労働運動や社会運動、住民運動をどのように大きくし、成功させるか。精神論ではなく科学的に経験を蓄積し方法を体系化しようとする試みがこれまで世界中で行われてきました。現在ではこれらはコミュニティ・オーガナイジング(CO)と呼ばれ、手法の一定の体系化がされていて、各地で運動やキャンペーンを成功に導いています。コミュニティ・オーガナイジングを学ぶにはどうすればいいのでしょうか? おすすめ入門書と関連サイトを紹介します。
日本の代表的なコミュニティ・オーガナイジング(CO)推進団体である、コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン(COJ)共同創設者の鎌田華乃子氏によるコミュニティ・オーガナイジングの解説書です。図表や事例を交えて、運動への具体的な取り組み方を解説しています。採用されているのは米国のマーシャル・ガンツ氏が公民権運動などをもとに体系化したコミュニティ・オーガナイジング体系です。
上記の鎌田華乃子氏の2作目のコミュニティ・オーガナイジング本です。前著の内容を、中学生が校内問題に立ち向かうというストーリーの漫画を交えて解説しています。非常に読みやすくコミュニティ・オーガナイジングの概要を理解することが一冊です。
原題は「いかにして抵抗するか : プロテストをパワーにする」という意味合いのタイトル。30年以上続く英国のコミュニティ組織連合体「シティズンズUK」の代表によるコミュニティ・オーガナイジングの体系的な技法書です。コミュニティ・オーガナイジングを活用した市民活動・地域活動を通じて健全な民主主義を支えるという著者の信念が貫かれています。また、訳者序文で指摘されている日本での各種運動のパワーの欠落・連携の弱さというところは、本当に耳が痛い指摘です。
非常に詳細に記述されているのですが、学術書のような体裁なので苦手な人には向かないかもしれません。
原題は「コミュニティ運動の力、組織化――CO方法論」という意味合いのタイトル。韓国住民運動教育院コネット(KONET)によるコミュニティ・オーガナイジング(本書ではコミュニティ組織化)のワークブックです。訳者らは社会福祉が専門なので、地域での福祉のあり方を中心に日本の読者向けの補注・補論が付けられています。コミュニティ・オーガナイジングの各段階に応じて、様々な役割の背景・運営の在り方・総括などがチェックブック式に記されています。巻末には、1971年のACPO(住民組織のためのアジア委員会)に始まる、東アジアにおけるキリスト教系コミュニティ・オーガナイジング(住民組織化)運動の小史が付されています。
邦題の「コミュニティワーク・リフレクションブック」は、日本の福祉現場で一般的に用いられる「コミュニティーワーク」を韓国の実践から振り返る(リフレクトする)という意味合いで付けられています。
革新自治体だった韓国・ソウル市の朴元淳市政のもとでの「マウルマンドゥルギ」(まちづくり)と草の根民主主義について記されています。必読です。
原題は「成功するオーガナイザーの秘訣」という意味合いのタイトル。米国の労働組合情報誌「レイバーネット」の編集チームによる、労働運動に特化したオーガナイズ手法のワークブックです。日米の慣行の違いはあるものの、多くの具体例と実践的なワークがあり、興味があるところだけ読んでも役に立ちます。訳者は日本労働弁護団の弁護士です。一般流通はなく、労働弁護団から購入できます。
https://laborrights.stores.jp/items/5b9e81795496ff5904000576
コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン(COJ)は公式サイトでワークショップガイド(教科書)などの教材を無料配布しています。圧巻の内容かつセルフでも活用しうるワークブックになっています。
COJでは定期的にコミュニティ・オーガナイジングのワークショップ(講習会)も開かれています(有料)。
そのほか、大阪府職労の小松康則氏や国公労連の井上伸氏が旺盛にコミュニティ・オーガナイジングについて発信されています。ウェブサイト「北海道労働情報NAVI」でも、盛んにコミュニティ・オーガナイジングが取り上げられています。
新しい技法を運動に積極的に取り入れて、自分たちのキャンペーンを成功に導きましょう!
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