとって、「アジア人にはアジア人を戦わせよ」というスローガンをだし、わが国を再軍備させ、日本人をかれらの傭兵とし、さら、わが国を李承晩蒋介石その他のカイライ政権といっしょに太平洋同盟にひきいれ、わが民族を略的な原子戦争の犠牲にしようとしている。
 わが国の反動政府は、これまでどおり、アメリカ占領者の精神的・政治的支柱の役割を演じつづけている。吉田内閣は、アメリカ帝国主義者とそれに協力する国内反動の利益を守るために、単独講和条約日米安保障条約その他の不平等な奴隷的条約や協定を結んだ。また、わが国の再軍備と軍国主義の復活おしすすめて、アメリカ占領者の命令を忠実に実行した。吉田内閣は、このような政策にたいする国民の日ごとに高まる抵抗を弾圧するために、憲法をふみにじり、国会の権を無視し、国民の民主的権利をうばいとる反動的な法律を数多く制定した。
 このような吉田内閣が倒れて鳩山内閣が生れた。吉田内閣は二つの力の作用によって倒れた。一つは吉田内閣のアメリカ一辺倒の反民族的・動的なやり方に反対する国民の力の増大であり、一つは、アメリカの言いなりになればなるほど経済的困難が加重して、反動勢力の内部の矛盾が深まったことである。
 このような情勢のもで、わが国民は、さきの総選挙の結果がしめすように、吉田内閣のようなアメリカ一辺倒の政治は満足しなくなり、反米的気運は次第にひろがっている。同時に占領制度による経済的困難が各階層にわたって根づよい不満を生みだしている。

 労働者・農民・知識人その他の勤労大衆の生活はますます苦しくなり、生活を守るたたかいはつづけられている。また平和を守る運動もかなり大きく発展した。そして、これらのたたかいのなかで独立を目ざす気運が各方で成長しはじめた。
 党は、労働者階級のたたかいのたかまりのなかで、そのたたかいの組織と拡大のために働き、一九四九年以来の弾圧で失った経営と労働組合内の党勢力を、ある程度回復した。
 農村では、事基地反対、低米価・強制供出反対、冷水害復旧などの農民闘争のなかで、党のいままでの立ちくれを少しずつ克服しはじめた。
 党は、サンフランシスコ講和条約・日米安全障条約に反対する闘争、再軍備に反対する闘争、破壊活動防止法反対闘争、松川事件の愛国者無罪釈放闘争、ソ同盟・中国との国交回復、日中貿易の促進および原水爆反対その他のさまざま平和を守る運動に、国民をかなり広く動員した。
 また、党は新しい綱領にもとづいて、党の政的・組織的統一を回復し、同時にこの綱領によって党を強め、党員の学習を普及し、闘争のなかきたえられた労働者出身の新しい幹部を抜擢するようになった。またスパイ伊藤律を追放し、党純化に着手した。
 このようにして、党は新しい綱領にもとづいて、これまで存在していた党の混乱と不統一を克服し党の政治的・織的統一と団結の基礎をきずき、国民大衆と広く結びつく向へ歩みはじめた。
 これらの実践は貴重であり、また積極的な意義をもっている。ここにこんご、党のたたかいを発展させる基礎がある。それにもかかわらず、党の当面している重大な任務からみれば、これらの成果はまだきわめて小さい。情勢の発展にくべれば、党ははるかに立ちおくれている。
 第一にあげなければならない誤りは、党の団結に関る問題である。党は第五回全国協議会で、新しい綱領を採用した際に、これまでの党の混乱と統一に終止符を打ち、新綱領を認め党の統一を求めるすべての同志にたいして無条件の支持をあたえることを決議した。それにもかかわらず、党中央は、この決議にきわめて不忠実であったことをおごそかに認めなければならない。
そのため、熱心に新綱領を支持し、党への復帰と党の統一を求める多くの誠実な同志たちを不遇の状態におきざりにした。このことは党中央の重大な責任である。
 第二に重要な問題は、党は戦術上でいくつかの大きな誤りを犯した。これらの誤りは、大衆のなかでの党の権威を傷つけ、また国民のすべての力を民族解放民主統一戦線に結集する事業に大きな損害をあたえた。誤りのうちもっとも大きなものは極左冒険主義である。
 この誤りは、党が国内の政治情勢を評価するにあたって、自分自身の力を過大に評価し、敵の力を過小評価したことにもとづいている。
 民族解放運動のある程度のたかまりや、労働者のストライキおよび農民闘争の増大という事実から、党は国内に革命情勢が近づいていると評価した。党は日本の反動勢力がまだまだ強く、しかも、アメリカ占領者の支持に依存していることを十分考えにいれなかった。同時に、わが国の革命の力がまだまだ弱く、日本の労働者階級と共産党はいままでに革命の闘争の十分な経験をもっていないこと、労働者・農民大衆のなかには、社会民主主義者とブルジョア諸政党の影響がひじょうに強いが、共産党の立場はまだまだ弱いということを考えにいれなかった。
 その結果、党はそのおもな力と注意を誤った方向へむけた。党は革命のための力を結集し、労働者階級の多数を思想的にかくとくし、農村における党の影響を決定的に強め、民族解放民主統一戦線をうち立てるという革命の勝利のために第一に必要なことをおろそかにした。党は一九五四年以来、情勢にたいする誤った評価をしだいに克服し、国民の要求を支持して国民の政治的自覚をたかめ、党と国民大衆との結びつきを強め、民主勢力を統一する地道な活動にむかって一歩をふみだした。
 今日のわが国では、二つの勢力と二つの傾向がたたかっている。一方には、アメリカの準備している新しい侵略戦争に参加するために、わが国の軍国主義化と反民族的政策を行なっている反動政府およびこれを支持している反動的諸勢力がある。これらの勢力はまだ強く、しかも、かれらはアメリカ占領者に支持されている。他方には、わが国の反動勢力の政策が、国を亡ぼすことをますます自覚しはじめ、日本の独立と平和と自由のためにたたかっている人民の力、すなわち労働者・農民・都市の小市民層などがある。中小の資本家の一部もこれに参加してきている。
 わが国の民主勢力の統一の過程は、まだはじまったばかりである。労働戦線もまだ統一されていないし、農民の大部分は反動的ブルジョア政党の影響下におかれている。わが党の力と影響力もまだきわめて弱い。
 党中央はすでにこの一月、極左冒険主義的な戦術と闘争形態からはっきり手をきる決意をあきらかにした。党は今日の日本には、まだ切迫した革命的情勢のないことを確認し、広はんな大衆を共産党の側に組織するために、民族解放民主統一戦線をきずきあげるために、ますます深く広く大衆のなかへ入り、ねばり強い不屈のたたかいをつづけることをあらためて強調する。
 第二の欠陥は、増大する大衆の不満を新しい綱領の方向にむかって正しく余すところなく組織し、党と大衆との結合を強めることができなかったことである。それは、党の活動のなかに根づよく存在しているセクト主義に原因している。党は大衆を組織するにあたって、大衆の要求にもとづいて、それを内部からたかめて行くという方法をとらないで、外部から実情に合わない要求や、高度な政治的要求をおしつける傾向を克服しきってはいない。そのため、党が大衆からうき上り、孤立するという状態をまねいている。
 かつて党は、一九四九年の衆議院選挙で三百万の得票と三十五の議席を獲得した。それが、一九五二、三年には、三分の一の得票と一つの議席に減った。また労働組合のなかでの党の影響力を大きく失った。この事実のしめす教訓は深刻なものであったにもかかわらず、その厳密な科学的検討がおろそかにされてきた。そのために、党がその誤りと欠陥の克服に立ちむかうのに長い日時のかかる結果となった。
 以上にのべた誤りと欠陥は、現在、党のもっている主な弱さである。しかもこれらの弱さをもたらした諸条件は、偶然に生じたものではない。革命は数百万大衆によって行われる。これに反して、革命を安易に考え、革命をせっかちな方法でなしとげようと考えるのは、小ブルジョア的なあせりである。
 これは古くから党の発展をはばんできた有害な思想である。
 それにもかかわらず、党が不滅の歩みをつづけて発展してきているのは、党がつねにマルクス・レーニン主義の原則をよりどころにし、労働者階級をよりどころにし、平和を守り、祖国を愛し、人民の解放のためにたたかいつづけてきたからである。
 党がいま、この原則のもとに本当に団結をかため、正しい戦術をとるならば、これらの誤りを積極的に克服し、民族解放民主革命の大業を必ず成功に導くであろう。

 現在、国際情勢は新しい発展のきざしをみせている。
 アメリカ帝国主義を先頭とする戦争勢力が「力の政策」をもって軍事ブロックをつくり、原子戦争の準備を進めているのにたいして、この危険をとりのぞくために、ソヴェト社会主義共和国同盟、中華人民共和国を中心とする全世界の平和勢力が、決意をあらたにして平和の力を結集してたたかってきた。
 戦争勢力の「力の政策」は、自国民と他民族を犠牲とするものである。したがって、この政策が進められるにつれて、各国の広はんな人民の不安と反対が強まり、ますます多くの人びとが平和を守るたたかいに結集した。とくに植民地・従属国の大衆のあいだに民族的な自覚がたかまり、独立と平和を求めるたたかいが強まった。社会主義人民民主主義の力と団結は年ごとに強まり、その平和政策は次第に諸国民の支持を強めた。帝国主義陣営内部の矛盾が深まった。
 朝鮮とインドシナの休戦は、国際間の紛争は、話しあいで解決できる、という希望を諸国民のあいだに強めた。東南アジア軍事同盟(SEATO)をつくった戦争勢力の策謀にもかかわらず、周恩来・ネール両首相のとりきめた平和五原則はアジアの諸民族にとってだけでなく、平和を愛する全世界の人民にあらたな勇気をあたえた。
 このような情勢のなかで、バンドンで開かれたアジア・アフリカ会議が成功し、また、オーストリア国家条約が締結され、ソヴェト同盟とユーゴスラヴィアの親善関係が回復され、ソヴェト同盟とインドの共同宣言が発表された。ドイツを平和的民主的に統一するためのソヴェト同盟の努力、日本とソヴェト同盟との国交回復交渉もつづけられている。平和共存をめざす勢力が強まり、「力の政策」をこれまでどおりにつづけることは世界の世論が許さなくなった。
 四大国政府首脳会議は、このような情勢の発展の結果ひらかれたものである。一九四五年以来十年にわたって中断されていた大国の首脳間の話しあいが復活したことは、重要な歴史的意義をもつ出来事であり、国際情勢の大きな変化をしめすものである。
 この会議は、軍備縮小、欧州安全保障とドイツ問題の解決、国際間の経済、文化、思想の交流の障害をとりのぞくために、引きつづき四カ国外相会議および国連で討議をつづけることを決定した。国際緊張緩和のための話しあいが全世界的な規模ではじまった。この会議は国際情勢を平和の方向に進める上に画期的な影響をあたえた。
 これらの事実は、国際緊張を緩和し、諸国民の平和共存を実現するためにきわめて重要な意義をもつとともに、有利な条件をつくりだしている。
 しかし、帝国主義陣営、とくにアメリカ帝国主義が「力の政策」による原子戦争準備をやめたわけではない。なるほど、かれらは世界の平和勢力の拡大と平和を望むアメリカ国民の世論のたかまりとを無視することができなくなった。それにもかかわらず、かれらは極東問題を四大国政府首脳会議の議題にのぼせることに賛成しなかったし、西ドイツと日本を東西における原子戦争の二つの拠点とする政策をなおつづけている。
 したがって、四大国政府首脳会議の成果を発展させ、平和の事業を達成するために、平和の力をさらに大きく結集することが必要である。
 現在の国際情勢は、日本の独立と平和を守るたたかいに有利な条件をあたえている。党は、国民大衆とともに原子戦争の危険を警戒し、原子戦争準備の野望にたいして一瞬も手をゆるめることなくたたかいをおしひろげ、世界の平和勢力との連帯を強め、平和とわが国の独立のためにたたかわなければならない。
 二月の総選挙でアメリカ一辺倒の自由党が後退し、日中・日ソの国交回復、貿易促進問題をとりあげた勢力が進出した。鳩山内閣は、アメリカの指導下に再軍備の道を歩みつづけながらも、対外的には対ソ国交回復と中国貿易の拡大という政策をかかげ、対内的には「国民生活の安定」を公約し、国民の要求にたいする譲歩の身振りをしめして、吉田内閣に失望した国民の投票をあつめた。しかしともかくも、このような鳩山内閣の成立は階級関係の若干の変化を反映したものである。鳩山内閣の二面政策は、この事情の反映である。したがって、このことを見逃して、鳩山内閣の政策吉田内閣のそれと全く同一視する見解は、両者が全く異るという見解とともにいずれも正しくない。
 民主党は総選挙で第一党となったが、鳩山内閣は少数与党内閣としてははなはだ不安定である。鳩山内閣は、一方では、中国貿易代表団の入国をみとめ、ソヴェト同盟との国交回復の交渉をはじめた。しかし一方では、アメリカ帝国主義者の原子戦争準備のおしつけに屈従している。アメリカの干渉のもとにできあがった今年の軍事予算は、事実上、昨年度よりも約四百億円も増大し、明年度から一層増大する道をひらいた。アメリカ軍事基地の拡大・自衛隊の増員・飛行場の拡張・ジェット機の製造・アメリカの濃縮ウランの受入協定の締結などの政策はアメリカ帝国主義の原子戦争準備計画にふかく結びついている。
 米日反動は鳩山内閣のこのような反動性にもかかわらず、もっと反動的な安定した政権を長期にわたって維持することをのぞんでいる。そして反動的な政治勢力を結集し、民主勢力の前進をはばみ、なかんずく、わが党を大衆からきり離すための攻撃をつづけている。鳩山内閣はこのような米日反動の要望にこたえて、再軍備予算、憲法改悪、国防会議の設置、選挙法の改悪などで、自由党と合作する工作をつづけてきた。ソヴェト同盟との国交回復交渉についても、自由党の反動的な索制をうけ、全体として米日反動の干渉によってたえず動揺している。
 米日反動の戦争準備の政策は、アジアの平和をおびやかし、わが民族の利益をますます裏切り、民主的権利をふみにじり、国民生活を一層困難にしている。
 しかし、平和を求め原子戦争の準備に反対する声は、日本の各地で日々ひろがり、わが民族の不屈のたたかいは、今日富士山麓に、小牧、立川の飛行場に、多くの工場・炭鉱などでねばりづよくつづけられている。平和・独立・民主主義と生活の安定を求めるためには、反民族的政策にあくまで反対し、力をあわせてたたかわなくてはならないという考えは、これまでになく真剣に国民の各層の間にゆきわたりはじめている。

 以上にのべたような情勢のもとで、わが党の基本方針は依然として新しい綱領にもとづいて、日本民族の独立と平和を愛する民主日本を実現するために、すべての国民を団結させてたたかうことである。
 民族独立のための闘争の条件は、一般的な反米気運のたかまりと吉田内閣の倒壊のなかに、原水爆反対、軍事基地反対、防衛分担金削減要求、またアメリカの貿易制限に反対し、ソヴェト同盟・中国との国交回復、経済・文化の交流を求める国民の運動など、さまざまな運動のなかに次第に根づよく発展している。民族独立について強まっている国民各階層の関心と要求を過小評価したり、このためのたたかいを将来の問題としてとりあげないようなことは、国民の動きから立ちおくれることであり、綱領の線からはずれることである。われわれは国民のこれらの要求を積極的に支持して、アメリカのあらゆる従属政策に反対し、民族独立を要求する国民の運動を発展させなければならない。
 綱領のしめすように、日本を平和を愛する国とするためには、独立のための闘争とともに、平和を守る運動をますます拡大しなければならない。党は平和共存を求める国民の運動を支持して、鳩山内閣にこれを要求し、かれらの再軍備と軍国主義復活の政策にたいしては、一貫して民主勢力を結集して反対し、日本を原子戦争の基地とする政策とたたかわなければならない。
 綱領のしめす労働者・農民その他国民各階層の切実な民主的要求を支持して、国民の生活を改善し、政治的自由を拡大することにますます努力しなければならない。
 党は当面の情勢のなかで実践すべき闘争を指ししめし、そのたたかいのなかで綱領を具体的に説明し、宣伝し、それによって大衆を思想的に獲得しなければならない。
 党の任務は、綱領を実現するために、労働者階級の多数を思想的にかくとくし、階級的統一を行い、農民のなかに党の指導をうちたて労農同盟をかため、これを基礎にすべての愛国的進歩的勢力を民族解放民主統一戦線に結集することである。そして、わが党を民族の利益を代表してたたかう大衆的な労働者階級の党としてきずきあげることである。
 強大な民族解放民主統一戦線をつくるには、正しく強大な党の建設が必要であり、また党の強大な発展には、民族解放民主統一戦線を大きく発展させることが必要である。
 強大な党をきずきあげることなしに、また、党が大衆を思想的にかくとくすることなしに、民族解放民主統一戦線は決して発展しない。
 民族解放民主統一戦線をすすめるうえで、党がおかした第一の誤りは、この基本的な問題をおろそかにしたことである。
 その結果、無原則な自然成長的傾向が生れた。たとえば統一戦線は、統一行動の単なるつみかさねから発展すると考えたり、また段階的に発展すると考えたりした傾向である。しかもこの傾向が統一戦線運動のなかに主な流れになっていたことを認めなければならない。
 第二の偏向は、統一戦線がせっかちにしかもたやすく作れるという考えである。それはセクト主義を生み、党の孤立をうながした。
 民族解放民主統一戦線は大衆との広い結びつきをもち、大衆の信頼をうることによってのみ組織される。そのためには、各分野の実情に応じて具体的な統一戦線政策をたて、系統的な大衆活動をねばり強く行わなければならない。そうすることによって、民主団体や進歩勢力と党との関係を正常なものにすることができる。党はこの原則をおろそかにした。その結果、党と民主勢力との団結、民主勢力間の団結を不可能または困難におとしいれた。
 第三の誤りは、極左冒険主義の戦術をとったことである。この戦術上の誤りは統一戦線運動に重大な損害をあたえた。
 上にのべた教訓から、民族解放民主統一戦線を実現するためには、党はつぎのことをはっきりとまなびとらなければならない。
 一 民族解放民主統一戦線は、ひとりでにできあがるものでもなければ、簡単に短い期間のうちにできあがるものでもない。それは広い国民大衆のなかでの党の長い期間にわたるたゆまず屈しない政治的・組織的活動によってのみ実現できる。党のこの努力が民族解放民主統一戦線を実現する保障である。したがって強大な党をきずくことと、党のただしい活動こそがこの統一戦線を実現する土台である。
 二 この民族解放民主統一戦線は、労働者農民を中心とする国民大衆を、綱領の思想のもとに団結させることによってのみ実現される。これを軽く考えたり、無視したりしては、決してこの事業をなしとげることはできない。
 三 大衆の思想をたかめ、大衆を思想的に党のがわに引きよせる活動は、大衆のおかれている状態と大衆の政治的経験を土台としなければならない。したがって党は大衆のなかに深く入り、大衆の身じかな問題、切実な関心と要求をもとにして、その行動を組織し、そのなかで、綱領の立場からの政治的説得によって一歩一歩思想的にたかめ、前進と統一の方向に発展させなければならない。
 四 党と大衆との結びつきを深めるには、党活動を系統的に改善してゆく努力が必要である。この努力なしには民族解放民主統一戦線を系統的に発展させることはできない。そのためにもっとも大切なことは、過去および現在の党の政治的・組織的活動の経験に厳密な科学的検討をおこない、その成果と欠陥を明らかにすることである。こうすることによって、党活動の諸経験を政治的に総結することができる。そして失敗を少なくし、成果をのばし、党の政治的組織的活動を正しいコースにのせて発展させることができる。そしてまた、党の活動が個個の幹部の能力や経験だけにたよることなく、全党的に、党のすべての政治的・組織的活動の経験を正しく身につけることができる。
 五 民族解放民主統一戦線は、独立と民主主義のために、思想傾向や、政治的信条や、信仰を問わず、すべての勢力や人びとの団結を実現することである。したがって、党のもっとも注意すべき点は、国民各層のさしあたって一致できない利害の相違は保留して、一致できる共通の利益を積極的に守るために大きく団結してたたかうことにある。これら共通の問題は、情勢と条件の変化と党の努力によって拡大され、たかめられて行く。この系統的な努力を通じて団結は強められる。
 六 民族解放民主統一戦線を発展させるためには、党はそのなかに解消することなく、常にその運動のなかで党の正しい独自活動を系統的におこなわなければならない。つまり、共通の問題を正しく発展させ、団結を固めるために必要な相互批判の自由をもたなければならない。同時に綱領にしたがって、独立した平和・民主日本を建設するための政治的説得をうむことなくつづけなければならない。そうすることによって、党の発展と統一戦線の発展を正しく統一しておこなうことができる。

 (1)党は労働組合の多数の支持をえないで、数百万の勤労大衆を指導することはできない。組合の支持をうけるためには、組合のなかで毎日毎日組合員大衆の信頼をうるように働らかなければならない。
 党は労働運動のなかで犯した左翼セクト的な誤り、たとえば党員およびその同情者からなる統一委員会をつくるなどを決定的に改め、党と労働組合大衆組織との間に、正しい関係をつくりださなければならない。労働組合は、政治的意見や、支持政党や、民族や信仰のちがいにかかわりなく、すべての労働者を団結し、労働者大衆の日日の要求と利益を獲得する大衆組織である。当面、賃金ストップ、首きり、労働強化など、あらゆる労働条件の低下に反対し、賃金引上げ、最低賃金の獲得、社会保障の拡充、および労働組合と組合員の権利擁護など、切実な経済的・社会的要求を貫徹するために、労働者の行動を組織し、すべての労働組合を統一することが、労働組合の主な任務である。したがって、党はつねにすべての労働組合の統一のために努力し、分裂主義者が政治的意見や支持政党のちがいを理由として労働組合を分裂させようとする策動や、その他労働組合を分裂にみちびくようなすべての誤った傾向とたたかわなければならない。
 わが党員は、党の綱領や政策を労働組合に、機械的におしつけてはならない。労働組合のなかで党員は組合員大衆の日常的利益のためにうむことなく熱心に活動しながら、大衆の信頼をえて、これを基礎として政治的説得活動をおこない、労働者大衆を思想的にかくとくしなければならない。この基本的な活動をぬきにして、せっかちに組織的統一をおこなおうとしたり、または形式的な綱領で統一を実現しようとしてはならない。それでは真の統一とはならない。
 したがって党員は、あらゆる傾向の労働組合、たとえば、それが反動的な指導者によって指導されている組合であっても、そのなかで忍耐づよく献身的に系統だった活動をおこない、党員としての任務を果さなければならない。また党は、労働者のなかでだんだん比重の大きくなっている臨時工や数多い中小経営の未組織労働者ならびに失業者を組織しなければならない。
 すでに党は、労働組合運動のなかで、ある程度の信頼は回復しはじめている。党がさらに労働組合の多数から支持をうるためには、ますますねばりづよい活動をつづけ、党のぬくことのできない力を労働者のなかにたくわえることが必要である。
 そうすることによって、労働者階級の多数から思想的に支持され、労働戦線の統一を実現する道は大きくひらけてゆく。
 (2)農民は、民族解放民主革命において、労働者とともに革命の主力である。農民が労働者と固い同盟を結び、これが共同闘争で統一されたとき、反動政府と占領制度の運命は決定される。農民の問題は、党と労働者階級にとって決定的に重要である。農民のなかに党の影響力を強め、かれらの支持をうけることなしには、革命に勝利することはできない。
 農民の圧倒的多数は未組織のままに放置されている。かれらは反動的ブルジョア政党の影響下にある。農民組合に組織されている一部の農民さえも、日本農民組合統一派、日本農民組合主体性派、農民総同盟、全国農民連盟、全日本開拓者連盟その他の組織に分裂している。日本農民組合統一派を除けば、農民組合の大部分は左右両派社会党の指導下にある。農村での党の立場は、労働組合の場合よりも、もっと弱い。
 農民のあいだでの党のこのような弱さの原因は、第一に、民族解放民主革命における農民の役割を過小評価して、農民を大衆組織に結集することを怠ったことにある。農村および農民組織のなかの活動で、党が極左冒険主義と左翼セクト主義の誤りをおかしたことにある。
 党中央は農民の部分的日常要求のための闘争を過小評価し、「地主の所有地の没収」を意味する「土地解放」のスローガンを、今すぐ実現すべき任務として農民組合におしつけた。また、かつては農民組合をつくるかわりに、やがて、権力機関に発展するという予想のもとに、農民委員会の組織を作ることを提唱した。この誤りは、形をかえて、いまでも残っている。
 すべての大地主の土地を没収して、これを農民に無償で与えるということは、民族解放民主革命が成功したあとで、はじめて実現されることである。したがって、党はこのスローガンを宣伝しながら、同時に農民の日常的な正しい要求、たとえば、アメリカ占領者と日本の反動政府が、軍事基地をつくるために行う土地取上げ、地主の土地取上げ、重税、米の強制供出、低米価、高い小作料などに反対する闘争、災害復旧、低利長期の営農資金の貸付けその他いろいろな日常要求のための闘争を支持してたたかわなければならない。また農業協同組合を、働く農民の利益を守る自主的な組織とするためにたたかわなければならない。もちろん、党はいままでにも農民のこれらの正しい日常要求をとりあげて、熱心にたたかってきた。しかし、上にのべた大きな誤りを克服しない限り、これらの日常的諸闘争の成果を正しく発展させることのできないのはあきらかである。
 同時に党は、複雑な農村の実状を正しく知らなければならない。マッカーサーの農地改革はある程度土地の再分配をおこない、階級関係にある程度の変化をもたらした。しかし農業問題は最後的に解決されたものではない。そのために、地主の復活がおこなわれ、現に地主と農民との間に土地闘争がふえてきている。
 党は、農民大衆をかくとくするために、さらに広く未組織農民を農民組合その他の大衆組織に組織しなければならない。農民を組織することがどんなに困難であっても、党員は農民のなかに深くはいり、かれらの日常要求を支持して系統的に忍耐づよく活動し、すべての働らく農民を大衆組織に組織しなければならない。その際、農民のなかで、もっとも多数を占め、生活の窮迫している貧農の生活を守り、かれらを組織にひきいれることに努力することがもっとも大切である。
 以上のべたようなさまざまな活動を党員と地方党組織は、あくまで部落をもとにしておこない、それによって、農民組合を強め、分裂している農民組織の統一を実現しなければならない。これらの活動は、農村に強大な党組織を建設することによってのみ成功する。
 党員はまた党の影響下にある農民組合だけでなく、社会党の影響下にある農民組合にもすすんで加入しなければならない。
 労働者・農民の同盟は、労働者と農民が同じ要求について共同闘争をおこなう場合だけでなく、それぞれ異った要求をもってたたかい、かつ助けあうことを通じて発展する。この発展のためには、党がひろく農民のあいだに党の指導をうちたてることがその基礎となる、
 (3)占領の初期において、わが国の知識人の多くは、「アメリカ民主主義」に、ある種の期待をよせていた。しかし、占領制度のもとで、その期待は、つぎつぎに破られてきた。このことは、かつて日本軍国主義の支配を経験した知識人の間に反省をもたらした。占領制度と反動政府の売国政策にたいするはげしい不満と生活の不安から、知識人たちは政治的無関心の状態から次第にめざめてきている。しかしこの人たちの多くは、まだ、困難な状態から自分を解放する道を見出していない。
 党は、適切な指導と援助によって知識人の政治的自覚に正しい方向をしめし、これらの人びとに党の綱領が正しく理解されるように活動し、広はんな知識人が、民族解放民主統一戦線に進んで参加するようにしなければならない。そのためには、これまで党内に存在した知識人にたいする偏狭な考え方をすて、独立と平和と自由のための運動のなかで、知識人の果す役割を正しく評価し、その活動を積極的に援助しなければならない。
 (4)党は、民族解放民主統一戦線を強めるために、青年大衆をかくとくしなければならない。アメリカとわが国の反動勢力が、日本人を奴隷化し、新しい戦争のために再軍備とファッショ化政策をおしすすめているとき、青年の反軍国主義、反ファッショ、民族独立のための闘争および青年の権利と利益のための闘争を支持し、これによって広はんな青年の統一行動を発展させることは、きわめて重要な任務である。
 党は青年運動と青年の大衆組織を過小評価し、その育成を怠り、しばしば、青年運動を弱めるようなやり方で青年組織から活動家を引抜いた。また、党の政治方針を上から押しつけて、形式的な青年の統一戦線をつくろうとしたり、特定の青年組織をセクト化する誤りをおかした。
 それにもかかわらず、青年の平和と自由への関心のたかまり、国際的な諸集会に参加する運動のひろがりなど、青年運動は現在新しい成長のきざしをしめしている。党は青年運動のなかにめばえてきたこのあらたな気運をみとめ、正しい指導をおこなわなければならない。
 党は、労働組合、農民組合、学生組織および、都市と農村で広く青年を組織している青年団のなかで、それぞれ青年の要求をたたかいとる青年大衆の日常闘争を援助し、そのなかで、青年大衆の政治的自覚をたかめるよう努力しなければならない。党が、これらの青年運動を正しく発展させるならば、広はんな青年の大衆的、民主的統一戦線をつくりだすことができるであろう。
 (5)婦人大衆は、生活と平和を守る闘争に、新しい情熱をもってますます積極的に参加しており、婦人運動の結集がはじまっている。しかし、党の婦人のあいだでの活動は非常にたちおくれている。婦人団体は、婦人の不平等な社会的条件からくる要求や、母や子供の要求その他婦人として切実な特殊な要求をかくとくするための大衆組織である。党は、労働婦人、農村婦人、および主婦のこれらの要求と闘争を支持し、あらゆる既存の民主的婦人組織の発展を援助し、婦人が自分の組織をもち、それを拡大することを、積極的に援助しなければならない。
 (6)党は、民族解放民主統一戦線の発展にとって重要な問題の一つである他の諸党派との関係について、しばしば大きな誤りを犯した。たとえば、重光首班論支持の態度をとったり、社会党にたいしてあるときはセクト的な攻撃の態度をとったり、またあるときは、無原則的な妥協の態度にでたりした。これらの誤りは、大衆を自分のがわにひきよせ、民主勢力の統一のためにたたかうという、党の基本目標を一時的にせよ見失ったところから生れている。そこから、反動勢力の内部に生じた矛盾を過大に評価して、これを民主勢力のがわに移行させることができると考えたり、逆に民主的な同盟者を、それが一時的に動揺したり、あるいは強固な同盟者でない場合、その動揺性や弱さをせっかちに攻撃する傾向をまねいた。このような誤った態度は、ちかごろかなり改まってはいるが、さらに民主勢力の統一のために敵と味方の関係を慎重に考え、反動政党の本質を見失うことなく、しかも、反動陣営内部の矛盾はどんな小さなものでも民主勢力の利益のために積極的に利用できるようにならなければならない。
 党は、これらの問題の処理にあたってけっしてかるがるしい態度をとってはならない。現在の条件と将来の見通しのうえに立って、反動勢力を孤立化させ、民主勢力を強めるという一貫した目的にしたがって、しかも、柔軟性ある態度をもってのぞまなければならない。それとともに、どのような場合でも、つねに党はその独自性と、党の原則的立場を堅持し、批判の自由を保持しなければならない。
 民族解放民主革命の現在の段階では、反動的な政党は親米的な党である自由党や民主党である。したがってわが党は平和と独立と民主主義のために、社会党、労農党との統一行動を実現するように努めなければならない。そのためには、つぎの活動が必要である。  一 左右社会党、労農党とわが党とのあいだに、共通の問題で、行動の統一をできるだけ押しすすめて行くこと。この可能性は次第に大きくなっている。大衆の左翼化がすすめばすすむほど、この可能性はもっと大きくなる。
 二 社会党との統一行動は、すでに各地方でかなりおこなわれている。こんごはとくに戦場、地域での社会党員や社会党の組織と、わが党員とわが党組織との共同行動を、熱心に発展させることが重要である。大衆のあいだの統一行動こそ統一戦線の土台である。
 三 社会党は本質的には小市民的性格をもった党である。したがって、マルクス・レーニン主義の党だけがもつ一貫性を欠き、反動勢力と妥協する傾向がある。そのような傾向に党が追随することは正しくない。したがって、統一戦線の正しい発展のためには、党は、あくまで相互批判の自由を保たなければならない。社会党が、あきらかに反動勢力と妥協している場合でも、党の独自活動をすてさって、社会党に追随すべきだとするような考え方はあやまりである。
 わが党の態度は社会党に打撃を集中したり、あるいは無原則に追随したりするような傾向におちいることなく、個個の問題について社会党と話しあいをおこない、かれらのスローガンと要求のなかで正しいものはこれを支持し、そして、誠実な辛捧強い努力をつづけることである。社会党を支持する大衆のあいだで、わが党の統一行動のための活動が現実に成功して行くならば、わが党は社会党ともっと広い協定に達する条件と可能性をつくることができる。
 党は労働者階級のあいだで積極的な活動を行い、労働者階級のなかに、なお、ねづよい影響を与えている小ブルジョア的な妥協思想を克服し、労働者階級を正しい革命的な思想できたえ、労働者と農民の同盟をうちかためなければならない。
 (7)占領制度と反動政府の反民族的政策に苦しめられている中小の実業家、多くの企業家、大商人のあいだには、最近、日本の経済状態の悪化から、いっそう不満が増大している。また、大資本家やブルジョア政党のなかにもいろいろの矛盾が表面化してきた。
 吉田内閣にせよ、鳩山内閣にせよ、わが国の反動政府のよりどころにしている主な勢力の一つは独占資本である。この独占資本の利益を代表する政党は、自由党と民主党である。党は、基本的には、自由、民主両党の親米反民族的反動の本質を、正しくばくろしなければならない。
 しかし、このばくろは、民主党鳩山内閣のもつ二面的政策と、これにたいする大衆の今日なお根づよい期待と幻想を考えにいれて、おこなわれなければならない。すなわち、鳩山内閣の公約については、その実現をあくまで要求してたたかい、対米従属再軍備をふかめる政策にたいしては、あくまでも反対してたたかわなければならない。これを通じて、国民の要求をできるかぎりたたかいとり、大衆が経験を通じて、鳩山内閣の反動的本質を自覚するようにつとめるべきである。同時に露骨にアメリカ一辺倒を主張して、もっと反動的な政府をつくろうとしている反民族的反動的な自由党にたいする攻撃の手をゆるめてはならない。
 (8)党は革命と民族解放民主政府の樹立にいたるまでの過程で、わが国にいろいろな政府ができることについて無関心であってはならない。今後の革命の進行過程で階級諸勢力の相互矛盾の関係に変化が生じた場合、いろいろな種類の政府があらわれる可能性がある。たとえば、鳩山内閣、あるいはもっと反動的な政府、あるいは鳩山内閣よりもいくらかましな政府ができることもある。党は敵のあいだの矛盾をよく利用し、鳩山内閣よりもっと反動的な政府ができることを妨げ、そし適当な条件のもとでは、アメリカの占領と日本の再軍備に反対する方向で、国民の要求を部分的にもせよ支持する政府をつくることにつとめなければならない。もちろん、このような政府を綱領が規定している民族解放民主政府と同一にみてはならない。
 この民族解放民主政府を樹立することは、当面する革命の全段階を通じての最終的な目的である。したがって、現在占領制度のもとで民族解放民主政府をつくることができるという断定は誤った戦術を生むおそれがある。また「野党の連立政府」ならば、どんな政府でもよいと考えてこれを支持すべきでないことはいうまでもない。
 (9)日本は発達した資本主義国であるが、アメリカ一国に占領され独立を失っている従属国である。綱領の指摘するとおり、日本の独占資本は、売国的反動政府を支持している勢力の一つであることを忘れてはならない。したがって、党は大ブルジョアジーと協力する方針をとることはできない。党は占領制度に不満をもっている大ブルジョアジーを親米的な売国的大ブルジョアジーからきりはなし、あるいは中立化させることができるとかんがえるだけである。
 (10)最近、軍国主義の復活とファッショ化政策に乗じて、アメリカ帝国主義者と日本の独占資本と地主らの手先としてファッショ的右翼団体が全国的に結集しはじめている。かれらは国民大衆の窮乏、反米気分および腐敗政治にたいする国民の反感を利用して、侵略と反共の方向にみちびく悪宣伝によって、大衆をかくとくしようとしている。わが党は、ファッショ的暴力団体の危険性を軽視していた態度をあらため、かれらの本質をあらゆる機会に大衆の前にばくろし、あらゆる民主団体と協力して、かれらの台頭を打ちくだかなければならない。
 (11)わが国民のあいだには、平和を求める強い気運がある。とくにビキニ島でアメリカ帝国主義者の水爆実験があってから、原水爆反対、平和擁護の運動は、全国民のあいだにわきおこって、原爆禁止の署名は約二千四百万におよんだ。それは、最近では、原子戦争準備反対の運動としてすすめられている。四大国政府首脳会議がひらかれた経過にもみられるように、「力の政策」にたいして話しあいによる平和の道が世界の世論の大きい支持をえつつある今日、平和運動をさらに広く強く発展させることは、現在、とくに重要な意義をもっている。
 わが国の平和運動は、まだ平和勢力を十分に結集してはいない。現在の平和運動の目的は、平和を維持し、新しい世界戦争を防ぐ闘争に、広く国民大衆をたち上らせることである。したがってどのような動機からにせよ、平和を守ろうとするただ一つの目的で一致するすべての人びと労働者、農民、知識人その他の広大な運動に発展させなければならない。党員はこの平和運動の性格と任務を正しく理解して、この任務の成功のために努力し、平和を求める大衆を援助し、このなかで政治的説得を強める必要がある。
 党がとくに注意すべきことは、大衆の気分や自覚の程度をよく考えて、大衆の自発性を十分発揮させることである。この一、二年の平和運動の発展にもかかわらず、この点でわれわれは多くの欠陥をもっていた。それがとくにはっきりあらわれているのは、二千四百万の平和署名という数に比較して、国民各層の生活点に根ざす平和のための自主的な組織が、くらべものにならないくらいまだわずかであるという事実である。
 ちかごろ平和運動のなかに、大衆に権威と信頼のある進歩的な活動家があらわれてきた。われわれは、これらの進歩的な活動家を信頼し、これらの人びとの力を全面的に発揮させるように積極的に援助し支持しなければならない。平和運動の指導的な機関が、平和運動の発展を十分反映するよう構成され、かつそれが十分に民主的に運営されるようにしなければならない。
 わが党は、いわゆる「中立主義者」と平和主義者にたいして、正しい態度をとらなければならない。以前にはわが党自身が中立主義を肯定したことがあったが、それは誤りであった。ところがつぎには反対に走って、すべての中立主義者を平和擁護の敵のようにあつかう態度をとった。われわれは、国際関係における日本の特殊な地位から、わが国民の広い層のなかに中立主義の気分と思想とが広く存在する事実を考慮しなければならない。いろいろな中立主義がある。中立主義の仮面をかぶって、実際には戦争を支持するものもあり、またほんとうに戦争を希望しないが、迷わされている中立主義者もある。「中立主義」を利用して大衆をだましている者を、党は具体的事実をもってばくろしながら、一般の中立主義者を忍耐づよい説得活動によって平和運動に参加させ、かれらに自分の経験を通じて、戦争と平和のあいだに中立はないということを確信させるために努力しなければならない。
 国際間の緊張を緩和し、経済、文化の交流を拡大しようとする各国人民の運動は、四大国首脳会議の開催によって、ますますたかまっている。しかし、四大国首脳会議でもアジアの問題がソヴェト同盟代表の要求にもかかわらず、討議にのぼされなかったことでもうかがえるように、アメリカ帝国主義は日本をアジアの前進基地としてひきつづき固めているし、すべての国との平和共存をもとめる国民のねがいは、米日反動によって妨げられている。これらの妨害をおしきって世論を大き結集し、とくに国民の深い関心となっているソヴェト同盟、中国をはじめ、朝鮮、ヴェトナムとの国交回復、貿易の拡大と促進をはかり、アジアと世界の諸国民との親善関係を促進する運動は非常に重要である。
 四大国首脳会議の結果にもみられるように、原子兵器禁止の問題は一般軍備縮小の問題と結びついている。原子戦争を準備するために軍事基地の拡大を強行する米日反動の政策が、生活の安定と向上をねがう国民の根づよく切実な反対にあっている今日のわが国では、この問題はとくに重要である。こういう国際的な世論は、日本政府の再軍備政策に反対し、アメリカ軍の撤退と軍事基地の撤去を要求する国民のたたかいをはげますものである。広島に原子爆弾が投下された日を、ヘルシンキ大会が原子兵器禁止と軍備縮小のための世界平和行動の日と決定した意義を、党はこんご系統的に生かさなければならない。それによって恒久平和のための世論と運動をより大きく前進させなければならない。

 (1)党の建設には、まずなによりも党を思想的に建設することが必要である。
 これまでの党の諸欠陥の主要なそして根本的な原因は、党がこの問題をおろそかにしたことにある。この課題を正しく遂行することなしには、党の組織的建設も正しく行うことはできない。
 したがって、党が直面している重大な任務を追求するためには、なによりもまず党の陣列を思想的に強め、組織的に統一し、全党の団結を固めることに全力をあげなければならない。わが党の最大の弱点の一つは、マルクス・レーニン主義の理論的水準の低さにある。過去に党がおかした重大な誤りのほとんどすべてはここに根源があり、また、われわれが新しい綱領を十分実践できなかった原因もここにある。したがって、この弱さをとりのぞくためには、党中央から細胞にいたるまで、全部の党員が重大な義務として、マルクス・レーニン主義の理論を系統的に学習し、これを身につけるために力を注がなければならない。マルクス・レーニン主義の学習は、抽象的でなく、具体的な日本の情勢と経験を結びつけて行うべきであり、党の経験を研究し、成功と失敗の教訓からまなばなければならない。
 党の思想的建設の基礎は日常の党生活のなかにある。すべての党員は、マルクス・レーニン主義の理論的学習によって、系統的に理論の向上をはからなければならないが、これは長い期間にわたって行う全党員の事業である。そして、党員はマルクス・レーニン主義の世界観を体得し、それにみちびかれて、党の生活のなかで未来にたいする確信、プロレタリア国際主義、労働者階級と党にたいする忠誠、深い真のヒューマニズム、民族にたいする愛情を身につけなければならない。
 わが党員のなかには、党内外の生活において、民主主義的な気風と常識の点で、いちじるしく欠けたところのあるものがめずらしくない。そのためにしばしば大衆からうきあがったり、その反発をまねくものもある。党員は共産主義者としての修業につとめ自覚と品性をたかめるように努めなければならない。
 (2)党と大衆との結びつきを強めるために、党の公然活動を全面的に強化することがつねに必要である。なぜならば本来、労働者階級とその党は社会の発展を代表する進歩勢力であるから、真実と真理を公然と大衆につたえる歴史的根拠をもっている。またそうすることが原則的には有利である。真実と真理は公然と広くつたえられることによってますますその力を強くすることができしたがって、党はその合法性を階級間の力関係に応じて、つねに維持し発展させるように努力しなければならない。非合法活動は情勢と階級の力関係によってこれをよぎなくされる場合におこなう活動である。一九五〇年から一九五一年の弾圧のはげしかった時期には、合法活動を党の主な活動と考えることは正しくなかった。一九五二年五月に占領制度が形式的に停止され、情勢が変化し、合法活動を展開する可能性が拡大した。この可能性を活用する点でわれわれは立遅れていた。
 党はいま政治活動を合法的に展開できるすべての条件を全面的に活用しなければならない。
 (3)党と広い大衆との結合を実現するうえに、言葉および文章による宣伝煽動活動は非常に重要な責任の大きい仕事である。宣伝煽動はインテリゲンチャ風でなく、大衆の言葉で、国民のいろいろな層によくわかるようにおこなう必要がある。そのためには、国民各層の要求・気分・意識水準などに応じて、具体的に党の政策を宣伝し、大衆の意識を一歩一歩たかめるように努力しなければならない。さらに党が大衆と話し合う言葉および党の出版物の文章を改善する必要がある。とくにこのため、「アカハタ」および「前衛」の編集を改善し、本当に大衆から親しまれ、そして権威あるものにしなければならない。党の出版物はマルクス・レーニン主義の思想を具体的な実践と結びつけて普及することを、今までよりももっと重要な使命として取上げなければならない。
 また、最近の総選挙、地方選挙の経験からまなび、とくに中央から地区にいたる諸機関が、言葉および文章による宣伝煽動活動を系統的に強めるような責任ある指導が必要である。
 (4)党内で警戒心がゆるみ、党の規律が守られなかったために、党の状態が敵に知られ、また党の下級機関だけでなく、上級機関にまで、スパイ・挑発者のもぐりこむ機会を与えた。
 これは党の思想的武装の弱さと、伊藤律などのきわめて警戒すべき経歴のあるものを党幹部にあげた便宜主義的な組織の仕方に原因がある。
 党はこのような状態を根本的に改善し、党を強めなければならない。
 党の審査、点検は慎重に行い、まず上級機関の団結をかため、全党の思想的武装の強化、組織的統一の強化と結合しておこなわなければならない。全党にたいする審査、点検の方法は、高い原則性と慎重な態度をもって上級機関から順次おこなうべきである。この場合、思想的弱さや政治的未熟さから誤りをおかした党員と、本当のスパイ・挑発者とを混同してはならない。そのためには、冷静に、それぞれの経歴、思想状態のうつりかわり、行動の事実などを、総合的に点検しなければならない。
 (5)党がその陣列の組織的弱さを急速に克服するためには、党規約を厳格に守り、党規約に定められている民主的中央集権制の組織原則をつねにつらぬきとおさなければならない。党規約の軽視は党内に官僚主義とセクト主義を生んだ。
 このような正しくない状態をただちに克服すると同時に、この教訓から学んで、党機関はどんな、場合にも党規約にもとづいて、党の組織的運営がおこなえるように成長しなければならない。
 また、党が労働者階級の実質的な大衆的前衛党となるためには、労働者のなかから、すぐれた人びとを積極的に党に吸収しなければならない。それによって、一九五〇年以来の弾圧によってとくに低下した党の組織構成のなかで占める、労働者の比重をたかめる必要がある。このことはもちろん、国民の他の階層のすぐれた人びとが党の陣列に参加することにたいして門戸をとざすことを少しも意味するものではない。
 党は、大衆的な前衛党となるために組織の拡大にむかってこんごとくに努力しなければならない。
 (6)党の力をたかめるもっとも重要な手段は、誤りと欠陥をあきらかにしめして、これをのぞくために党内に実際に役立つ原則的な批判と自己批判を展開することである。しかし批判と自己批判を無原則な分派闘争や空虚なざんげにかえてはならない。党の利益は党員すべての個人的な利益のうえにある。ある個人が個人的な利益を追求して、党の分裂をひき起すような行動をするならば、これは、党にとってもっとも大きな犯罪として非難されなければならない。
 わが党内とくに党指導機関には、自己の欠陥や誤りを党員のまえにあきらかにして自己批判をおこない、あらゆる批判をうけることをさける傾向があった。下からの批判を抑圧する官僚主義的風潮も根づよかった。また、批判する場合でも、欠陥や誤りの原因を徹底的にえぐりだすものではなく、中途半端にしてしまう傾向があった。そのため、党の欠陥や誤りが根本的にのぞかれないでいつまでものこり、あるいは、ふたたび同じような誤りをおかす結果となった。われわれはこのような態度を決定にあらためなければならない。
 これに関連して、われわれはレーニンの次の有名な言葉を思いだす必要がある。

「自己の誤りにたいする党の態度は、党のまじめさを判断し、また、自己の階級と勤労大衆にたいする義務を、いかに遂行しているかを判断するうえに、もっとも重要な、もっとも確実な基準の一つである。誤りを公然とみとめ、その原因をきわめ、それをひきおこした状態を分析し、誤りを訂正する手段を細心に審議すること――これが党のまじめさの証拠であり、これが党の任務の履行であり、これが階級の、それからまた大衆の教育と訓練である」。

 これまで、わが党のなかでは、同志を批判する場合、その同志にたいして打撃を加え、きずつけ、信頼をおとすような正しくない批判の方法がしばしばおこなわれた。われわれは党員のおかした誤りについては厳正な批判をしなければならないが、批判はあくまで、その誤りの原因を明らかにして、それを克服する道を見出すように、同志的援助を与え、誤りを改めさせ、その長所を党の発展に寄与させるようにしなければならない。
 党を強めるためには、中央から地区にいたる党の指導部を強化しなければならない。そのためには、なによりもまず、新しく選ばれた中央委員会は、党の弱点と欠陥をとりのぞき、綱領と新しい決議を実行し、全党の強固な団結を確保しなければならない。
 (7)わが党内には、これまで集団指導の作風がかけていた。しかも日本にのこっている半封建的な思想が党内にもちこまれ、個人中心的な指導と結びついて、家父長的な指導となる傾向があった。党はこのような傾向とたたかい、個人中心的な指導方法を断固としてとりのぞかなければならない。そして集団指導の原則を厳格に実施し、指導的中心が固く団結しなければならない。個人の権威の上に立つ指導であってはならない。マルクス・レーニン主義の理論の基礎に立つ中央委員会の集団的な経験と知恵にもとづいた指導のみが党幹部の広い創意性を発揮させる。こうした指導だけが党のこれまでおかした誤りを克服し、全党の正しい指導を実現し、党の陣列の統一と団結を強めて、党の全活動の発展を保障する。
 党は、党組織の指導部を選ぶ場合に、個個の幹部にたいする厳密な審査をしない便宜的なやり方をしてはならない。経歴、共産党員としての品性および理論と指導能力の点から、個個の幹部にたいして厳密な審査を行わなければならない。指導的な幹部の団結がなければ、党はスパイ・挑発者の潜入にたいしてたたかえないだけでなく、党の団結もないということを、われわれの過去の経験は教えている。

 いまわが日本共産党は、民族解放民主統一戦線運動を成功にみちびく多くの条件をもっている。国際的な平和勢力が戦争勢力よりも強くなっており、国内では国民大衆の平和と独立への自覚のたかまりがある。党は正しい綱領をもっており、綱領の基礎のうえに、党の陣列の統一と団結はつよまっている。また過去の闘争で、多くの貴い経験を積んだ。今年になってから行われた二つの選挙の結果にみられるように、党と大衆との結びつきも着実に改善の方向にむかっている。
わが党がたゆむことなく、マルクス・レーニン主義の理論によって全党を武装し、相互批判と自己批判を正しく行い、あやまちをあらため、欠陥をとりのぞき、集団指導の原則を厳格に守り、党員の積極性をたかめるならば、党は遠くない将来に、労働者階級の真の大衆党となることができるであろう。そして党は、わが国のすべての健全な進歩的な愛国勢力を民族解放民主統一戦線に結集することができるであろう。日本共産党第六回全国協議会はここに輝かしい見通しと確信をもって全党の固い団結を宣言する。

付帯決議

 今後の党活動は、綱領とこの決議にもとづいて指導される。したがって、過去に行われた諸決定のうち、この決議に反するものは廃棄される。

(1955年7月28日)

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